ナタリー PowerPush - フラワーカンパニーズ

初のオールタイムベスト発売記念 フラカン激動の20年の真実に迫る

昨年結成20周年を迎えたフラワーカンパニーズが、初のオールタイムベストアルバム「フラカン入門」をリリースした。今作はファンからのリクエストをもとに、ライブでの定番ナンバーや隠れた名曲などバラエティ豊かな楽曲が満載。フラカンに対するファンの熱い想いが凝縮され、文字どおりの入門者だけでなくコアなファンにも強く響く1枚に仕上がっている。

このベストアルバム発売を記念して、ナタリーではメンバーの鈴木圭介(Vo)とグレートマエカワ(B)にインタビューを敢行。ベストアルバムにまつわる話題から始まり、この20年間を振り返る濃厚なトーク、さらにはこれからの10年に向けた展望まで、フラワーカンパニーズというバンドの魅力に迫ったロングインタビューをじっくり楽しんでほしい。

取材・文/西廣智一 インタビュー撮影/中西求

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リクエスト1~17位をそのままアルバムの曲順にした

──昨年4月から20周年ということでいつも以上に攻めてるイメージがありましたが、皆さんはどういう意識で過ごしてきたんですか?

インタビュー写真

グレートマエカワ 節目の年なので楽しませてもらおうかなと。ちょうどアソシ(Sony Music Associated Records)と一緒に仕事し始めてエンジンもかかってきたところだったし、「深夜高速 -生きててよかったの集い-」とかいろいろやってみたりして。ベスト盤も最初は出すつもりはなかったんだけど、この流れで「ベスト盤も面白いんじゃないの?」という話になって。「普通のベスト盤じゃなく、ファンに収録曲を選んでもらったらいいんじゃない?」と、どんどん決まっていったんです。

──実際に集まったファンからのリクエストは、皆さんがイメージしていた選曲に近かったですか?

マエカワ 大きくは違ってなかったけど、「これ入るんだ、すげぇな」と驚くような曲もいくつかあって。

鈴木圭介 そうですね、「この曲こんなに人気あったのか!」とかさ。

マエカワ はじめはリクエストを集めて、そこに足りないものを追加したり違うなというものは削ろうとしたりしてたんだけど、結局「曲順はこのままのほうが面白いんじゃないか?」ということになって。

──あ、この曲順って順位のままなんですか?

マエカワ そう、1曲目から1~17位の順。

鈴木 まったくいじってないんですよ。

マエカワ 最後に入れた「東京タワー」のライブ音源はこの間の野音(2009年10月17日)のテイクがすごく良かったんで、「じゃあ入れちゃおうか」ということになったんです。

──アルバムの流れが実際のライブみたいで、偶然とはいえこの曲順になったのは驚きです。実際のライブも17曲目の「YES, FUTURE」で終わることがありますよね。

鈴木 それに、後付けかもしれないけど「YES, FUTURE」で1回終わって、アンコールで「東京タワー」をやるセットリストも結構ありますし。

──選曲自体も、意外な曲が入っていて興味深いですね。

マエカワ 「元気ですか」なんてこの10年、ほとんどライブでやってないですからね。

鈴木 全部で10回もやってないんじゃないの?

マエカワ それなのに選んでくれて、お客さんはこの曲に思い入れあるんだと思って。俺らも同じように思い入れが強い曲だから、すごくうれしかったですよ。

みんな前よりうまくなったけど出す音は変わらない

──こういう形で18曲続けて聴いてみて思ったんですが、90年代の曲と最近の曲が並んでもあまり違和感ないですね。

マエカワ 昔の曲と今の曲って、ぜんぜん違うといえば違うし、根本は一緒といえば一緒だとも思うんですよ。今も昔も、鈴木が自分の思ったことや彼に振りかかってることを歌い続けてるだけで、そこはまったく変わってないと思います。だから並べても違和感がないのかもしれないなぁ。

鈴木 演奏してる人も変わってないし。

マエカワ 歌う人もね。みんな前よりうまくなったかもしれないけど、出す音は変わらないから。やっぱりメンバーチェンジしてないことが大きいかもしれないですね。でも、アンティノス時代は「これがやりたい、ああなりたい」って意識が強くて。最近はもうできることやろうっていう気持ちに変わったけど、それは消極的になったということではなくて、自分たちでいろいろわかってきたところもあるんです。だから聴いてる人にも自然に伝わるんでしょうね。

──その「自分たちでいろいろわかってきた」タイミングって、いつ頃だったか覚えてますか?

鈴木 インディーズに移って最初のアルバム(2002年の「吐きたくなるほど愛されたい」)のときですかね。アンティノスでの最後のアルバム(2000年の「怒りのBONGO」)はわりと極端な方向にいっちゃったアルバムで、あれはあれですごい好きなんですけど、インディーズになってからそういう流れを一度全部ストップして、ぜい肉をそぎ落としたんです。

マエカワ スタッフもいなくなって、再び4人で始めた頃だしね。そこからまた、ゼロからではないけど一からやり直して、曲の作り方も「じゃあ鈴木中心で作ってみようか」って見つめ直したら良くなったりして。そこは分岐点だったのかもしれないね。

ベストアルバム『フラカン入門』 / 2010年1月27日発売 / Sony Music Associated Records

  • ベストアルバム『フラカン入門』
  • 初回限定盤[CD+DVD] 3300円(税込) / AICL-2079~2080 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤[CD] 2800円(税込) / AICL-2081 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. 深夜高速
  2. 吐きたくなるほど愛されたい
  3. 恋をしましょう
  4. はぐれ者讃歌
  5. 東京タワー
  6. 孤高の英雄(ヒーロー)
  7. 真冬の盆踊り
  8. 夜明け
  9. 冬のにおい
  10. この胸の中だけ
  11. 元気ですか
  12. 俺たちハタチ族
  13. 発熱の男
  14. サヨナラBABY
  15. 脳内百景
  16. 虹の雨あがり
  17. YES, FUTURE
    [Bonus Track]
  18. 東京タワー (LIVE)
初回盤限定:お年玉DVD収録映像
  1. 小さな巨人
    1997年5月5日@日比谷野外音楽堂 SPACE SHOWER TV Sweet Love Shower ‘97より
  2. 深夜高速
    2004年8月27日@川崎CLUB CITTA’ SET YOU FREE ~ SUMMER FESTA 2004より
  3. 終身刑 ~ NUDE CORE ROCK’N’ROLL ~ YES, FUTURE ~ 真冬の盆踊り
    2009年4月23日@京都磔磔 フラカン生誕20周年記念祭より
  4. 東京タワー
    2009年10月17日@日比谷野外音楽堂 フラワーカンパニーズ20年だョ! 全員集合より
  5. Music Video 深夜高速 (2009)
フラワーカンパニーズ

1989年4月23日に鈴木圭介(Vo)、グレートマエカワ(B)、竹安堅一(G)、ミスター小西(Dr)の4人により名古屋で結成されたロックバンド。地元・名古屋を拠点とした精力的なライブ活動を経て、1994年に上京。1995年にアルバム「フラカンのフェイクでいこう」でメジャーデビューを果たす。以後、2000年までに6枚のフルアルバム、1枚のミニアルバム、12枚のシングルを発表。しかし、翌2001年に契約終了を迎え、活動の場をインディーズに移す。同年からそれまで以上に活発なライブ活動を敢行。2002年には自主レーベル「トラッシュ・レコーズ」を設立し、7thアルバム「吐きたくなるほど愛されたい」をリリースする。以降も「発熱の男」「東京タワー」「世田谷夜明け前」「脳内百景」といった名作を連発。特に2004年に発表されたシングル「深夜高速」は、ファンのみならず多くのロックファンから愛され続けている。2008年11月には7年8カ月ぶりにメジャー復帰し、アルバム「たましいによろしく」とシングル「この胸の中だけ」を同時発売。バンド結成20周年を迎えた2009年には、「深夜高速」をさまざまなアーティストがカバーしたコンピレーションアルバム「深夜高速 -生きててよかったの集い-」のリリースや、11年ぶりの日比谷野外大音楽堂ワンマンライブなどで注目を集めた。バンドは現在も全国各地でライブ活動を展開中。またグレートマエカワや竹安堅一は、うつみようこ & YOKOLOKO BANDなどにも参加している。