音楽ナタリー PowerPush - フラワーカンパニーズ
25年を生き抜き、今を生き抜く バンドを活写する「Stayin' Alive」
昨年4月、結成25周年を迎えたフラワーカンパニーズ。そんな彼らが通算15枚目のオリジナルアルバム「Stayin' Alive」をリリースした。
ミディアム、スローチューンが出揃った前作「ハッピーエンド」から2年3カ月ぶりとなる本作で、彼らはサウンドデザインを大きく転換している。アップリフティングでタイトなビート主体のサウンドに生と死を虚心に見つめる言葉を乗せる楽曲群をラインナップ。シリアスな状況にありながらも生きていく人々をときには高揚させ、また、ときには彼らに優しく寄り添う楽曲群が居並ぶ“Stayin' Alive”な1枚を作り上げている。
「ハッピーエンド」リリース時、鈴木圭介(Vo)はバンドのスタンスについて「ウエットとドライの真ん中とか、そこは自分でも狙っているところだと思う」と表現していた。そんな彼らが記念すべき25周年イヤーに死の匂いをまといつつも「生き抜け」と明言するその理由とは? 4人に聞いた。
取材・文 / 成松哲 ライブ撮影 / 柴田恵理
ギターが一発ドカーンと鳴ってりゃいいじゃん
──2012年秋のアルバム「ハッピーエンド」リリース時の伊集院光さんとの対談(参照:フラワーカンパニーズ&伊集院光「ハッピーエンド」対談)で鈴木さんとマエカワさんは当時のことを「アッパーな曲をやるモードじゃなかった」とおっしゃっていました。
鈴木圭介(Vo) ええ。
──そして2年後にリリースされた今作「Stayin' Alive」なんですけど、アップリフティングなナンバーが目立ちます。確実にモードが変わってますよね。
グレートマエカワ(B) きっかけはあれかな? ライブでは今でもアンティノス時代(1995~2000年)の曲もやるわけで。そうするとスタッフが「ああいう曲もいいよね」「今やってもいいんじゃない?」って言うから「それもそうだね」っていう感じだったのと、ここ何枚かのアルバムは「鈴木が作ってきたいいメロディや歌詞を生かそう」っていうモードで作ってたんだけど、そういう作り方をすると、いいアルバムにはなるんだけど「ツアーでこれはやれないな」っていう曲も多くなって。ここ最近は「それもちょっともったいないなあ」っていう感じになっていた。だからちょっと粗い言い方なんだけど、今回のアルバムは、ライブで全曲できるようなアルバム。「ギターが一発ドカーンと鳴ってりゃいいじゃん」みたいな作り方をしてもいいかって感じになったんですよね。
──やってみてもいいかって“感じ”なんですか? 打ち合わせをするわけではなく。
竹安堅一(G) 今回に限らず「こういうアルバムにしよう」って、最初っから決め打ちで作ることってないんですよ。
鈴木 このあいだの「ハッピーエンド」だけはちょっと違ったんですけどね。震災があったし、あれは「こういうアルバムを作ろう」って話し合いの上で作った1枚だったんだけど。
マエカワ ただやっぱり「ハッピーエンド」は例外ですよね。今回のアルバムについても「ライブで新しい曲をやりたいな」「(ライブの)ケツのあたりに新曲ほしいな」とか、そういう気持ちが全員の中にあったからこうなったっていうだけなんですよ。
竹安 ここのところずっとライブの感じがよかったから。
ライブがよくなればバンド全体がアガれる
──ここのところっていうのはどのあたりから? というか、この25年、ライブがダメだった瞬間があるのか?っていう疑問もあるんですよ。「だってフラカンだぜ。ライブがカッコいいに決まってるじゃん」って(笑)。
マエカワ 確かにイヤな感じのライブをすることはまずないんだけど(笑)。なんだろうな?
竹安 地方の動員かな。
マエカワ うん。大都市での動員が変わってるか?っていえば、そんなに変わってはいないですよ、正直な話。「売れてますね」って言われれば「いや、なかなか難しいですね」って言葉しか出てこないんだけど(笑)、地方ですよね。
竹安 お客さんが4~5人だけっていうこともあった地方の動員がここ数年だいぶ変わってはきてるんですよね。
ミスター小西(Dr) そういうことに感化されないバンドもいるとは思うんですけど、僕らはお客さんの反応がいい状態で演奏したほうが、自分たちが思ってもみなかった地点まで行けるバンドなので。で、僕らにとってはライブもアルバム制作と同じようにライフワークだから、動員がよくなるとライブだけじゃなくてバンド全体がいい方向にアガれるようになるんですよ。だから、ここ何年か動員がじわりじわり伸びてきてるのが、メンバー全員の気持ちの変化にもつながったんでしょうね。
──そして最近のライブに漂うムードが反映されたアルバム「Stayin' Alive」が完成した、と。
マエカワ うん。ギターをバーンッと鳴らすってことは、それに負けないようにベースとドラムもデカくなるし、歌もデッカくなるし。いい曲にするためにまとめようとするんじゃなくて、ね。
──実際すごく威勢のいいロックアルバムになりましたよね。「ハッピーエンド」には7分超えの「エンドロール」や8分超えの「天使」のような“聴かせる”大作があったけど、今作はタイト。どの曲も5分以内。ものすごく小気味がいいですよね。
マエカワ 実は「祭壇」は、前からあった曲、しかも作った当時は大作だったんですよ。でも「エンドロール」をライブでやるようになってからは「もう1曲、ミディアムスローの大作をやるのは違うかな」って感じがあったから。「もうちょっとリズムを聴かせたい」「わかりやすいノリにしたいな」っていうのがあって、今の「祭壇」のアレンジになったんですよね。
次のページ » おじさんがそんなにしょっちゅう恋するわけがない
- ニューアルバム「Stayin' Alive」2015年1月21日発売 / Sony Music Associated Records
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3456円 / AICL-2805~6
- 通常盤 [CD] 3024円 / AICL-2807
CD収録曲
- short hopes
- 地下室
- 星に見離された男
- 死に際のメロディー
- 東京の朝
- 祭壇
- この世は好物だらけだぜ
- 感じてくれ
- 未明のサンバ
- マイ・スウィート・ソウル
- ファンキーヴァイブレーション(※ボーナストラック)
初回限定盤DVD収録内容
フラカン結成25周年ワンマンツアー「4人で100才」(2014.04.23 at京都磔磔)より
- 小さな巨人
- ロックンロール
- 東京ヌードポエム
- 終わらないツアー
フラワーカンパニーズ
1989年4月に鈴木圭介(Vo)、グレートマエカワ(B)、竹安堅一(G)、ミスター小西(Dr)の4人により名古屋で結成されたロックバンド。地元・名古屋を拠点とした精力的なライブ活動を経て、1994年に上京。1995年にアルバム「フラカンのフェイクでいこう」でメジャーデビューを果たす。以後、2000年までに6枚のフルアルバム、1枚のミニアルバム、12枚のシングルを発表。翌2001年にメジャーレーベルを離れ、活動の場をインディーズに移す。その後も「発熱の男」「東京タワー」「世田谷夜明け前」「脳内百景」といった名作を連発。特に2004年に発表されたシングル「深夜高速」は、ファンのみならず多くのロックファンから愛され続けている。2008年11月、7年8カ月ぶりにメジャー復帰。バンド結成20周年を迎えた2009年には「深夜高速」をさまざまなアーティストがカバーしたコンピレーションアルバム「深夜高速 -生きててよかったの集い-」のリリースや、11年ぶりの日比谷野外大音楽堂ワンマンライブなどで注目を集めた。2010年1月には結成20周年を記念した初のオールタイムベストアルバム「フラカン入門」を発表。同年3月発売のシングル「元少年の歌」は映画「誘拐ラプソディー」の主題歌に起用され話題となった。そして2013年にはオリジナルアルバム「ハッピーエンド」を、2015年1月には「Stayin' Alive」をリリースした。