ナタリー PowerPush - flumpool

飾らずカッコつけず もがき続けた5年間

映画「おしん」&Maydayとのコラボ

──「Belief ~春を待つ君へ~」は台湾のスーパーバンドMaydayとのコラボレーション曲。どんなふうに制作していったんですか?

山村 基本的にはデータのやり取りですね。Maydayさんはツアー中だったし、ボーカルの阿信さんが日本語で歌うのも初めてということだったので、まずは僕がコーラスも全部歌って。阿信さんのパートもデモに入れてあげて、練習していただいて。その上で僕が台湾に行って、レコーディングに立ち会うこともあったんだけどね。

──作詞、作曲は山村さんと阪井さんですが、普段のflumpoolの曲作りとは違ってました?

山村 うん、違いましたね。まず、映画「おしん」の主題歌ということですよね。それこそ世界中で注目されている作品ですから。Maydayもワールドツアー含め、ライブ動員数がトータルで1千万人を超えるトップバンドだし、影響力も大きいと思うので。

阪井 「おしん」を意識したところは大きいですね。映画のあらすじを読ませてもらって、そこからイメージを膨らませて。メロディの力強さをじっくり聴かせられる曲にしたいと思ったんですよね。ピアノと歌だけでも、しっかり成り立つような。サウンドはドラマチックな仕上がりだと思います。その中で、光が差してくるような曲になればいいな、と。

──ほかのバンドとコラボレーションすることも、初めてのトライですよね。Maydayとは一昨年くらいから交流が始まってますが、アジア圏を代表するビッグバンドだし、得るものも大きかったんじゃないですか?

山村 ええ。1つひとつの活動に対して、すごく力を込めているなって感じますね。1回のライブで10万人も集めるようなバンドだしあれだけ有名なんだから、「ライブハウスでは、あんまり気合いが入らないかな?」って思ったりしてたんですけど、そんなこと全然なくて。

阪井 うん。

山村 海外の有名なバンドのライブを観ることもけっこうありますけど、「すごく伝わってくるな」っていう感覚は意外となかったりするんですよね。でも、Maydayのライブって、全部全力なんですよ。そこにいる人たちに、ちゃんと向かい合ってるというか。ライブだけじゃなくて、ビデオクリップの撮影やレコーディングにしても「本当にプロだな」って思います。直前まで仲良くしゃべってたのに、いざ始まると、すぐにスイッチが入って。そういう心構えは勉強になりますね。もちろん歌詞やメロディに関しても、すごく芯があるなって思うし。

日本と同じように海外にも届けたい

──Maydayのメンバーとは仕事以外での交流もあるんですよね?

阪井 ありますよ。仲良くさせてもらってます。

山村 特にギターのモンスターさんは日本語も上手だし、けっこう話をしてますね。お酒もすごく飲めるし(笑)。そういえばビデオクリップの撮影が終わったときも……お前、あのとき来なかったよな。

阪井 さすがにしんどいわ(笑)。

山村 まあ、そうだよな(笑)。朝4時か5時くらいから撮影が始まって、終わったのが次の日の夜中の3時だったんですよ。そこからモンスターさんが「飲もうよ」って。

阪井 しかもMaydayは、そのまま移動して、ほかの国でライブだったんですよ。なのに直前まで飲むって。マジで“モンスター”ですね(笑)。

山村 ハハハハハ(笑)。ほかのメンバーもすごく一生懸命話しかけてくれるし。

──彼らの姿を間近に見ていると、「もっと海外でライブをやりたい」って思ったりしないですか?

山村 うん、そうですね。日本の人たちにももっともっと聴いてほしいですけど、同じように海外の人にも届けたいなって。

──日本と海外を分けて考えるのではなく、同じ思いで届けるっていう……。

山村 「Belief ~春を待つ君へ~」の歌詞に“故郷(ふるさと)”という言葉を入れたのも、そういう感覚なんですよ。「おしん」の主人公も故郷のためにがんばってるわけじゃないですか。僕らは松原(大阪府松原市)から出てきて──何もない街だけど、僕らにとっては大事な故郷ですからね。もっと広く言えば僕らの故郷は日本だし、Maydayさんにとっては台湾が故郷。最近は国と国の問題もたくさんあるけど、「おしん」と「Belief ~春を待つ君へ~」を通して、それぞれの故郷を大事にしなくちゃいけないっていう気持ちを伝えられたらいいな、と。

阪井 うん。

山村 曲の中にそれぞれのアイデンティティを入れることで、人と人がつながることだったり、相手を大切に思うことにもつながっていくんじゃないかなって。これから海外でライブをやるときも、日本のよさを伝えたいなって思うし。

“スルメ曲”になったらいいな

──「Belief ~春を待つ君へ~」は意義深い曲になっていきそうですね、この先も。今回のシングルには「brilliant days」という楽曲も収録されていますが、これカッコいいですね。洋楽的なテイストが反映されていて、これまでのflumpoolにはなかった曲じゃないかな、と。

阪井 あ、ホントですか? うれしいです。この曲、受け入れられるかどうか心配してたんですよ。

山村 アレじゃない? 音楽に詳しい人には受け入れられて……っていうパターン(笑)。

阪井 そうかも。

山村 “スルメ曲”になったらいいなって思いますけどね。

──(笑)。メンバーとしても気に入ってる曲なんですよね?

阪井 そうですね。けっこう前から元の形はあった曲なんですけど、いつか出したいと思っていて。こういう3連のリズムも初めてだし、メロディは淡々としてるんですけど、そのぶんサウンドで表現しているというか。そのバランスもうまく取れてると思うし、この曲ができたときは「キタ!」って感じでした。そのぶん、歌詞は難しかったと思いますけどね。洋楽的なメロディだし、仮歌も英語っぽい感じだったので。

山村 言葉のハメ方は難しかったですね、確かに。メロディを崩したくなかったし。ただ、伝えたいことはすぐに決まったんですよ。「強く儚く」と一緒で、「時が経っても変わらないものはあるし、これからも前を向いて進んでいこう」っていう。そういう意味では、このシングルって一貫してるんですよね、歌っていることが。それを“君と僕”という関係の中で歌うのか、1人で歌うのかっていう違いだけで。

ニューシングル「強く儚く / Belief~春を待つ君へ~」/ 2013年10月2日発売 / A-Sketch
初回限定盤[CD+DVD] 1680円 / AZZS-18
通常盤[CD] 1260円 / AZCS-2029
初回限定盤CD 収録曲
  1. 強く儚く
  2. Belief ~春を待つ君へ(flumpool×Mayday)
  3. brilliant days
  4. 強く儚く(Instrumental)
  5. Belief ~春を待つ君へ~(Instrumental)
初回限定盤DVD 収録内容
  • How have we felt for 5 years? ~flumpool's 5th anniversary historic DVD~
通常盤CD 収録曲
  1. 強く儚く
  2. Belief ~春を待つ君へ(flumpool×Mayday)
  3. brilliant days
<Bonus Track>
  1. OLDIES but GOODIES-flumpool 5th year anniversary non-stop mix-
flumpool(ふらんぷーる)

山村隆太(Vo)、阪井一生(G)、尼川元気(B)、小倉誠司(Dr)の4人で2007年に結成。2008年10月にメジャーデビュー作となるダウンロードシングル「花になれ」を発表し、10日間で100万ダウンロードを記録した。同年11月にはデビューミニアルバム「Unreal」をリリース。2009年にはシングル「星に願いを」のヒットで注目を集め、10月には初の日本武道館公演、年末には「NHK紅白歌合戦」への初出場を果たした。2010年12月には4日間に渡るアリーナライブも大成功に収め、2年連続で「NHK紅白歌合戦」に出演。2011年9月に「第78回NHK全国学校音楽コンクール」中学校の部課題曲に起用された「証」をシングルとしてリリースする。2012年3月からは過去最大規模となる全国ツアー「5th tour 『Because... I am』」を行い、12月にアルバム「experience」を発表した。2013年に入ってからは横浜アリーナと大阪城ホールでアリーナ公演を、アジア圏でのCDリリースおよび海外ライブも行う。7月にシングル「大切なものは君以外に見当たらなくて / 微熱リフレイン」を、10月にシングル「強く儚く / Belief ~春を待つ君へ~」を発表。デビュー5周年を迎える10月には、日本武道館で2日間にわたりスペシャルライブを開催する。