ナタリー PowerPush - flumpool
両A面で伝える力強いメッセージ 「どんな未来にも愛はある / Touch」
震災があって「未来に愛はある」って言い切ろうと思った
──「どんな未来にも愛はある」と言い切ってるところに、この曲、この歌詞の強さを感じます。
山村 ちょっと前の僕だったら、こういうふうに言い切ることはしなかったと思うんです。“愛はある”って言われても、「どこにそんなものがあるの?」って思ってしまうような感じで、ちょっとひねくれてたので(笑)。そういうふうに素直に受け止められない時期もあったんですが、3月に震災があって、自粛ムードが広がって、今はみんながうつむきがちになってしまってるじゃないですか。暗闇がどんどん広がって、迫ってきてるような状況ですけど、そんな中でも「がんばろう!」って自分を奮い立たせてる人たちがいて。実際に被災地にも行ってきましたけど、悲しみや苦しみを表に出さず、「自分が落ち込んでちゃいけない」って前向きにがんばってる人たちの姿を見て、僕も自分がやれることをやろうと思いました。
──それは歌詞を書いて、歌うことだったと。
山村 はい。これまでにもたくさんライブをやってきましたけど、ライブでやっぱり印象に残るのは、みんなの笑顔なんです。なので、自分たちが歌うことでみんなが笑顔になってくれるんだったら、絶対に未来に愛はあるということを歌いたい! そんなふうに思ったのが、この歌詞を書き始めるきっかけでした。自分の中の確固たる意思をきちんと表現できたのは、ツアーを通して、震災を通して、自分自身がいろんなものをもらったからだと思っています。
──確かに震災以降、“未来”だったり“愛”だったり、そういう普段使ってきた言葉でも、受け止め方が違ってきたり、以前よりも意味が重くなったり、より温かくなったりもすると思いますし。
山村 はい、僕もそう思います。
──今のこういう状況だからこそ、この言葉、このタイトルがより響くのかなって。
山村 そうかもしれないですね。うん、きっとそうですね。被災地だけではなく、この世の中全体に笑顔がもっともっとあふれてくれればと願っています。
──言い切る強い言葉。この言葉からメロディを作る一生さんも刺激された部分もあるんじゃないですか?
阪井 すごく刺激されました。さっき隆太も言ってましたけど、こういうふうに言い切ることって今までありませんでしたから。でも、言い切ってくれたことで自分もパワーをもらいましたし、なんかすごく気持ちいいんですよ。
──どこを切り取っても印象に残る言葉が多いので、歌詞をじっくりと噛みしめて聴いてみようと思いました。
山村 はい。ぜひ歌詞カードを見て、聴いてもらいたいですね。
アレンジにはちょっと大人な要素を取り入れて
──先程、メロディはすらすらっと書けたと言ってましたが、レコーディングも順調に?
阪井 そうですね。でも、アレンジは何度も変えたりしました。これまでの曲とは違うちょっと大人な要素を取り入れたような、今の自分たちの一歩先を見据えたアレンジにしたいと思ったので、最終的に今の形になりました。特別に目立ったことをやってるわけでもないんですけど、バンドとしての一体感が感じさせるアレンジとサウンドになったかなって。
──奇抜なアレンジとかトリッキーな演奏とかじゃなく、ひとつ大人なイメージのアレンジだからこそ、メッセージ性の強い歌詞がより伝わりやすくなってるんでしょうね。
阪井 だと思います。
──歌入れのときはどういう気持ちで?
山村 いつも、歌詞のメッセージを伝えようという気持ちで歌ってるんですけど、今回はいつも以上にそういう思いが強かったです。だから、歌ってるんですけど、感覚としては朗読に近かったかもしれません。
──それは言葉のひとつひとつをきちんと伝えるという感覚なんでしょうか?
山村 はい。言葉のひとつひとつをきちんと伝える。子音だけじゃなく、母音のほうも大事に歌いました。言葉を大切にしようと思ったら、自然とそういう歌い方になっていったんです。
──まだライブでは歌ってないですよね?
阪井 この曲はまだやってないです。僕らもライブでやるのが楽しみなんですよ。
山村 うん、楽しみだね。自分らの生き甲斐はライブの中にあると思ってます。歌を通じて、僕らの音楽で喜んでくれる人がいて、その人たちがいるから、僕たちは音楽を続けられるわけです。そういったライブでの経験がこの曲を生んでくれたと思ってますから、この曲の原点に帰るじゃないですけど、早くライブでやってあげたいなって思うんです。
──曲って、レコーディングをして作品としてのひとつの形ができあがるわけですけど、ライブで演奏していくことで、さらに成長していきますし。
山村 そうなんですよね。これが完成形だと思っていても、ライブで演奏していくともっともっと変化していったりしますから、そこが面白いところだと思うんです。
「Touch」はライブから生まれた「two of us」の続編
──そして、ダブルAサイドシングルのもうひとつのタイトル曲となる「Touch」。この曲のことも訊かせてください。
阪井 この曲はいつもと同じように、僕が曲を作って、その後で隆太が歌詞を作るという順番で作りました。「two of us」という曲があるんですが、前回のアリーナツアーで、まだみんながそんなによく知らない中で演奏したんです。でも、みんながすごく楽しんでくれて、その様子が僕の中ではすごく印象に残ったんです。「あ、この曲の続編を作ってみたい」って、思って書き始めたのがこの曲でした。「two of us」の続編というか、同じ世界観を持った曲になっています。
──この曲もライブの経験から生まれた曲というわけですか。ライブでのファンの人たちの反響を、別の曲の形にするというのは面白い発想ですね。
阪井 はい。こういうふうに曲として残すというか、続編となる曲を作るのは今回が初めてかもしれないです。以前から、前が見えないぐらいのまぶしい感じがするすごく開けたサビを作りたいと思っていて。それが「two of us」とすごくリンクした感じがありますね。
──直接的なストーリーとしての続編じゃなく、そういう気持ちがつながってる感じの続編なんですね。ファンの人たちがそういう経緯を知ることで、また聴く印象も変わってくると思いますし、「two of us」の聴き方も変わってくると思います。
阪井 はい。どう受け止めてくれるのか楽しみです。
CD収録曲
- どんな未来にも愛はある
- Touch
- two of us(Live at Kanagawa Kenmin Hall)
- 君のための100のもしも(Live at Kanagawa Kenmin Hall)
- 君に届け(Live at Kanagawa Kenmin Hall)
- どんな未来にも愛はある(Instrumental)
- Touch(Instrumental)
flumpool(ふらんぷーる)
2007年1月に結成された4人組ロックバンド。メンバーは幼稚園からの幼なじみである山村隆太(Vo)、阪井一生(G)、尼川元気(B)に小倉誠司(Dr)を加えた計4名。2008年10月に配信限定シングル「花になれ」でメジャーデビュー。11月にリリースした1stミニアルバム「Unreal」がオリコンウィークリーチャート初登場2位の快挙を達成し、一躍幅広い支持を集める。2009年10月には日本武道館ライブ2DAYSを大成功に収め、同年12月に1stフルアルバム「What's flumpool !?」を発表。2011年1月に2ndアルバム「Fantasia of Life Stripe」をリリースし、3作連続のアルバムチャート2位を獲得した。