ナタリー PowerPush - フラワーカンパニーズ
結成21年目で新ステージ到達 心境の変化が生んだ最高傑作
フラワーカンパニーズがニューアルバム「チェスト!チェスト!チェスト!」を11月3日にリリースする。本作は再メジャーデビュー作「たましいによろしく」から、約2年ぶりに発表されるオリジナルアルバム。ライブの定番になりそうなロックチューンから聴き手の琴線を刺激するミディアムナンバーまで、バラエティに富んだ楽曲がズラリと並ぶ。また、キーボードやパーカッションなどゲストプレイヤーの積極的な起用や、亀田誠治をプロデューサーに迎えた楽曲など、これまでにないチャレンジもたっぷり詰め込まれている。
今回ナタリーでは、メンバーの鈴木圭介(Vo)とグレートマエカワ(B)にインタビューを敢行。ニューアルバムについてはもちろんのこと、結成21年目を迎えた心境の変化、亀田誠治との制作で得たものなど、興味深い話題をたっぷり語ってもらった。
取材・文/西廣智一 インタビュー撮影/中西求
同じ単語を3つ並べると渋谷系にもなるし
──いよいよ2年ぶりのオリジナルアルバムが発売されますが、すごくいいアルバムですね。
鈴木圭介 ホントですか、ありがとうございます。
──まずアルバムタイトルの「チェスト!チェスト!チェスト!」。このインパクトあるタイトルを思いついたのは、どういうきっかけだったんですか?
鈴木 これはもうすごく単純。レコード会社の人とタイトルを考えてたとき、収録曲を見て「あ、『チェスト』ってアリかもしれない」と思って。ホワイトボードに「チェスト」「チェスト」「チェスト」って3つ書いたんです。
グレートマエカワ そうしたら「これ、字面がいいね!」って。
鈴木 ちょっと(フリッパーズ・ギターの)「カメラ!カメラ!カメラ!」みたいだし。
──いやいやいや(笑)。
マエカワ 同じ単語を3つ並べると渋谷系にもなるし、(THE DAMNEDの1stアルバム)「DAMNED DAMNED DAMNED」もあるから。そんな笑い話をしながら、「これに決めちゃおうか」って満場一致で決定したんです。
──タイトルだけでイメージすると、勢いのあるロックアルバムなのかと思うけど、実際に聴くと全体的に深みがあって、酸いも甘いも噛み分けてきた40代の男たちが作りあげた、歌詞にしろメロディにしろひとつひとつ無駄のないアルバムで。
鈴木 「チェスト!チェスト!チェスト!」って気合が入ったタイトルなのに、いきなりメロディアスなミディアムナンバーから始まるし。
マエカワ いきなり「負け癖ばかりが 染みついてるから」っていう弱気な言葉から入ってきますから(笑)。そのギャップはすごいですよね。
コンセプトは「最高傑作を作ろう」
──今回は制作の際、どういうアルバムにしようと考えてましたか?
マエカワ コンセプトは「最高傑作を作ろう」。今までもそういう気持ちでいたはずなんだけど、言葉にして相談したこともなかったんです。
鈴木 今回はミーティングでも「とにかく名盤を作ろう」って言ってたよね、キャッチフレーズみたいに。
マエカワ 雑誌の「名盤100選」みたいなのがあるじゃないですか。ああいうのに絶対入るような、後世に残るぐらいの名盤を作ろうと。
鈴木 あと、前作の「たましいによろしく」があの時点での4人でやれることのピークというか、4人でやりきった感じだったんですよ。それで、今回は曲が一番良くなることを重点的に考えて、4人だけでやることにこだわらなくてもいいんじゃないのっていう話になったんです。
マエカワ この曲には何が必要かというのを今まで以上に考えた結果、だったらいろんなミュージシャンに入ってもらおうと。
鈴木 プリプロ(プリプロダクション。本番のレコーディング以前に、曲の構成やアレンジを確認するための簡易的レコーディングのこと)もきちっとやったし。エンジニアも5人ぐらいに頼んで、スタジオもコロコロ変えてます。
マエカワ そのへんはより綿密というか、今回はちゃんと考えてレコーディングを進めてましたね。
インディーズの頃ならプリプロを本チャンにしてたかも
──制作にはどれくらいかかったんですか?
マエカワ レコーディング期間は半年ぐらいですけど、プリプロから考えたら1年、1年半ぐらいかな。
鈴木 本チャンのレコーディングは今年の春から。1曲録ってはツアーに行って、また1曲録ってはツアーに行ってみたいな、そんな感じですね。
──間を置いて録っていくことで、曲によってテンションが変わったりはしませんでしたか?
マエカワ ライブとライブの間に録ったから、むしろずっと上がりっぱなしですよ。本当ならボーカルのレコーディングはライブから1週間は空けたいし、できれば1カ月まとまった時間を取りたかったけど、結果的には勢いがあって良かったと思います。
──ちゃんとプリプロをやってから、じっくりスタジオに入って時間をかけてレコーディングするのって、メジャーならですよね。
鈴木 そうですね。インディーズの頃だったらプリプロで録ったものを本チャンにしてたかもしれない。
マエカワ うん、お金の問題もあるし。
──そもそもフラカンって、昔メジャーでやっていたときもプリプロなしだったんですか?
マエカワ ないです。その頃はプリプロが嫌いで、プリプロをすることで曲に新鮮味がなくなる気がしてた。でも、今は「曲の青写真が見えてたほうがいいかもしれないね」という感じで、プリプロに対する考え方が変わりましたね。この音をもっと足したいとか、逆にどんどん排除したりとか、いろいろ考えることができたのは良かったです。
CD収録曲
- 感情七号線
- 元少年の歌(Album ver.)
- ラララで続け!
- 終わらないツアー
- 日々のあぶく
- 最低気温
- 夏の空
- 切符
- チェスト
- M.R.I
- 雲の形
- エコー
- ペダルマシンミュージック
- TEENAGE DREAM
- どっち坊主大会(初回盤のみボーナストラック)
フラワーカンパニーズ
1989年4月23日に鈴木圭介(Vo)、グレートマエカワ(B)、竹安堅一(G)、ミスター小西(Dr)の4人により名古屋で結成されたロックバンド。地元・名古屋を拠点とした精力的なライブ活動を経て、1994年に上京。1995年にアルバム「フラカンのフェイクでいこう」でメジャーデビューを果たす。以後、2000年までに6枚のフルアルバム、1枚のミニアルバム、12枚のシングルを発表。しかし、翌2001年にメジャーレーベルを離れ、活動の場をインディーズに移す。同年からそれまで以上に活発なライブ活動を敢行。2002年にはインディレーベル「トラッシュ・レコーズ」の設立に参加し、7thアルバム「吐きたくなるほど愛されたい」をリリースする。以降も「発熱の男」「東京タワー」「世田谷夜明け前」「脳内百景」といった名作を連発。特に2004年に発表されたシングル「深夜高速」は、ファンのみならず多くのロックファンから愛され続けている。2008年11月には7年8カ月ぶりにメジャー復帰を果たし、アルバム「たましいによろしく」とシングル「この胸の中だけ」を同時発売。バンド結成20周年を迎えた2009年には、「深夜高速」をさまざまなアーティストがカバーしたコンピレーションアルバム「深夜高速 -生きててよかったの集い-」のリリースや、11年ぶりの日比谷野外大音楽堂ワンマンライブなどで注目を集めた。2010年1月には結成20周年を記念した初のオールタイムベストアルバム「フラカン入門」を発表。同年3月発売のシングル「元少年の歌」は、初の映画主題歌(「誘拐ラプソディー」)に起用され話題となった。バンドは現在も全国各地でライブ活動を展開中。またグレートマエカワや竹安堅一は、うつみようこ & YOKOLOKO BANDなどにも参加している。