ビデオクリップでは新しい一面を出せた

──ビデオクリップのイメージもこれまでとは全然違って、非常にユニークでポップな雰囲気ですよね。

ユウミ　今までは演奏メインでライブを意識してる感じでしたけど。でも、曲が持ってるイメージのおかげで、ああいう新しい一面も出せた。いい機会だったと思います。

サチコ　今回撮影してもらった監督さんは、私たちがメジャーデビューした1曲目からずっと撮り続けていただいてる方なんです。今までのFLiPの音楽性を知ってるからこそ、今回の曲は遊び心を入れられると言われたんですよ。今までは笑顔なんか入れたら合わない楽曲ばっかりなんですけど。今回は「笑って！」って言われながら撮られて。「ここはワンダーランドだから！」って。

──仕上がりを観た印象はどうでした？

サチコ　みんなトキメキました。

ユウコ　単純にポップなものだけじゃなくて、コラージュを使ったり、ちょっと不気味な感じもあって。でも、色合いはポップで。そういういろいろなものが融合した感じは、バンドの色とあってるなって思いました。

サチコ　ちょっと土臭い部分も残してくれてるなって思いましたね。

──土臭い部分っていうのは、自分たちが持っている根っこのものだったりします？

全員　（頷く）

サチコ　そこは居心地のいいところですね。やっぱりしっくりくるんだなって。

次のアルバムは、みんながジャンプできるような曲が増えるかも

──東京で暮らすようになって1年くらい経ってるわけですよね。一番変わったと思うのは？

サチコ　やりたいことが増えましたね。いろんなことに今まで以上に興味を持つようになって、いい意味で欲が増えました。例えば、1人の時間があったらちょっとでも本を読もうとか。DVDを観まくったりとか。東京って、街を歩いていても、広告のキャッチコピーやデザインが週替わりでどんどん変わっていくんですよね。毎日景色が違うし、そういうのを見ているだけでも、自分自身の中身が日々新しくなっていく。日常が充実してないと、やっぱり自分たちの音楽が枯れてくんですよね。音楽をより濃いものにしたい、新しいものを作っていきたいと思うからこそ、もっと刺激を求めている感じです。

──今、まさに曲を作っているんですよね？ 次のアルバムのビジョンはどんなものをイメージしていますか？

サチコ　よりエモーショナルに、よりガーリーさを出して。それから、自分たちの楽曲の中での展開やフレージングに、今まで以上に遊び心を出したアルバムになると思います。

──もうかなり曲はできている？

サチコ　はい。今まではモッシュが起きるような激しいサウンド感とか、ヘドバンしたくなる曲が多かったんですけど、次のアルバムはみんなでジャンプできるような曲が増えるかもしれないです。今までと違うアプローチをできる曲も増えているので。全部完成しないと全貌は見えてこないんですけど、このアルバムが出たらFLiPのライブの光景がまた変わるんだろうなっていう曲が増えてますね。

淳治さんは、部活の先輩って感じ

──ちなみに、新作もいしわたり淳治さんのプロデュースなんですよね。一緒にレコーディングしていて、どんな感じですか？

ユウミ　常に客観視してくれる感じなんですよ。レコーディングのときも、ウチらが演奏してるのをリアルタイムで全部聴いてて、アイデアをくれる。それをもとにやるとうまくいったりするんで。淳治さんがいるとキュッとまとまります。

──僕はこれまで何組か、チャットモンチーや9mm Parabellum Balletのような「いしわたり淳治プロデュース」のバンドにインタビューしたことがあるんですけれど、みんな、いわゆるプロデューサーっぽくないと言っていたんですね。で、多くのバンドがその後セルフプロデュースをするようになる。これは、ひょっとしたら、デビューしたバンドにメンバー的な立場で加わって、しばらくしたら離れるっていう感じなのではないか、と。

ユウミ　なるほど。

サチコ　確かに、プロデューサーというよりメンバー的な存在なんですよね。

ユウミ　淳治さんって、バンドに足りないものというか、こういうのがあったほうがいいって参考意見を教えてくれたりするんですよ。その見つけ方をバンドに教えるから、バンドも次のステップに行くことができるという。ウチらも最近、セルフプロデュース曲が増えてきたんです。4人でどこまで行けるかって軸を固めてアレンジしてみたりして。前にはできなかったことも、成長してできるようになってきてるんで。

──それこそ軽音部の例えで言うなら、部活の先輩としていしわたり淳治さんがいるみたいな？

全員　ああー!!（笑）

サヤカ　確かに。先輩って感じです。顧問じゃない。

サチコ　ほんと、そういう存在ですね。めちゃくちゃいいセンスを持ってる先輩なんですよ（笑）。