ナタリー PowerPush - FLiP
直球勝負の「女の子らしさ」満開!新境地の2ndアルバム
今まで見せていない顔をどんどん出したい
──皆さんそれぞれに訊きたいんですが、アルバムの曲の中で思い入れがあるものはどれでしょうか。
サチコ 私は「everything is alright」という曲です。これはオケと歌詞の制作が同時進行で進んで、次から次へと展開ができた曲なんですよ。コードのニュアンスも、メロディも、鮮明に頭の中に浮かんできた。こういう曲は固定概念があったら作れなかったと思うんです。
──この曲は、歌詞とメロディのあり方が、わりとシティポップっぽいと思うんですよ。
サチコ シティポップって?
──例えば、ユーミンの「中央フリーウェイ」という曲と同じで、高速を車で走りながら見えてくる情景が描かれている。それを通して、心情を想像させるという。
サチコ なるほど! 自分で意識したわけじゃないですけど、言われてみたらそのニュアンスはありますね。この曲は、大きい野外フェスとか、気持ちのいい環境でやったらきれいに鳴り響くんじゃないかなって思います。
──ユウミさんは?
ユウミ 「Shut Up, Men!」ですね。普段、跳ねるビートのものをよく聴いてるから、こういうビート感が好きなんです。サチコが歌いながら弾くのにあわせて、セッションみたいにフレーズを乗せたりして、自分の好きな展開がスラスラと作れました。思うままに直感的にできたから、勢いがすごくあると思います。
──サヤカさんは?
サヤカ 自分が歌詞を書いた「今夜月で会いましょう」という曲です。これは「Shut Up, Men!」とは逆に、アレンジにすごく時間がかかった曲で。コード感を何パターンも工夫したり、いったん寝かせてやり直したりしたんです。なので、作り方が逆なんですけど、演奏の絡み方も凝ってるし、歌詞も思い入れがありますね。
──この曲は狼が主人公ですよね。どういうところからモチーフが生まれたんでしょう?
サヤカ 最初はモンスターだったんですよ。でも、ちょっとモンスターだと行き過ぎだった(笑)。あんまり日常的に見ない生き物で、片思いの切ない恋愛をしている女の人のイメージを重ねられるものを考えました。思いを伝えに行きたいけど、なかなか行けない、みたいな。
──ユウコさんは?
ユウコ 私は「エミモア」。この曲は、今までシングルとかカップリングとかに収録されてない中で、最初にできた曲なんですよ。R&Bっぽいリズムで、ライブでは一番難しい曲だなと思いますけど、サビの解放感がすごく好きなんです。
どんなことをやってもFLiPはFLiP
──ちなみに、今回のアルバムタイトルの「XX emotion」とはどういう意味ですか?
ユウミ アルバムを全部通して聴いた印象として、女性であることを肯定してる感じがあると思うんです。女性の良さとか、女性にしかわからない感情とか、そういう表現をしているし、演奏も女性にしか出せないしなやかさがあるって思って。それで女性を示す「XX染色体」という言葉を使ったタイトルにしよう、と。「EMOTION」は、初心に戻って、エモーショナルに行こうというのを去年からバンドでずっと共有してたんで、そこからですね。
──エモーショナルなロックバンドであるというのは、FLiPにとっての芯の部分ですよね。昨年にバンド内で話し合ってそれを再確認したというのはどういう理由だったんでしょう?
サチコ 自分たちが思い描いてるようなライブを実際にやれているのかという自問自答からですね。自分たちのステージを思い浮かべたら、それは淡々と演奏しているというより、内から湧き出てくるものが音に乗ってあふれだしているというものが見えるんです。でも、果たしてそれを今やれているのか、という。そこから、音楽性も、バンドのあり方も、見つめ直していった。そうしてこのアルバムにつながっているんです。
──これだけ芯の強さとポップな抜けのよさを持ったアルバムを作れたことは、きっと次につながっていくと思います。この先、FLiPというバンドは今度どう進化していくイメージがありますか?
サチコ どんなことをやってもFLiPはFLiPだろうと思います。どういう曲を作っても、それはあくまでバンドの軸があってこそ吸収した色だと思うんで。なので、今作っている曲がどういうものかは明確には言えないけれど、自分たち自身がワクワクするようなサウンドをもっとやりたいと思ってます。今まで見せていない顔をどんどん出したい。これまでの延長線の上にあることばかりじゃなくて、直感でカッコいい!って感じたものをどんどん吸収していきたい。ライブにしても、私はステージは生半可な気持ちで立てる場所じゃないとは思ってるんです。でも、そういう気持ちを持った上で、思う存分楽しみたい。そういう気持ちを音にしていきたいですね。
CD収録曲
- CHERRY BOMB
- ワルサー
- エミモア
- ワンダーランド
- Everything is alright
- YUKEMURI DJ
- 最後の晩餐
- Shut Up, Men!
- ホシイモノハ
- でも maybe
- 今夜月で会いましょう
- ふつつか少女
- GHOST BUSTER
初回限定盤DVD収録内容
- ライラ Music Video
- カザーナ Music Video
- カートニアゴ Music Video
- ナガイキス Music Video
- ホシイモノハ Music Video
- ワンダーランド Music Video
- CHERRY BOMB Music Video
FLiP(ふりっぷ)
2005年に沖縄県那覇市で、サチコ(Vo, G)、ユウコ(G, Cho)、サヤカ(B, Cho)、ユウミ(Dr, Cho)の4人が結成したロックバンド。地元のライブハウスで精力的なライブを展開し、2008年6月に1stミニアルバム「母から生まれた捻くれの唄」をリリース。同年8月には「SUMMER SONIC 08」への出演を果たす。2009年3月にはアメリカ・テキサスで開催された「SXSW 2009」に出演。海外でも注目を浴びた。2010年2月、ミニアルバム「DEAR GIRLS」でメジャーデビュー。2011年5月には1stフルアルバム「未知evelution」をリリースし、ガールズバンドの枠を超えたエネルギッシュなサウンドで高い評価を受けた。2012年2月にテレビアニメ「銀魂」のオープニングテーマとなったシングル「ワンダーランド」を発売した。5月16日にはメジャー2ndアルバム「XX emotion」をリリース。