ナタリー PowerPush - FLiP
4人が奏でる有毒な愛の歌
すべてのフレーズに対して責任を負いたい
──その“FLiPにおける幸福”もほかのメンバーとも共有できていた?
自分が進みたい道があるのに、しかもその道がちゃんと見えてるのに、それとは別の無難な道を進むことって逆につらくないですか?っていう思いは全員持ってますね。それにこれもメンバー全員そうだと思うんですけど「いや、そんなつらい道を選んだり、自分とディープに向き合ったりしなくても……」っていう軽いノリの人間はそもそも自分のバンドメンバーとして認めたくないというか。もしも4人の中にそういう人間が1人でもいたら、すぐに「えっ? お前辞める?」みたいな話になっちゃうと思う(笑)。
──だからか、本当に4人して荒れ狂ったロックンロールアルバムを作っちゃいましたよね(笑)。
ですね(笑)。
──アッパーな曲はパンクやラウドロックの影響下にある、エモーショナルで、まさにバイオレントな趣きもある毒っ気の強いサウンドになっていて、その一方で「a will」や「永遠夜 ~エンヤ~」のようなスケール感があってドラマチックな正統派ロックバラードもある。しかもどっちもきちんと2013年の最新モードにアップデートしてあるし、アレンジやアンサンブルもすごく凝っているし。
どの曲もベースになるメロディは私が作ってるんですけど、そこに関してはけっこうスムーズにできていて。FLiPや自分自身の本質をディープに掘り下げようっていうやりたいことが見えていたので。ただアレンジやアンサンブルについては、(いしわたり)淳治さんと一緒にやってきたことをベースにしながら1曲1曲本当に突き詰めたし、大変ではありましたね。セルフプロデュースだからこそ自分たちがすべてのフレーズに対して責任を負わなきゃいけないし、負いたい。カッコいいフレーズをもっともっと詰め込んで、4人がもっと絡み合うアンサンブルにしなきゃいけないし、そうしたかったので。
──ということは「大変」とはいってもアイデアがまったく出なかったりしたというよりも……。
ブラッシュアップするのに時間をかけた感じですね。アレンジもさっきのFLiP像の話と同じ。曲ができたら弾き語りでメンバーに聴かせて、その上で曲の持っているテンポ感やリズム感、それと「こういう感じの曲にしたいから」っていう作曲しているときに私の中に浮かんだイメージを口頭で伝えて。その曲の向かいたい先を共有してから作り始めるんですけど、自分たちの頭の中で鳴っているカッコいい音っていう理想に現実がついてこないことがけっこうあったんですよ。「こんなんじゃないんだよなあ」みたいな、そういう行き詰まりがあったので。
現実と理想にギャップがあっても苦ではない
──具体的にはどの曲をブラッシュアップしました?
「darkish teddy bear」とか「Dear Miss Mirror」とか、あとは「Raspberry Rhapsody」とかは比較的スムーズに頭の中の音をすぐに鳴らすことができたんですけど「ニル・アドミラリ」なんかはかなりブラッシュアップしました。アルバムに入っているバージョンのアレンジ、本チャンのRECをしたときのアレンジと、その前のプリプロの時点のアレンジとではバッキングのニュアンスもリズムのニュアンスも変えまくってますし、すごく制作に時間をかけましたね。あと「a will」も作り始めたときのベースラインって8ビートを刻むすごくシンプルなものだったんですけど、もっと情感あふれるバラードにしたいっていうことで全編差し替えてます。
──で「ニル・アドミラリ」は基本的にエモいんだけど、どこかシャレててグルーヴィな、いい意味で不思議なアレンジになって、「a will」はちゃんとドラマチックなナンバーに仕上がった、と。
どの曲もそうなんですけど、自分の頭の中で鳴っているカッコいい音を実際に鳴らすことができた自信はあります。「イマイチだなあって思いながら曲を作ってても時間がもったいないし、そもそもそれって全然クリエイティブじゃないよね」「それなら曲を書き直してでも、もっとカッコいいものを目指そう」っていう意識もメンバー全員で共有できていたので。だから現実と理想にギャップがあってアレンジに時間がかかっても全然苦じゃなかったんですよ。
──あとアルバム全体の音作りも前作、前々作とはちょっと違う。これまではどちらかというとハイファイというかクリアに音を録っている印象があったんですけど、今作はもっとダイナミックというかアナログフィールな音作りになっています。
確かにこれまでとは違うし、レコーディングの経験を積んだおかげでエンジニアさんとちゃんとディスカッションすることもツッコむこともできるようになってきてはいるんですけど、実は「こういう音にしたい」っていうことをそこまで意識したつもりもなくて。ちょっと泥臭い音やローファイな音のほうが心地よく感じられる上に「マイナーコードってチョー気持ちいいよね」みたいな4人組なので(笑)、たぶんそういう意識がすごくナチュラルに音に出たんじゃないかなと思います。
- ニューアルバム「LOVE TOXiCiTY」 / 2013年6月26日発売 / DefSTAR Records
- ニューアルバム「LOVE TOXiCiTY」
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3200円 / DFCL-2014~5
- 通常盤 [CD] / 2800円 / DFCL-2016
収録曲
- Tarantula
- カミングアウト
- ニル・アドミラリ
- Raspberry Rhapsody
- darkish teddy bear
- a will
- 永遠夜~エンヤ~
- Dear Miss Mirror
- 二十億光年の漂流
- Log In “Rabbit Hole”
- Bat Boy! Bat Girl!
初回限定盤 DVD収録内容
- FLiP Documentary 2012-2013
FLiP 3rd Album Release Tour「LOVE THE TOXiC CiTY」
2013年7月7日(日)
大阪府 梅田CLUB QUATTRO
2013年7月19日(金)
東京都 LIQUIDROOM ebisu
2013年7月27日(土)
愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
2013年9月7日(土)
石川県 金沢vanvanV4
2013年9月13日(金)
香川県 高松DIME
2013年9月14日(土)
福岡県 福岡BEAT STATION
2013年9月16日(月・祝)
岡山県 岡山CRAZY MAMA 2nd Room
2013年9月23日(月・祝)
宮城県 仙台enn 2nd
2013年9月29日(日)
北海道 札幌COLONY
FLiP(ふりっぷ)
2005年に沖縄県那覇市で、Sachiko(Vo, G)、Yuko(G, Cho)、Sayaka(B, Cho)、Yuumi(Dr, Cho)の4人が結成したロックバンド。地元のライブハウスで精力的なライブを展開し、2008年6月に1stミニアルバム「母から生まれた捻くれの唄」をリリース。同年8月には「SUMMER SONIC 08」への出演を果たす。2009年3月にはアメリカ・テキサスで開催された「SXSW 2009」に出演。海外でも注目を浴びた。2010年2月、いしわたり淳治プロデュースのミニアルバム「DEAR GIRLS」でメジャーデビュー。2011年5月には1stフルアルバム「未知evelution」をリリースし、ガールズバンドの枠を超えたエネルギッシュなサウンドで高い評価を受けた。2012年2月にテレビアニメ「銀魂」のオープニングテーマとなったシングル「ワンダーランド」を、5月に2ndフルアルバム「XX emotion」を発表。2013年6月、初の全曲セルフプロデュースとなる3rdアルバム「LOVE TOXiCiTY」をリリースした。