音楽ナタリー Power Push - NW-WM1Z / NW-WM1A & MDR-Z1R特集

vol. 3 小西康陽

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vol. 1 大友良英
vol. 2 さかいゆう

質問コーナー

──では質問コーナーに移りたいと思います。まず「いい音の概念は個人によって違うと思うんですが、製品を作るときに何かガイドラインがあるのですか?」という質問です。

小西 それ僕も聞きたかった。

潮見 まず、ヘッドフォンの音質評価委員が社内にいて、そこでちゃんと聴感の評価が行われています。いい音って数値だけじゃ測れない部分があるので、実際に音楽を聴いて判断することも大事にしています。そういう意味ではエンジニアであると同時に、常に“何がいい音か”を追求し続けるアーティスティックな側面もあるのかもしれないですね。

寺井 Walkmanでも音質を評価する人が何人もいて、独自の基準というのは設けられています。今回のモデルはその基準をクリアしていて当たり前で、その上で我々設計者も表現者の1人だという意識を持って「どういう音を出したいか」「どういう音で聴いてもらいたいか」ということを考えながら作りましたね。

──小西さんはちなみにどんな音がいい音だと思いますか?

左から潮見俊輔氏、寺井孝夫氏、小西康陽。

小西 うーん……難しいですよね。答えになってないかもしれないけど、僕は「きみになりたい」や「眠そうな二人」は”自分の作品”だと思っていて、その一方で、仕事として受けているアレンジなんかもたくさんあって。そういうのは作品っていうよりは「求められることをやろう」っていう気持ちで作ってるんですね。もちろん、それぞれベストは尽くしてますけど、考え方は違いますよね。アイドルの曲なんかはラジオで流れたときにバーンとインパクトがあるように作るし、「きみになりたい」や「眠そうな二人」は家でじっくり音楽と向き合ってもらえたらうれしいと思って作るし。だから何に重きを置くかによっていい音の基準も変わってくるとは思いますね。

──では続いての質問です。「これ以上の音質を追求していく上で、何がポイントになりますか? またどういう可能性が考えられるのでしょうか?」。

潮見 音楽も楽器の進化とかがあって、新しく再現できる音が増えたりするじゃないですか。そうすると表現の幅が広がって、より自分の思い描いている音を実現できる。それと似ているところがあって、我々もフラッグシップモデルを10年から15年のスパンでたまたま発表しているんですけど、その間にテクノロジーの進化があるんですよ。それによって表現できることの幅が広がって、今回の商品のように1つのモデルとして結実する。今は当然最高だと思ってるんですけど、時代が変わってテクノロジーが進化していくとまた変わってくるのかなとは思いますね。

寺井 今できることの中で一番いい音を目指すっていうことの連続なんですよね。作ってみて初めて気付いて次が見えてくることもありますし。

──最後に小西さんへ、「レコード以外のメディア(CDやファイル、ストリーミングなど)だとどの音質が好みですか?」という質問が寄せられています。

小西 難しいなあ。アナログのレコードが好きだということが大前提としてあるんですけど、CDはCDでこういうものだと思って聴くし、カセットテープとかもそれなりに温かみのある音だと思うし。もちろん、今回ハイレゾで聴いた曲もよかったし。それぞれのよさがありますよね。

──同じ質問者の方から「あとこれは質問じゃないですが、『これからの人生』みたいな全国で聴けるラジオ番組また放送して欲しいです」とのことです。

小西 ぜひ、ソニーの提供でお願いします(笑)。

ジャズバーを1軒作ったと思えば安い

──では最後に、イベントをやってみていかがでした?

潮見 小西さんにお会いできるということで緊張していたんですけど、同じように音楽を愛する感覚を共有させていただいて、本当にいい時間を過ごすことができました。

寺井 僕たちは作る側と使う側の気持ちを行ったり来たりしながら設計をしてるんですね。おそらく小西さんも同じように作り手と聞き手を行き来しながら音楽を作っているんだと思うんですが。そういう共感できるお話ができたのがすごくうれしかったですし、これからも魂を込めていいものを作っていきたいと思いました。

──小西さんはいかがでした?

小西 2人共、音楽のことをとても深く理解してらっしゃいますよね。僕は今まで、ソニーって言えばブランドだし、工業製品だと思ってた。こういう製品って機械が全部作っている画一的なものだろうと思ってたんですけど、ちゃんと人の気持ちが入ってるものなんだと思って感激しました。なにより、音が本当にいいからね。さっき「自分の部屋がジャズバーみたいだ」って言ったけど、話聞いてたらこれだけこだわって作ってるんだから納得ですよね。

寺井 オーディオ部屋を作るとなるとかなり大掛かりなものになりますけど、この組み合わせを使っていただければ部屋よりは手軽に、とても高いクオリティを提供できるという自負はありますね。

小西 だからさ、ジャズバーを1軒作ったと思えば安いかも(笑)。

左から寺井孝夫氏、小西康陽、潮見俊輔氏。

Walkman

NW-WM1Z
NW-WM1Z

価格:オープン価格(※ソニーストア参考価格 32万3870円[税込])

容量:256GB

再生フォーマット:MP3 / WMA / ATRAC / ATRAC Advanced Lossless / WAV / AAC / HE-AAC / FLAC / Apple Lossless / AIFF / DSF / DSDIFF
※著作権保護された音楽ファイル(ダウンロード購入した楽曲など)は再生できません

ディスプレイ:4.0型、FWVGA(854×480ドット)

本体動作対応OS:Windows(R) Vista(Service Pack 2以降) / Windows(R) 7(Service Pack 1以降) / Windows(R) 8.1 / Windows(R) 10 / Mac OS X v10.8~v10.11

外形寸法:72.9(W)×124.2(H)×19.9(D)mm

重量:455g

NW-WM1A
NW-WM1A

価格:オープン価格(※ソニーストア参考価格 12万9470円[税込])

容量:128GB

再生フォーマット:MP3 / WMA / ATRAC / ATRAC Advanced Lossless / WAV / AAC / HE-AAC / FLAC / Apple Lossless / AIFF / DSF / DSDIFF
※著作権保護された音楽ファイル(ダウンロード購入した楽曲など)は再生できません

ディスプレイ:4.0型、FWVGA(854×480ドット)

本体動作対応OS:Windows(R) Vista(Service Pack 2以降) / Windows(R) 7(Service Pack 1以降) / Windows(R) 8.1 / Windows(R) 10 / Mac OS X v10.8~v10.11

外形寸法:72.9(W)×124.2(H)×19.9(D)mm

重量:267g

ヘッドフォン

MDR-Z1R
MDR-Z1R

価格:オープン価格(※ソニーストア参考価格 21万5870円[税込])

形式:密閉ダイナミック

ドライバーユニット:70mm、ドーム型(CCAWボイスコイル)

感度:100dB / mW

再生周波数帯域:4Hz~120kHz

インピーダンス:64Ω(1kHzにて)

質量:385g(ケーブル除く)

接続ケーブル:ヘッドフォンケーブル(約3m) / バランス接続ヘッドフォンケーブル(約1.2m)

小西康陽(コニシヤスハル)
小西康陽

1959年、北海道札幌生まれ。1985年にピチカート・ファイヴでデビュー。豊富な知識と独特の美学から作り出される作品群は世界各国で高い評価を集め、1990年代のムーブメント“渋谷系”を代表する1人となった。2001年3月31日のピチカート・ファイヴ解散後は、作詞・作曲家、アレンジャー、プロデューサー、DJとして多方面で活躍。2009年にはアメリカ・ニューヨークのオフ・ブロードウェイで上演されたミュージカル「TALK LIKE SINGING」の作曲および音楽監督を務めた。2011年5月に「PIZZICATO ONE」名義による初のソロプロジェクトとして、アルバム「11のとても悲しい歌」を発表。2015年6月には2ndアルバム「わたくしの二十世紀」をリリースした。2016年8月にはピチカート・ファイヴの初期作品「カップルズ」と「ベリッシマ」のリマスター盤を、CD、アナログ、配信の3パターンで復刻リリース。また9月には、音楽を担当したHuluオリジナルドラマ「でぶせん」のサウンドトラックが発売された。