ナタリー PowerPush - フラワーカンパニーズ
フラカン×伊集院光、初の対談
フラワーカンパニーズがニューアルバム「ハッピーエンド」をリリース。これを記念してナタリーでは鈴木圭介(Vo)、グレートマエカワ(B)と、名曲「深夜高速」をきっかけに彼らのファンになったという伊集院光の初対談を行った。
表現を続けることの意味、震災後におけるエンタテインメントの在り方から理想の死に方まで。ロックとお笑い、それぞれのシーンで際立った個性を発揮し続ける両者の刺激的なトークセッションを堪能してほしい。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 広川智基
僕の年齢と同じくらいの感じで動いているバンド
──伊集院さんがフラワーカンパニーズを知ったきっかけはなんだったんですか?
伊集院光 ま、しょっちゅうなんですけど、そのときも仕事で追い詰められてたんですよね。かなり状態が悪かったんですけど、ラジオ(TBS系「深夜の馬鹿力」)のディレクターから提示されたその日のオンエア用の曲をいくつか聴いてるときに「深夜高速」に心をつかまれて。
鈴木圭介 ありがとうございます。
伊集院 僕はラジオDJを長くやってますけど、音楽にこだわってかけるほうではないんですよ。ただ、ずっと思っていたことがあって。THE BLUE HEARTSとかが好きな世代ではあるんですが、今もう“クソったれの大人”と言われる側の世代じゃないですか。たとえ色あせない名曲であっても、40歳を超えると「これはちょっとキツイな」って思うこともあるんですよね。そうすると、僕の年齢と同じくらいの感じで動いているバンド、そういう曲を探すようになるんです。そのひとつが、SIONとかなんですが、あの人は昔と同じような”やってらんねえよ”という感じもありつつ……。
鈴木 ちゃんと老いていく感じもある。
伊集院 そう。それがすごくいいんですよね。10代の美しさを歌うのも素晴らしいけど、「それ、すぐに終わるよ」っていうのも歌ってくれなくちゃ困るんだよなあって。フラワーカンパニーズもまさにそうなんです。
──「歳は取るぜ」ってハッキリ歌ってるバンドですからね。
グレートマエカワ うれしいですね、ホントに。
鈴木 ひとつのテーマなんですよ、老いるっていうのが。
伊集院 まだ60歳、70歳レベルの老いじゃないんだけど、「まだまだ若いぜ」って飾りすぎていてもツライっていう。
ビックリするような売れ方をした「深夜高速」
鈴木 ただね、「深夜高速」ができたとき、メンバーに聴かせるのがものすごく恥ずかしかったんですよ。歌モノであればあるほど、マジメであればあるほど恥ずかしいんですけど、「生きててよかった」っていう歌詞はねえ……。あれ、ちょっと“(相田)みつを”じゃないですか。
マエカワ そうね(笑)。
鈴木 いや、相田みつをさんは素晴らしいと思いますよ。だけど……。
伊集院 それをマネするのは、ちょっと話が違わねえ?っていう。
鈴木 そうなんです! 「深夜高速」はギリギリというか、「あいつ、あんなクセエこと歌ってるぞ」って思われるんじゃないかって。
マエカワ 実際、「これ、痛くねえか?」って言いましたから。あの曲を出したのは2004年なんですけど、2001年、2002年あたりの鈴木は公私ともにどん底だったんです。そばにいても「こいつ、やべえな」って思うくらい。その鈴木が「生きててよかった」って歌うっていう……。曲の良し悪しよりも「これを歌ったら痛いんじゃないか」っていうことが気になって。
伊集院 その揺れ方はすごく同調できるというか。僕もね、“青春FMのDJ”みたいな人にずっと石を投げてきちゃったから。自分のラジオで聴いてる人を勇気づけるようなことを言うと、その石が自分のところに降ってきちゃうんですよ(笑)。だから、最後に「でも、キンタマ出てますけどね」とか言って、調和しなくちゃいけないっていう。
マエカワ ハハハハハ!(笑) でも、わかります。
伊集院 でも「今日、これを言っておかないと」ということもあって。その感じに似てるのかもしれないですね。
鈴木 いや、ホントにそうですね。「深夜高速」を作った頃はインディーズというか、自主制作でやってて。ツアーのための“つなぎ”だったんですよ、言ってみれば。
マエカワ 何か売るものがないと、お客さんを呼び込めないですからね。
鈴木 要はライブ会場で手売りするわけですけど、「深夜高速」はね、ビックリするような売れ方をしたんですよ。
マエカワ 初めてフラカンのライブを観た若い人が物販で「『生きててよかった』っていう曲はどれですか?」って。1000人くらい入ってたイベントで、100枚くらい一気に売れたときもあって。
鈴木 それが理解できなかったんですよ、初めは。そのころはもう、32歳くらいですからね。他のバンドを目当てにしてた10代のお客さんが「深夜高速」のCDを買ってくれるっていう。
伊集院 謎なんですよね、そこが。毎週ラジオをやってても、「今日は来た!」っていう回があるんですよ。それはもう、射精より気持ちいいくらいの。でもね、年末とかに「今年の名場面」を募集すると、俺がいいと思った回は選ばれないんですよねえ。
鈴木 めちゃくちゃわかります(笑)。
伊集院 ま、誤解されると困るのは、プロとしてどうか?ってレベルのものはどれひとつとっても提示していないつもりではあるんですがね。一致はしない。
- ニューアルバム「ハッピーエンド」 / 2012年10月3日発売 / Sony Music Associated Records
- ニューアルバム「ハッピーエンド」
- ニューアルバム「ハッピーエンド」初回限定盤 [CD+DVD] 3300円 / AICL-2435~36
- ニューアルバム「ハッピーエンド」通常盤 [CD] 3059円 / AICL-2437
CD収録曲
- また明日
- ロックンロール
- エンドロール
- 旅待ち
- 人生 GOES ON
- SO LIFE
- 夏のにおい
- なれのはて
- 246
- ひとつだけ
- 煮込んでロック
- 宛てのない歌
- 天使
DVD収録内容
- エンドロール(Music Clip)
- 新曲リハーサル映像~2012.07.30 at 梅ヶ丘 Rinky Dink Studio~
フラワーカンパニーズ
1989年4月23日に鈴木圭介(Vo)、グレートマエカワ(B)、竹安堅一(G)、ミスター小西(Dr)の4人により名古屋で結成されたロックバンド。地元・名古屋を拠点とした精力的なライブ活動を経て、1994年に上京。1995年にアルバム「フラカンのフェイクでいこう」でメジャーデビューを果たす。以後、2000年までに6枚のフルアルバム、1枚のミニアルバム、12枚のシングルを発表。しかし、翌2001年にメジャーレーベルを離れ、活動の場をインディーズに移す。その後も「発熱の男」「東京タワー」「世田谷夜明け前」「脳内百景」といった名作を連発。特に2004年に発表されたシングル「深夜高速」は、ファンのみならず多くのロックファンから愛され続けている。2008年11月、7年8カ月ぶりにメジャー復帰。バンド結成20周年を迎えた2009年には「深夜高速」をさまざまなアーティストがカバーしたコンピレーションアルバム「深夜高速 -生きててよかったの集い-」のリリースや、11年ぶりの日比谷野外大音楽堂ワンマンライブなどで注目を集めた。2010年1月には結成20周年を記念した初のオールタイムベストアルバム「フラカン入門」を発表。同年3月発売のシングル「元少年の歌」は、初の映画主題歌(「誘拐ラプソディー」)に起用され話題となった。2012年10月3日、約2年ぶりのオリジナルアルバム「ハッピーエンド」をリリースしたばかり。
伊集院光(いじゅういんひかる)
1967年11月7日生まれ、東京都出身のタレント。1984年に落語家としてデビューし、1990年よりタレントに転身して活動する。1991年3月よりニッポン放送「伊集院光のOh!デカナイト」のパーソナリティを務め、若者を中心に急速に支持を拡大する。1995年10月からはTBSラジオのレギュラー番組「深夜の馬鹿力」がスタート。放送開始から17年の歴史を持つ人気長寿番組となっている。このほか数々のバラエティ番組やテレビドラマ、映画などでも活躍。テレビのクイズ番組では雑学王としての一面も披露している。