音楽ナタリー PowerPush - フラワーカンパニーズ
25年を生き抜き、今を生き抜く バンドを活写する「Stayin' Alive」
4人+1人ではなく、5人のバンド
──「エンドロール」以前はあくまで4人で作詞作曲していた皆さんが、それでも招き入れたくなる常田真太郎サウンドの魅力ってなんなんでしょう?
鈴木 やってるサウンドや活動の仕方が全然違うからっていうのは大きいんだと思う。彼は僕らの持ってないものを持ってるし、僕らは僕らで逆にスキマスイッチの持ってないものを持ってる。それがすごく楽しいんですよね。
マエカワ しかも、ミュージシャンとしてどっちがすごいかって言ったら(笑)。もちろんそれがすべてではないんだけど、売れてるのは事実だし、オレらとはまた別のスキルを持ってるのも事実だから。年齢は下だけどスキルがすごいのはわかってるわけだから、そういう人間には素直についていきますよ。しかも彼はさじ加減がうまいんですよね。「エンドロール」のときからそうだったんですけど、ちゃんと鈴木圭介色、フラワーカンパニーズ色を理解してくれている。
竹安 彼くらいになれば、アレンジや演奏のアイデアなんて4~5パターンくらい簡単に用意できると思うんだけど、それでもやっぱりフラカンらしさっていうのを優先してくれるんですよ。
マエカワ 実際アレンジを考えてるときやレコーディングのとき、「フラカンでここまでやっちゃいけないかな」ってよく言ってましたから。
鈴木 だから曲がまとまらなくなったからってことで彼を呼んで、それまであった歌詞やアレンジを1回全部壊して改めて作り直したのに、結局原型に近い歌詞とアレンジになってましたからね。
小西 4人+1人っていうよりも、5人のバンドとして作った感じなんですよね。ただ彼は凄腕のセッションミュージシャンともたくさん共演してるから、ちょっとしたアドバイスが的確で。「こうしてください」って命令することは絶対にないんだけど「あっ、そこはこういうほうがいいですよ」って言ってくれるから発見も多くて。今回の曲に関してももともと自分たちの作ったリズムパターンとは違うっちゃあ違うし、歌詞も違うものになったんだけど、でも自分たちらしい曲になってますし。
──その違うっちゃあ違うんだけどフラカンらしいリズムパターンや歌詞が、さっき竹安さんが言っていた「押し入れの中に眠っていたテクニック」?
マエカワ そういうことなんでしょうね。オレらにとってはそれぞれのメンバーの演奏ってもう当たり前のものになっちゃってるから「お前のそのフレーズすごくいい」なんてことはまず言わないんですよ。でもアイツはそれをちゃんと「あっ、それいいですね」って言ってくれる。
竹安 こっちにしてみたらそれって無意識で弾いてるだけなんだけど、その無意識に対して「それいいですね」って意味を与えてくれる。
マエカワ 20何年もやってると新しいことや発見って少なくなりがちだから、そういうひと言ってすごくうれしいんですよね。
彼はオレをキャッチャーにはしなかった
鈴木 しかもシンタって人間がいいんですよ。これ、イヤなヤツだったらやりたくないですもん。どんなに音楽的な才能があっても。イヤなヤツだったら絶対声をかけてない(笑)。
小西 一番大事なところ(笑)。
竹安 おだて上手だし(笑)。
鈴木 「人間関係・黒帯」なんですよ。重心がしっかりしてる。歌詞についても気兼ねなく突っ込んだことまで話せますから。イヤなヤツ相手だったら、歌詞についての細かい話し合いなんてしたくもないし、したところで絶対にいい話し合いにならないんだけど、今回については特に「エンドロール」でうまくいくことが実証されてるから、シンタと一緒なら絶対に大丈夫っていう信頼のもと頼んでますし。
竹安 彼はサウンドプロデューサーとしてのみならず、歌詞に対する洞察もすごいですから。
鈴木 歌詞も書く人だからね。
──実際、鈴木さんのあふれすぎた言葉をどうやってシェイプしていったんですか?
鈴木 その突っ込んだ話し合いをしたあと、改めて僕が歌詞を書き直して、ツアー先のホテルなんかからガーッと彼にファックスして。そうすると、それを読んだ彼から「ここはこうしてみたらどうでしょう?」っていうメールが届くから、また書き直してファックスして、っていうのをとにかく何度も繰り返して。で、そういう試行錯誤の末に僕が1人で書いてたものよりも明らかにいいんだけど、でも元のテイストは殺さない詞が完成したって感じですね。だからシンタと一緒にやって変わったのはピッチングフォームだけなんですよね。彼はオレをいきなりキャッチャーにするようなマネはしなかった。
小西 だからすごくいい“バンドメンバー”であり、“監督”なんです。
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- ニューアルバム「Stayin' Alive」2015年1月21日発売 / Sony Music Associated Records
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3456円 / AICL-2805~6
- 通常盤 [CD] 3024円 / AICL-2807
CD収録曲
- short hopes
- 地下室
- 星に見離された男
- 死に際のメロディー
- 東京の朝
- 祭壇
- この世は好物だらけだぜ
- 感じてくれ
- 未明のサンバ
- マイ・スウィート・ソウル
- ファンキーヴァイブレーション(※ボーナストラック)
初回限定盤DVD収録内容
フラカン結成25周年ワンマンツアー「4人で100才」(2014.04.23 at京都磔磔)より
- 小さな巨人
- ロックンロール
- 東京ヌードポエム
- 終わらないツアー
フラワーカンパニーズ
1989年4月に鈴木圭介(Vo)、グレートマエカワ(B)、竹安堅一(G)、ミスター小西(Dr)の4人により名古屋で結成されたロックバンド。地元・名古屋を拠点とした精力的なライブ活動を経て、1994年に上京。1995年にアルバム「フラカンのフェイクでいこう」でメジャーデビューを果たす。以後、2000年までに6枚のフルアルバム、1枚のミニアルバム、12枚のシングルを発表。翌2001年にメジャーレーベルを離れ、活動の場をインディーズに移す。その後も「発熱の男」「東京タワー」「世田谷夜明け前」「脳内百景」といった名作を連発。特に2004年に発表されたシングル「深夜高速」は、ファンのみならず多くのロックファンから愛され続けている。2008年11月、7年8カ月ぶりにメジャー復帰。バンド結成20周年を迎えた2009年には「深夜高速」をさまざまなアーティストがカバーしたコンピレーションアルバム「深夜高速 -生きててよかったの集い-」のリリースや、11年ぶりの日比谷野外大音楽堂ワンマンライブなどで注目を集めた。2010年1月には結成20周年を記念した初のオールタイムベストアルバム「フラカン入門」を発表。同年3月発売のシングル「元少年の歌」は映画「誘拐ラプソディー」の主題歌に起用され話題となった。そして2013年にはオリジナルアルバム「ハッピーエンド」を、2015年1月には「Stayin' Alive」をリリースした。