音楽ナタリー Power Push - NW-WM1Z / NW-WM1A & MDR-Z1R特集
vol. 2 さかいゆう
さかいゆうは東京・ソニーストア銀座で行われた体験会に登場。自身の楽曲である「ジャスミン」を始め、マイケル・ジャクソン「Rock With You」、マイルス・デイヴィス「So What」などをNW-WM1ZとMDR-Z1Rで試聴したさかいは、今まで知ってた曲でも発見があったと驚く。ここでは、「リラックスした状態でも全部聞こえる」と語るさかいと、Walkman開発者の石崎信之氏、ヘッドフォン開発者の潮見俊輔氏によるトークイベントの模様を紹介する。
こういうのを待ってた
──さかいさん、本機を試していただいての感想を教えてください。
さかいゆう 僕もわりといいヘッドフォンを持っているんですけど、それでも聞こえないところがこのヘッドフォンだと聴こえましたね。僕の持ってるのはオープンエア型で、前に装着して電車に乗ろうとしたら、エラい音漏れしてたことがあって慌てて止めたんですけど(笑)。このMDR-Z1Rは密閉型で外でもちゃんと聴けるので、こういうのを待ってたって感じですね。
潮見俊輔 ありがとうございます。今回のヘッドフォンでは空気感というものを追求しています。その空気感とは何かと言うと、ライブ会場や聴いた場所でしか感じられない体感ってあると思うんですけど、そういうものを再現したいという思いで作りました。
──Walkmanの感想はいかがですか?
さかい すっごい重くて、まずそれにびっくりしました(笑)。これだけで10分くらい話せそうですよね。「これ重いんだよ、でもだから音がいいんだよ」って。
石崎信之 NW-WM1Zの筐体には銅を使っているので。ほかのWalkmanはアルミを使ってるんですけど、それよりも約3.1倍重い材料になるので持った瞬間にずっしりくると思います。今回の製品は「すべてを音のために」ということで開発してまして、S-Master HXというフルデジタルアンプも新規に設計しました。これによってノイズを最低限に抑えてS/Nが向上し、聞こえなかった音まで聞こえるようになっています。またバランス出力によって音の分離が非常によくなり、細かい音まで感じ取れるようになりましたね。
さかい 確かに僕の「ジャスミン」っていう曲はピアノイントロなんですけど、実はドラマーが左足でハイハットを踏んでいて、それがすごく聞こえましたね。耳をすませばそんなにクオリティの高くないヘッドフォンでも聞こえるんですけど、リラックスした状態でも全部聞こえるっていうのはすごいなと思いました。
潮見 ライブ会場だとドラマーがシンバルを鳴らした音もちゃんとわかると思うんですけど、そういうものが普通のヘッドフォンだとなかなか表現できないんですね。実際会場にいる人はそのシンバルの小さい音も含めて聴いているわけで、今回のヘッドフォンはそういう小さい音もちゃんと聴き取れるように作ってあります。そのための技術の1つとして、新しく開発したレゾナンスフリーハウジングというものがありまして。
さかい どういう意味ですか?
潮見 ハウジングっていうのはヘッドフォンの外を覆ってる筐体のことなんですけど、日本語にすると“共鳴をなくすハウジング”という意味になります。密閉型のヘッドフォンだと、貝殻を耳に当てたときみたいに「コー」っていう音が聞こえると思うんですね。そういうこもり音が発生してしまうと、微小な音をヘッドフォンで再生していても正しい音が聴けなくなるんです。一方で開放型だと今度は外の音が入ってきて邪魔をしてしまう。密閉型で外の音を遮りながら、さらに密閉型で発生してしまうノイズもなくしたのがレゾナンスフリーハウジングです。グレーのほうがこれまでのハウジングで、黒いメッシュのほうが今回開発したハウジングになります。実際に耳に当てていただくと違いが感じられると思うので。
さかい (耳に当てて)確かに違いますね。
潮見 レゾナンスフリーハウジングは面全体から微小な音を抜いて共鳴音を排除しています。それを可能にしたのが、この高通気抵抗の音響レジスターです。カナダ産の針葉樹を原料とするパルプを、東北地方の雪解けの地下水で漉いています。地下水は年間を通して温度が均一なので、そうやって通気を管理しています。
さかい こだわってますねー。
潮見 形も変わっていて、フラットな形のヘッドフォンが多いと思うんですけど、山のような形にしてあります。しかもちょっと中心をずらしているんですよね。
さかい 確かに! UFOみたいな形ですね。
潮見 もしくは高知だとぼうしパンですかね。
さかい よくご存知で。
潮見 自分の出身が愛媛なので(笑)。太鼓のように平らの膜だと共振が起きやすいんですけど、そうやって中心をちょっとずらしてやることで共鳴を抑える効果があります。
作り手のメッセージがダイレクトに伝わる
──Walkmanのほうのこだわりも教えていただけますでしょうか。
石崎 この基板の青い部品なんですけど、こちらは開発に3年間を費やした高分子コンデンサーになります。かなり試行錯誤して作ったんですけど、このコンデンサーによってボーカルの透明感やアコースティック楽器の響きが表現できるようになりました。
さかい 1つひとつ本当にこだわってますよね。その結果、けっこうファンキーな値段になってますが(笑)。
潮見 なってしまいましたね(笑)。
さかい でもこのWalkmanとヘッドフォンで聴くことで発見があるってことは、お金を払う価値があるってことですよね。「どっちでもいいや」っていう人にとっては意味のないことだと思うけど、「りんごかみかんか」くらい違って聞こえる人にとっては、やっぱどっちか選びたいですよね。作り手のメッセージがダイレクトに伝わるわけですし、僕も仕事で使うと思えば安いもんですよ、楽器を買うようなもんですから。
潮見 30万円のギターとかありますからね。
──今、発見という話がありましたが、さかいさんは事前に試聴した曲でどんな発見がありました?
さかい マイケル・ジャクソンの「Rock With You」は息遣いがすごい聞こえて、「こんなところでブレスしてたんだ」って気付きましたね。あとダニー・ハサウェイの「Live」に入ってる「What's Going On」は、ニューヨークのThe Bitter Endっていう有名なライブハウスでやったときのライブ音源なんですけど、いろんな人の会話が聞こえました。歌が始まる前のお客さんの声は聞こえたんですけど、歌ってる最中にも実はこんなにしゃべってたんだっていうのが発見でした。会話と演奏だと周波数帯域が違うんですけど、全部の周波数がきれいに出てるなって思いましたね。
潮見 特定の部分が強調されちゃうとほかのところが聞こえにくくなってしまうので、そういうのがないように意識はしました。実際のライブの会場っていろいろなところで会話が繰り広げられているので、当然分離がいいんですよ。それをヘッドフォンで耳の横だけで再現するのは大変でしたね。
さかい それは本当にすごいと思います。
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Walkman
NW-WM1Z
価格:オープン価格(※ソニーストア参考価格 32万3870円[税込])
容量:256GB
再生フォーマット:MP3 / WMA / ATRAC / ATRAC Advanced Lossless / WAV / AAC / HE-AAC / FLAC / Apple Lossless / AIFF / DSF / DSDIFF
※著作権保護された音楽ファイル(ダウンロード購入した楽曲など)は再生できません
ディスプレイ:4.0型、FWVGA(854×480ドット)
本体動作対応OS:Windows(R) Vista(Service Pack 2以降) / Windows(R) 7(Service Pack 1以降) / Windows(R) 8.1 / Windows(R) 10 / Mac OS X v10.8~v10.11
外形寸法:72.9(W)×124.2(H)×19.9(D)mm
重量:455g
NW-WM1A
価格:オープン価格(※ソニーストア参考価格 12万9470円[税込])
容量:128GB
再生フォーマット:MP3 / WMA / ATRAC / ATRAC Advanced Lossless / WAV / AAC / HE-AAC / FLAC / Apple Lossless / AIFF / DSF / DSDIFF
※著作権保護された音楽ファイル(ダウンロード購入した楽曲など)は再生できません
ディスプレイ:4.0型、FWVGA(854×480ドット)
本体動作対応OS:Windows(R) Vista(Service Pack 2以降) / Windows(R) 7(Service Pack 1以降) / Windows(R) 8.1 / Windows(R) 10 / Mac OS X v10.8~v10.11
外形寸法:72.9(W)×124.2(H)×19.9(D)mm
重量:267g
ヘッドフォン
MDR-Z1R
価格:オープン価格(※ソニーストア参考価格 21万5870円[税込])
形式:密閉ダイナミック
ドライバーユニット:70mm、ドーム型(CCAWボイスコイル)
感度:100dB / mW
再生周波数帯域:4Hz~120kHz
インピーダンス:64Ω(1kHzにて)
質量:385g(ケーブル除く)
接続ケーブル:ヘッドフォンケーブル(約3m) / バランス接続ヘッドフォンケーブル(約1.2m)
- さかいゆう ニューシングル「再燃SHOW」 / 2016年11月16日発売 / アリオラジャパン
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 2000円 / AUCL-214~5
- 通常盤 [CD] / 1300円 / AUCL-216
さかいゆう
高知県出身の男性シンガーソングライター。20歳で上京し、独学で音楽を始める。2001年に単身渡米しロサンゼルスでストリートパフォーマンスを行いながらピアノを習得。帰国後の2004年頃よりソロ活動を本格化させ、2009年10月にシングル「ストーリー」でメジャーデビュー。胸を打つ歌詞、透明感ある歌声が広く支持されている。また客演も多く、これまでにマボロシ、KREVA、RHYMESTERなどさまざまなアーティストとコラボレーションを行っている。2015年1月にはそんなコラボ楽曲をまとめたアルバム「さかいゆうといっしょ」を発表。2016年2月に4thアルバム「4YU」を発売した。11月16日には映画「幸福のアリバイ~Picture~」の主題歌「再燃SHOW」をシングルリリースし、11月21日より全国ツアー「POP TO THE WORLD」を開催する。
2016年11月11日更新