ナタリー PowerPush - flumpool

デビュー5周年の覚悟と闘い

「この1曲で今年は勝負ができる」

──実際山村さん、阪井さんが言う通り、力強くて新しい曲ができたと思うんですけど、リズム隊のお2人の阪井さんのデモを聴いたときの印象って?

小倉 まあ強気な発言をすると「この1曲で今年は勝負ができるな」っていう印象を受けましたね。制作期間中、一生はいろいろ曲を作ってきたんですけど、自分の中であんまりしっくりこないというか。5周年っていう部分があったからかもしれないんですけど「今後もバンドとして食っていくんだったら、もっとポリシーを感じるような曲がほしいな」っていうことを伝えていて。その上で生まれてきた曲なんで「勝負できる曲ができたな」とは思いましたね。あとレコーディングに関しては28、29って歳も関係あるのかもしれないんですけど「リズム隊は落ち着いたflumpoolで」っていうテーマを土台にしたいなと思いながら叩いていきましたね。

──尼川さんは?

尼川 新しい曲だな、と。で、ベースについては確かに落ち着いて弾こうとは思ったんですけど、曲自体が新しいからそれに乗っかったら新しいものがすんなり生まれたって感じですね。

──阪井さんがギタープレイやレコーディングでこだわったり、悩んだりしたポイントってあります? 先ほどカントリーギターという新機軸を取り入れたって言っていましたけど。

阪井 そのカントリー系に限らず、ギタープレイ自体にはそこまで苦労したって感覚はないですね。やっぱり歌やメロディに力がある曲なんで、ボーカルのうしろではそこまで無理して変わったことをする必要はないというか。すごいシンプルにパワーコードを弾いてるだけのほうがいいだろう、みたいな判断もありましたし。それよりも全体的なアレンジには時間がかかっていて。僕は曲を作りながら同時進行でアレンジを固めていくんですけど、一応経験は積んできたので、最近のほうが頭に思い浮かんだイメージを形にするのがスムーズになってきてはいて。それでもこの曲は時間がかかったんですよ。何回も作ってはやり直しっていうのを繰り返したりして。特にこの曲ってBメロが力強いんで、そこを抜けたあとのサビをさらに力強く聴かせるにはどういうアレンジにしていくのか、みたいなことはすごく考えました。

「5年前の自分ならもっと心に響く歌が歌えたんじゃないか」

──もう1回飾らず、勢いを増して、ストレートに歌を歌うと言いつつ、単にフレッシュなだけじゃない。ちゃんと山村さん、阪井さん、尼川さん、小倉さんの5年間の積み重ねがあった上でのこの曲なんですね。

山村 うーん……。でもデビュータイミングでこの曲っていうのもアリだと思いますよ。5年前の自分ならもっと歌える、もっと心に響く歌が歌えたんじゃないかなとはすごく感じてますから。だからすごく焦ってますね。

──キャリアを積むほど使えるオプションや武器も増える気がするんですけど……。

山村 どうなんでしょうね。乗せる思いという意味では、今の自分たちにも強い思いはあると思いますけど「今、死にもの狂いでライブやってるか」って言われると当時のほうが……。音楽でメシを食いたいけど食えない状況だったんで、そんな中でやってた自分たちっていうのには1つの覚悟があったと思うんですよね。その状況でレコーディングした音ってまた違う魅力があると思うし。まあ、あの頃の自分たちは雑だったし、ヘタクソだったんですけど、それでもそれなりに伝わるものはあったと思うんですよ。でも、もう5周年を迎えてしまったわけで。そうなったからには、もう1回あの頃の思いの強さを目指すっていうのも今回の曲に込めたかった思いなんです。

みんなで次の風を待つ「微熱リフレイン」

──両A面のもう1曲「微熱リフレイン」は一転、明るくてアップリフティングなナンバーになっています。

阪井 去年の夏くらいから、ちゃんとした形にはなってなかったんですけど、この曲の原型みたいなものはあって。だから「夏にシングルをリリースするから夏らしい曲を作ろう」「1曲目が力強い曲だから、2曲目はポップにしよう」みたいな考えで作った曲でもないんですよね。flumpoolらしくアップテンポなんだけど切なさもある、僕ら自身好きな曲だからってことで今年に入って改めて作り直していたら、ちょうどシングルリリースの話が持ち上がったんで「じゃあ入れようか」ってなりました。

山村 ただこっちをシングルにするというか「微熱リフレイン / 大切なものは君以外に見当たらなくて」って並びにしようかって話もあったくらい好きな曲ではあるんですよ。で、それならタイミングは今だっていう話になった。生きていく上での切なさみたいなものをしっかり音楽に落とし込んだ「大切なものは君以外に見当たらなくて」を聴いた上で、みんなで次の風を待つ、というか。そういう前向きな気持ちになる曲を歌ってきたのが今までの僕らだと思うし、しかも夏なんだから、今リリースするのが一番サマになるんじゃないかなとは思ってますね。

ニューシングル「大切なものは君以外に見当たらなくて / 微熱リフレイン」/ 2013年7月3日発売 / A-Sketch
初回限定盤[CD+DVD] 1680円 / AZZS-16
通常盤[CD] 1260円 / AZCS-2027
初回限定盤 CD収録曲
  1. 大切なものは君以外に見当たらなくて
  2. 微熱リフレイン
  3. OAOA
  4. 大切なものは君以外に見当たらなくて(Instrumental)
  5. 微熱リフレイン(Instrumental)
  6. OAOA(Instrumental)
初回限定盤 DVD収録内容
  • 「微熱リフレイン」スタジオライブ映像
通常盤 CD収録曲
  1. 大切なものは君以外に見当たらなくて
  2. 微熱リフレイン
  3. 今年の桜(ライブ音源)
  4. labo(ライブ音源)
  5. Hello(ライブ音源)
  6. 君をつれて(ライブ音源)
  7. 春風(ライブ音源)
  8. Touch(ライブ音源)
  9. ベガ~過去と未来の北極星~(ライブ音源)
  10. イイじゃない?(ライブ音源)
  11. 星に願いを(ライブ音源)
flumpool(ふらんぷーる)

山村隆太(Vo)、阪井一生(G)、尼川元気(B)、小倉誠司(Dr)の4人で2007年に結成。2008年10月にメジャーデビュー作となるダウンロードシングル「花になれ」を発表し、10日間で100万ダウンロードを記録した。同年11月にはデビューミニアルバム「Unreal」をリリース。2009年にはシングル「星に願いを」のヒットで注目を集め、11月には初の日本武道館公演、年末には「NHK紅白歌合戦」への初出場を果たした。2010年12月には4日間に渡るアリーナライブも大成功に収め、2年連続で「NHK紅白歌合戦」に出演。2011年9月に「第78回NHK全国学校音楽コンクール」中学校の部課題曲に起用された「証」をシングルとしてリリース。2012年3月からは過去最大規模となる全国ツアー「5th tour 『Because... I am』」を行い、12月にアルバム「experience」を発表した。2013年に入ってからは横浜アリーナと大阪城ホールでアリーナ公演を行い、アジア圏でのCDリリースおよび海外ライブも実施。7月3日にシングル「大切なものは君以外に見当たらなくて / 微熱リフレイン」をリリースする。デビュー5周年を迎える10月には、日本武道館で2日間にわたりスペシャルライブを開催予定。みずみずしいボーカルや、包容力のあるポップサウンドで多くのリスナーを魅了している。