音楽ナタリー PowerPush - フラワーカンパニーズ
25年を生き抜き、今を生き抜く バンドを活写する「Stayin' Alive」
おじさんがそんなにしょっちゅう恋するわけがない
──対する詞はどの曲も「ハッピーエンド」以上にシリアスだし、自己言及的ですよね。「ハッピーエンド」の場合、それこそ原発のことを歌った収録曲「エンドロール」にすら状況や社会に対する優しい眼差しを感じたんですけど、今作の詞はどれも死の匂いがするというか……。
鈴木 そうですね。たぶんそれには年齢的なものが決定的に関係してるのかなあ。まあ人間は誰でも生まれたときから、いずれ死ぬことは決まってる。生まれたときから死が射程に入ってるんだけど、40代の真ん中になっていよいよ射程距離に近付いてきたなってリアルに感じる機会が増えてきたから、こういう詞になったっていう面があるんだと思いますよ。
──これまでも鈴木さんは詞の大きなテーマの1つに「生きることと死ぬこと」を据えていましたけど、今回のように本当に正面切って歌いきるのは……。
鈴木 初めてかもしれないですね。
──ただ、あえて歌おうと思ったわけではない、と。
鈴木 死は日常にくっついてるわけだから。日々ぼんやりそういうことを考えてはいるから、特別「死のことを考えました」「死を歌うための言葉を探しました」っていうわけではないし、これを歌うことに対して特別何か覚悟や勇気がいったっていうわけでもないですね。
マエカワ ホントにリアルな感じなんですよね。自分たちにとってもそうだし、親の世代もそういう年齢だし。
鈴木 バンドで集まると話題がたいがい健康の話になりますからね(笑)。
マエカワ それにミュージシャンや俳優さんなどでも「この人亡くなったんだ!」っていうことが増えてきたというか、ね。子供の頃から観ていた人が亡くなったりっていうことが。そういうことがあるとより身近にはなりますよね。
鈴木 だから自然かなあ。僕にとっては「甘いラブソングを書いてくれ」って言われるほうが勇気がいりますね。
竹安 恋愛が一番大事なことじゃなくなってる(笑)。
鈴木 うん。おじさんがそんなにしょっちゅう恋してるわけないじゃないですか(笑)。
軽いですよ、僕らは
──しかも今作が面白いのが、だからといって深刻にはなりすぎない。最初に皆さんがおっしゃっていた通り、ライブ的。聴いていてすごく高揚するんですよね。この“死”と”高揚”ってどうすれば共存させられるんだろう?っていうのがすごく不思議なんですよ。
鈴木 曲調が明るいのが多いからかなあ。こういう歌詞でドヨーンっていう感じの暗い曲を当てちゃったら、ちょっと身もフタもないじゃないですか。でもこのアルバムは曲調がバラエティに富んでるし、今までのアルバムの中でも一番アップテンポな曲が多い。それが大きいのかなあ。
マエカワ 昔から「歌詞が暗いですね」って言われることが多かったんだけど、結局歌ってる人間の声とバンドサウンドがこれだから、そうは聞こえない。歌詞を読んだだけのときと曲として聴いたときの印象が全然違うんですよね。
鈴木 みんな、ニヤニヤしながら「暗い」って言いますもん(笑)。(トーンを下げて)「……暗いですね」っていう感じじゃない。そういうキャラには見られてないし、実際にそういうキャラじゃない。逆にこれくらいシリアスなことを歌っておかないと浮ついちゃうんですよ。軽めのキャラだから。
──それこそ結成25周年。キャリア十分の皆さんなのに今も軽く見られます?
マエカワ 軽いですよ、僕らは(笑)。
──あはははは(笑)。
マエカワ 若手からはもちろん先輩として見てもらえてるけど、たぶん僕らくらいのキャリアのバンドの中では、かなり敷居の低いほうだと思います。自分らもそれでいいと思ってるし。若い人たちとも知り合いたいし、上の世代の人たちからもかわいがってもらいたいし。だから「年とったから威厳を持たなきゃ」みたいなことは考えてないですね。
小西 もともとの人間性の問題なんですよ。先輩として年下と話すのも楽しいですけど、年上の人といるほうがどっかで気が楽だったり。全員、むしろ威厳を保つほうが大変なタイプなんですよね(笑)。
竹安 それは音についてもそうで、昔から「The Clashみたいなバンドが理想で、そういうものを目指して」みたいなシリアスな雰囲気がバンドの中になかったから。最初から「フラカンみたいなもの」っていうなんとなく共有しているイメージに対して、それぞれのメンバーがどういう工夫ができるかっていうことを繰り返してきたというか。もちろんそれぞれ理想のプレイヤー像みたいなものを持ってはいるんだけど、それとは別に「フラカンとして曲を作るとしたらどうすればいいのか?」っていうことを、ああじゃない、こうじゃないってやり続けてきただけだから。
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- ニューアルバム「Stayin' Alive」2015年1月21日発売 / Sony Music Associated Records
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3456円 / AICL-2805~6
- 通常盤 [CD] 3024円 / AICL-2807
CD収録曲
- short hopes
- 地下室
- 星に見離された男
- 死に際のメロディー
- 東京の朝
- 祭壇
- この世は好物だらけだぜ
- 感じてくれ
- 未明のサンバ
- マイ・スウィート・ソウル
- ファンキーヴァイブレーション(※ボーナストラック)
初回限定盤DVD収録内容
フラカン結成25周年ワンマンツアー「4人で100才」(2014.04.23 at京都磔磔)より
- 小さな巨人
- ロックンロール
- 東京ヌードポエム
- 終わらないツアー
フラワーカンパニーズ
1989年4月に鈴木圭介(Vo)、グレートマエカワ(B)、竹安堅一(G)、ミスター小西(Dr)の4人により名古屋で結成されたロックバンド。地元・名古屋を拠点とした精力的なライブ活動を経て、1994年に上京。1995年にアルバム「フラカンのフェイクでいこう」でメジャーデビューを果たす。以後、2000年までに6枚のフルアルバム、1枚のミニアルバム、12枚のシングルを発表。翌2001年にメジャーレーベルを離れ、活動の場をインディーズに移す。その後も「発熱の男」「東京タワー」「世田谷夜明け前」「脳内百景」といった名作を連発。特に2004年に発表されたシングル「深夜高速」は、ファンのみならず多くのロックファンから愛され続けている。2008年11月、7年8カ月ぶりにメジャー復帰。バンド結成20周年を迎えた2009年には「深夜高速」をさまざまなアーティストがカバーしたコンピレーションアルバム「深夜高速 -生きててよかったの集い-」のリリースや、11年ぶりの日比谷野外大音楽堂ワンマンライブなどで注目を集めた。2010年1月には結成20周年を記念した初のオールタイムベストアルバム「フラカン入門」を発表。同年3月発売のシングル「元少年の歌」は映画「誘拐ラプソディー」の主題歌に起用され話題となった。そして2013年にはオリジナルアルバム「ハッピーエンド」を、2015年1月には「Stayin' Alive」をリリースした。