ナタリー PowerPush - フラワーカンパニーズ
結成21年目で新ステージ到達 心境の変化が生んだ最高傑作
プロデューサーは「1~2曲ならありかもしれないね」
──亀田誠治さんが「感情七号線」をプロデュースしていますが、外部プロデューサーを入れようというアイデアも最初からあったんですか?
マエカワ レコーディング前のミーティングで、「何曲かプロデューサーを入れるのもいいね」って話が出たんです。今年出したシングル「元少年の歌」のカップリングで「深夜高速」を曽我部(恵一)くんにプロデュースしてもらったら、やっぱり新鮮だったし。「1~2曲ならありかもしれないね」みたいな感じで、何人かプロデューサーの候補を挙げてもらったんです。
鈴木 そこで「亀田さんはどう?」と名前が出て。僕はプロデューサーのことは全然詳しくないけど、亀田さんのことはたまたま「情熱大陸」(TBS系)で観て知ってたから。
──個人的に接点があったわけじゃないんですか?
鈴木 全くなかったけど、亀田さんって言われたときに「情熱大陸」のことが頭にあったので「亀田さんならやりたいです」と。プロデューサーにはバンド内をグチャグチャにかき回して去っていく人みたいなイメージがあったんですけど、「情熱大陸」の亀田さんはそうじゃなかったし、実際とてもいい人でした。
マエカワ (椎名)林檎ちゃんとかスピッツとかを聴いても亀田さんがすごいってことはわかるし。たまたまスピッツと話したときに「亀田さんってどう?」と聞いたら、「すごく褒め上手だよ」「絶対いいと思うよ」って言われたので、じゃあお願いできるならしてみようかと。
鈴木 で、ちょうどうまい具合にスケジュールも合って。
マエカワ 亀田さんもかなり忙しい時期だったから、一緒にできてラッキーだったよね。
「Yesterday」みたいに室内管弦楽になってもいい
──実際亀田さんとお仕事してみて、どうでした?
鈴木 いやぁ、もう得るものだらけでしたよ。最高の人ですね。みんなが一緒にやりたがるのがすごくよくわかった。雰囲気作りもすごくうまいしさすがだよね。
マエカワ 本当に「こういう人が音楽家だな」っていう感じがしましたね。
鈴木 僕が勝手に“亀田ジャンプ”と名付けたジャンプがあるんですけど(笑)、良いテイクが録れた後の亀田さんは舞うんですよ。
マエカワ 「いいねー!!」(実際に亀田ジャンプをしながら)。
鈴木 バレリーナのように回りながら舞うんですけど、あれが出るとこっちも心の中で「よしっ、亀田ジャンプ出た!」って(笑)。
──亀田さんがプロデュースすることで、具体的には何が変わるんですか?
鈴木 曲のメロディやコードは全く変わってないです。プリプロの段階で、亀田さんがシンセでストリングスを入れたのと、前奏や後奏が付いたくらい。
マエカワ 「感情七号線」だけギターアンプもドラムセットも違うし、録り方も全然違うんです。録ってる最中は、いつものフラカンらしいふくよかさがちょっと足りなくて大丈夫かなと思ってたけど、トラックダウンが終わったときにはすごいパンパンな音になっていて。こういうことは、なかなか自分たちじゃできませんよ。
鈴木 最初のミーティングで、亀田さんには「ライブでの再現は考えなくていいです。全く別モノになってもいいぐらいです」と伝えたんです。
マエカワ 大袈裟に言うと、THE BEATLESの「Yesterday」みたいに室内管弦楽になってもいいですよ、って。
鈴木 それぐらいぶっ壊してもらっていいと。
マエカワ でも亀田さんは「いやいや、せっかくいいバンドなんだから」と言って、結局バンドのデモにプラスアルファする方向で考えてくれて。そのへんもうれしかったですよね。
ライブの熱気を詰め込むには限界がある
──このアルバムは全体的に、音作りが今まで以上に細やかというか丁寧な感じがします。
マエカワ 今回は丁寧ですね。1曲1曲、曲によって音の感触を変えていこうって。ドラムが今までと一番違うかな。
鈴木 音決めにめちゃくちゃ時間かけたしね。
──すごく緩やかに始まって、間にライブで盛り上がるような曲も入る。その波が特に激しい1枚だと思います。今までのフラカンの作品と比べてもすごく新鮮ですね。
鈴木 僕らも作っていてすごく新鮮でした。
──単に「ライブの熱をパッケージしよう」みたいなことではないですもんね。
鈴木 曲によってはもちろんそういう感覚もありますけど、アルバムとしては違いますね。
マエカワ ライブの熱気を単に詰め込もうとしても、やっぱり限界がありますしね。
鈴木 やっぱりそこはお客さんがあって成り立つものだから。
マエカワ アルバムはいろんな人に聴いてもらいたいし、ちゃんと聴いてもらえる良い盤を作りたい。でも、その“良さ”はライブの熱気とはまた違うもんだと思うんです。今回も「ラララで続け」みたいなライブで栄える曲はあるけど、アルバム全体として考えたらライブを完全に切り離して作ってますね。
CD収録曲
- 感情七号線
- 元少年の歌(Album ver.)
- ラララで続け!
- 終わらないツアー
- 日々のあぶく
- 最低気温
- 夏の空
- 切符
- チェスト
- M.R.I
- 雲の形
- エコー
- ペダルマシンミュージック
- TEENAGE DREAM
- どっち坊主大会(初回盤のみボーナストラック)
フラワーカンパニーズ
1989年4月23日に鈴木圭介(Vo)、グレートマエカワ(B)、竹安堅一(G)、ミスター小西(Dr)の4人により名古屋で結成されたロックバンド。地元・名古屋を拠点とした精力的なライブ活動を経て、1994年に上京。1995年にアルバム「フラカンのフェイクでいこう」でメジャーデビューを果たす。以後、2000年までに6枚のフルアルバム、1枚のミニアルバム、12枚のシングルを発表。しかし、翌2001年にメジャーレーベルを離れ、活動の場をインディーズに移す。同年からそれまで以上に活発なライブ活動を敢行。2002年にはインディレーベル「トラッシュ・レコーズ」の設立に参加し、7thアルバム「吐きたくなるほど愛されたい」をリリースする。以降も「発熱の男」「東京タワー」「世田谷夜明け前」「脳内百景」といった名作を連発。特に2004年に発表されたシングル「深夜高速」は、ファンのみならず多くのロックファンから愛され続けている。2008年11月には7年8カ月ぶりにメジャー復帰を果たし、アルバム「たましいによろしく」とシングル「この胸の中だけ」を同時発売。バンド結成20周年を迎えた2009年には、「深夜高速」をさまざまなアーティストがカバーしたコンピレーションアルバム「深夜高速 -生きててよかったの集い-」のリリースや、11年ぶりの日比谷野外大音楽堂ワンマンライブなどで注目を集めた。2010年1月には結成20周年を記念した初のオールタイムベストアルバム「フラカン入門」を発表。同年3月発売のシングル「元少年の歌」は、初の映画主題歌(「誘拐ラプソディー」)に起用され話題となった。バンドは現在も全国各地でライブ活動を展開中。またグレートマエカワや竹安堅一は、うつみようこ & YOKOLOKO BANDなどにも参加している。