音楽ナタリー PowerPush - フラワーカンパニーズ
25年を生き抜き、今を生き抜く バンドを活写する「Stayin' Alive」
僕ら外交が苦手なんですよ
──そしてもう1人のゲスト、斉藤和義さんとはどういう経緯で?
鈴木 20何年前、最初に所属した事務所の先輩ですから。
──となると、逆になんで今まで共演がなかったんでしょう?
マエカワ 斉藤くんのアルバムに呼んでもらって演奏したり、コーラスだけやらせてもらったりっていうことはあったんですよ。
鈴木 あとライブでは何回も一緒にやらせてもらってますし。
マエカワ でも、こっちから何かものを頼むのはちょっとおこがましいというか(笑)。
竹安 親しき仲にも礼儀あり(笑)。
──いやいやいや! その親しい斉藤さんは皆さんを誘ってるじゃないですか(笑)。
マエカワ バンドってある種の村だから。自分たちの村のやり方が身体に染みついちゃうとほかの村のルールがよくわからなくなっちゃって……。
鈴木 だから僕ら外交が苦手なんですよ(笑)。
マエカワ 特にレコーディング外交が苦手で(笑)。
──でもトリビュート盤だって出てるし、フラカンって周りの村からすごく愛されてると思うんですけど……。
マエカワ よその村からそう思ってもらえてるとすごくうれしいんだけど、自分たちからズカッと話をしに行く度胸というか発想がないんですよね。ボーカリストがおって、ギター、ベース、ドラムがいて、コーラスがいて。しかも歌詞や曲も作れるし、この4人でやるのが当たり前って感じだったから「この人と一緒にやってみたい」っていうのはなかったんですよ。
悪ふざけの一歩手前の楽曲制作&レコーディング
──ではなぜ今回斉藤さんと?
マエカワ 「エンドロール」で常田に参加してもらったっていうのも大きいと思うんだけど「あれっ、誰かと一緒にやるのって面白いな」って気付いたから。
鈴木 斉藤くんもちょうどそういう時期だったんですよ。このあいだのアルバム(2013年の「和義」)でいろんな人とセッションしてますし。
マエカワ チバ(ユウスケ)くんとかね。The Birthdayの。
鈴木 それがすごく楽しかったみたいで。で、ちょうど僕らも25年だからってことで……。
竹安 ご祝儀でやってくれるかもしれないって(笑)。
鈴木 どさくさ紛れに頼んでみたら、やってくれるっていうことだったので。
マエカワ やった!と(笑)。
──実際、作ってみていかがでした?
竹安 一緒に遊んでもらったって感覚しかないですね。斉藤くんは僕らの技量もよく知ってるから、僕らに合わせて遊んでくれるんですよ。
マエカワ 最初、斉藤くんに「今、フラカンとやるならどんな曲がいい?」って聞いたら「明るい曲がいいよね」って言われたから「じゃあお互い、そういう方向でちょっとだけモチーフを作っておこうか」って話はしたんだけど、結局ほぼ何もやらずに曲作りの日を迎えて。スタジオに入って「いっせーのっ!」で作った感じですし。
──そして本当に斉藤さんの提案通りの明るくて景気のいいロックチューン「この世は好物だらけだぜ」ができあがった。
竹安 悪ふざけになる一歩手前くらいのね。
マエカワ これ以上やるとコミックソングになっちゃうよね。
竹安 斉藤くんも音楽でギリギリ遊べる心を持ってる人だから。ドマジメじゃない。笑えるところが一緒だからそこが好きだし、尊敬できるんですよ。
楽曲のムードを具体化するエンジニアリング
──お話を伺うぶんに制作自体も比較的スムーズだったみたいですね。
マエカワ 比較的どころじゃない(笑)。
竹安 楽しいだけ(笑)。
鈴木 丸1日リハーサルの日があって、その日に曲も歌詞も作って。
マエカワ 曲の構成が決まって「じゃあ歌詞を書こうか」ってことになって。2時間くらいかな?
鈴木 うん。僕と斉藤くんが別室で2時間くらいで詞を書いて。
マエカワ そのあいだオレらは「練習しておこうか」って、練習してるという。
──ほかの曲についても作曲やアレンジってスムーズでした?
鈴木 いやスムーズじゃないのもあったかな。
──具体的に難航した曲って?
竹安 「祭壇」ですかね。レコーディング自体はスムーズだったんだけど、落としどころを見つけるのに時間がかかったかな。
──さっき皆さんは「祭壇」を元の大作バージョンからビートを効かせたタイトなバージョンにシェイプしたと言っていましたけど……。
鈴木 ラテンっぽいリズムのね。でもこの曲、アルバムの中で一番ヘンなんですよね(笑)。
──言うなれば(笑)。確かにミディアムスローながらも踊れるビートにはなっているんだけど、空間系のエフェクターを大胆に使ったアブストラクトな音像になっています。こういう落としどころってどうやって発見するものなんですか?
マエカワ 一旦オレらでアレンジを完成させたあと、エンジニアに「ちょっとアブストラクト的な要素も入れられないか」って話をしたら「こういうのはどうですか?」っていうアイデアが上がってきて。それを受けて「あっいいね」「でもここはちょっとやり過ぎてるから、抑えてもらったほうがいいかもしれない」っていうやり取りを何回かして、落としどころが見つかったからレコーディングした感じですね。
竹安 そうやって曲のムードができればあとはサクっといくんですよ。で、その楽曲のムード作りをエンジニアの人に手伝ってもらうことはけっこうあるんです。
マエカワ オレらの中にある「こういうふうにしたい」っていうアレンジの方向性、ミックスの方向性をエンジニアによりわかりやすくしてもらう感じなんです。「祭壇」であれば、ベースとドラムだけじゃ隙間が多いから竹安がその上で何を弾くか? どういう音やエフェクターを足してアブストラクトな感じにするか? そういう方向性やアイデアまではこっちで決めるんだけど、それをわかりやすく、しかも具体的にしてもらうためにエンジニアの力を借りるんです。こっちにはマニピュレートする技術がないから。丸投げとはちょっと違うんだけど、確実に助けてもらいながら作った感じですね。
次のページ » アルバムの本質捉えたボーナストラック
- ニューアルバム「Stayin' Alive」2015年1月21日発売 / Sony Music Associated Records
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3456円 / AICL-2805~6
- 通常盤 [CD] 3024円 / AICL-2807
CD収録曲
- short hopes
- 地下室
- 星に見離された男
- 死に際のメロディー
- 東京の朝
- 祭壇
- この世は好物だらけだぜ
- 感じてくれ
- 未明のサンバ
- マイ・スウィート・ソウル
- ファンキーヴァイブレーション(※ボーナストラック)
初回限定盤DVD収録内容
フラカン結成25周年ワンマンツアー「4人で100才」(2014.04.23 at京都磔磔)より
- 小さな巨人
- ロックンロール
- 東京ヌードポエム
- 終わらないツアー
フラワーカンパニーズ
1989年4月に鈴木圭介(Vo)、グレートマエカワ(B)、竹安堅一(G)、ミスター小西(Dr)の4人により名古屋で結成されたロックバンド。地元・名古屋を拠点とした精力的なライブ活動を経て、1994年に上京。1995年にアルバム「フラカンのフェイクでいこう」でメジャーデビューを果たす。以後、2000年までに6枚のフルアルバム、1枚のミニアルバム、12枚のシングルを発表。翌2001年にメジャーレーベルを離れ、活動の場をインディーズに移す。その後も「発熱の男」「東京タワー」「世田谷夜明け前」「脳内百景」といった名作を連発。特に2004年に発表されたシングル「深夜高速」は、ファンのみならず多くのロックファンから愛され続けている。2008年11月、7年8カ月ぶりにメジャー復帰。バンド結成20周年を迎えた2009年には「深夜高速」をさまざまなアーティストがカバーしたコンピレーションアルバム「深夜高速 -生きててよかったの集い-」のリリースや、11年ぶりの日比谷野外大音楽堂ワンマンライブなどで注目を集めた。2010年1月には結成20周年を記念した初のオールタイムベストアルバム「フラカン入門」を発表。同年3月発売のシングル「元少年の歌」は映画「誘拐ラプソディー」の主題歌に起用され話題となった。そして2013年にはオリジナルアルバム「ハッピーエンド」を、2015年1月には「Stayin' Alive」をリリースした。