ナタリー PowerPush - flumpool

飾らずカッコつけず もがき続けた5年間

flumpoolからデビュー5周年を記念したアニバーサリーシングル「強く儚く / Belief ~春を待つ君へ~」が届けられた。

さらなる成熟を感じさせるメロディと「どんなに時代が変わっても、今を大切にして生きていきたい」というメッセージが込められた歌詞が融合した「強く儚く」、台湾出身のアジアを代表するスーパーバンドMaydayとのコラボ曲「Belief ~春を待つ君へ~」。この2曲から伝わってくるのは、flumpoolが今、新たな変化・成長の時期を迎えつつあるという事実だろう。

今回ナタリーでは、山村隆太(Vo)と阪井一生(G)にインタビュー。今回のシングルと10月1、2日に行われる日本武道館公演について話を聞いた。

取材・文 / 森朋之

軽い気持ちでは作れない

──10月1日にいよいよデビュー5周年を迎えますね。アニバーサリーイヤーに関連する活動も本格的にスタートします。

山村隆太(Vo) そうですね。今回のシングル(「強く儚く / Belief ~春を待つ君へ~」)も、その代表的なものの1つだと思うんですよ。バンドとして5年目を迎えて、これから先どういうふうに音楽の中で自分たちを表現していくか。やっぱり、これまでと同じことをやってちゃいけないと思うんですよね。ここまでバンドをやってきて、失敗したこともうまくいったこともあるけど、そこに乗っからないで、いかに新しいものを生み出していけるかっていう。そのためには、生半可な変化ではダメじゃないかなって。バンドとしても、音楽的な転機だと思うし。

──変化することを恐れない、と。

山村 うん。社会的にもいろんなことが変わっていく時代だと思うんですよね。価値観や常識もそうだし、この先はどんどんグローバルになっていくだろうし。コミュニケーションの在り方にしても、5年前とは全然違うじゃないですか。そういうことを含めて、自分たちの中の常識みたいなものを見つめ直さなくちゃいけない時期かな、と。昨日の自分たちにいかに別れを告げて、この時代を共に生きる人たちの中で、どういう音楽を作っていくか? そこに向き合うことが、すごく大事だと思うんです。そこをシビアに考えてないと、これから先の時代には必要とされなくなるんじゃないかなって。

──それは危機感の表れでもあるんでしょうか?

山村 危機感もあるでしょうね。それこそ、若いバンドもたくさん出てきてるし……。でも、やっぱり根本にあるのは“伝える”ということかな。物事を伝えるということをどれだけ大切にできるかっていう。そこをないがしろにすると、人と人もそうだし、メンバー間もそうですけど、すべてが狂っていっちゃうと思うので。もちろん、バンドとリスナーをつなぐこともそうですけどね。

──なるほど。阪井さんはどうですか? 作曲者としても、新しい変化が求められる時期なんでしょうか?

阪井一生(G) うーん……。今回の曲に関しては、節目というか5年間を振り返るタイミングでもあるので、「ここでどういうものを伝えたらいいか?」っていうのはすごく悩んで。本当にいろいろな曲を作りましたし、その中には「これならシングルでイケるんじゃないか?」っていう曲もあったんですけど、「やっぱり、今じゃないかな」って思ってしまったり……。成熟したものというか、説得力とか、この5年間の重みみたいなものを込めたかったんですよね。その中で生まれたのが、この曲(「強く儚く」)なんですよ。

──確かに成熟を感じさせる曲ですよね。メロディに深みがあるし、スケールも大きくなった印象があって。

阪井 成熟っていうのは、ちょっと大げさだったかもしれないけど(笑)。ただ、軽い気持ちでは作れないなっていうのはあったんですよね。

5周年に「サヨナラ」を歌う理由

──音楽を続けていく上での決意の表れなのかもしれないですね、それは。歌詞のテーマについては?

山村 「サヨナラ」という言葉がサビの1行目にあるんですよね。僕らとしてはこの曲を5周年の曲として考えているんですけど、「どうして『サヨナラ』か?」というと、さっきも言ったように「昨日の自分に引きずられないように、今を刻んで生きていきたい」ということなんです。考えてみたら、デビューの「花になれ」でも、「未来を気にしないで、今しかないものを探していこう」ということを歌ってるんですよ。散ることを恐れずに、前を向いて、しっかり咲き誇っていこうっていう。flumpoolってそのメッセージを芯に持ってやってきたバンドだと思うし、歌いたいことは、デビューから5年経った今も同じなんですよね。儚くても、やっぱり次に進んでいきたい。不安や悩みもあるけど、ちゃんと明日を信じて生きていきたいって。そういうことを僕らが代弁できたらな、と。

──そこにはリスナーに対する責任も伴ってる?

山村 そんな責任を背負えるようなバンドではまだないですけどね。でも、音楽は心を表すものだと思うし、身近に起こった1つひとつのことを歌にするのは、すごく重要だと思うんですよ。例えば広島で起こった殺人事件もそうですけど、僕らの常識が取り払われてしまって、「なんで?」って思うようなことも多いじゃないですか。そうやっていろいろなものが変わっていくけど、僕らはやっぱりその中にある普遍的ことを歌っていきたいんです。「人と人って、愛し合うべきものだよな」とか「明日に向かって、前向きに生きていきたいよな」っていう気持ちだったり、そういう大切な部分を音楽にしなくちゃいけないと思うので。

──そういう話って、メンバーの間でもしてるんですか?

阪井 メンバーで話すタイミングは増えてますね、最近。

山村 基本的には、ここ2人(山村と阪井)ですけどね。軸の部分は、まず作詞・作曲をする2人でしっかり詰めないといけないので。

阪井 朝6時くらいまでメールでやりとりしてますよ。

山村 でも「こいつ起きてるかな?」って思ってるところがあるよな。

阪井 それはあるな(笑)。「俺はこんなにがんばってるのに、あいつは……?」って探るような。

山村 実は僕はよく寝てますから。

阪井 めっちゃ電話して起こしますけどね、そういうときは。

──(笑)。基本、曲は夜中に作ってるんですか?

山村 そうですね。あ、でも、どうかな?

阪井 俺は夜型ですけどね。昼間、曲を作る気分になれないんで。

山村 でも、寝たいときは寝るのが一番ですよね。ボーッとしながらやってても、あんまりよくないし。

阪井 まあな。

ニューシングル「強く儚く / Belief~春を待つ君へ~」/ 2013年10月2日発売 / A-Sketch
初回限定盤[CD+DVD] 1680円 / AZZS-18
通常盤[CD] 1260円 / AZCS-2029
初回限定盤CD 収録曲
  1. 強く儚く
  2. Belief ~春を待つ君へ(flumpool×Mayday)
  3. brilliant days
  4. 強く儚く(Instrumental)
  5. Belief ~春を待つ君へ~(Instrumental)
初回限定盤DVD 収録内容
  • How have we felt for 5 years? ~flumpool's 5th anniversary historic DVD~
通常盤CD 収録曲
  1. 強く儚く
  2. Belief ~春を待つ君へ(flumpool×Mayday)
  3. brilliant days
<Bonus Track>
  1. OLDIES but GOODIES-flumpool 5th year anniversary non-stop mix-
flumpool(ふらんぷーる)

山村隆太(Vo)、阪井一生(G)、尼川元気(B)、小倉誠司(Dr)の4人で2007年に結成。2008年10月にメジャーデビュー作となるダウンロードシングル「花になれ」を発表し、10日間で100万ダウンロードを記録した。同年11月にはデビューミニアルバム「Unreal」をリリース。2009年にはシングル「星に願いを」のヒットで注目を集め、10月には初の日本武道館公演、年末には「NHK紅白歌合戦」への初出場を果たした。2010年12月には4日間に渡るアリーナライブも大成功に収め、2年連続で「NHK紅白歌合戦」に出演。2011年9月に「第78回NHK全国学校音楽コンクール」中学校の部課題曲に起用された「証」をシングルとしてリリースする。2012年3月からは過去最大規模となる全国ツアー「5th tour 『Because... I am』」を行い、12月にアルバム「experience」を発表した。2013年に入ってからは横浜アリーナと大阪城ホールでアリーナ公演を、アジア圏でのCDリリースおよび海外ライブも行う。7月にシングル「大切なものは君以外に見当たらなくて / 微熱リフレイン」を、10月にシングル「強く儚く / Belief ~春を待つ君へ~」を発表。デビュー5周年を迎える10月には、日本武道館で2日間にわたりスペシャルライブを開催する。