音楽ナタリー Power Push - NW-WM1Z / NW-WM1A & MDR-Z1R特集

vol. 1 大友良英

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vol. 2 さかいゆう
vol. 3 小西康陽

質問コーナー

──それでは質問コーナーに移りたいと思います。まず、佐藤さんへの質問で、「バランス接続を1つのジャックにした理由を教えてください。ツインケーブルとの違いはあるんですか?」とのことです。

佐藤 確かに去年までΦ3.5mmの2極でやっていたんですが、日本オーディオ協会が新たに規定したΦ4.4mmのジャックを取り寄せて確認してみたところ、「ちょっとただものじゃないぞ」っていうくらいクオリティが高かったので、こちらに変更しました。モバイルなので当然ジャックは1つのほうがいいですし、ケーブルが引っ張られたときの耐性もいいので、それも加味しての変更になります。

──続いて、YouTubeやストリーミングサイトで音楽が聴けるようになってリスニングは便利にはなっていますが、音質はよくないイメージがあるみたいで、「便利かつ高音質な機器を開発する予定はありますか?」という質問です。

潮見 すでにハイレゾ音源のストリーミングは出てきていたと思います。当然通信インフラに影響されるところだと思うのですが、そういうことをやるという方向に世の中が向いてきてはいるのかなと思いますね。高音質をストリーミングで聴ければいいですからね。

──これは大友さんへの質問ですね。「時代ごとにリスニング環境は変化していると思うんですけど、音作りを変えることはあるのでしょうか?」。

大友 リスニング環境と一緒で、制作の現場も著しく変わりましたよね。僕はそれこそオープンリール式のテープレコーダーの時代に音楽を始めて、宅録時代には4トラックのカセットMTRも経験し、今はデジタルになって。ドーナツ盤に合わせて片面2、3分のヒット曲が作られたり、LPが出てきてアルバムって概念ができたりしたみたいに、音作りも環境で変わっていくんだと思いますよ。僕はそれでいいと思っていて。今、ストリーミングの話が出たけど、ストリーミング環境もきっとどんどんよくなるでしょ。そうなると、今は想像がつかない形の音楽が出てくるかもしれないし、むしろそういう変化を楽しんでます。

──ではこれはお三方にお聞きしたいと思います。「ずばり、いい音とはなんでしょうか?」。

左から大友良英、佐藤浩朗氏、潮見俊輔氏。

佐藤 いい音ってすごい難しいと思うんですけど、私としてはWalkmanっていうプレーヤーは味付けしちゃいけないと思っていて。音源を加工せずありのまま出力してヘッドフォンに鳴らしてもらうっていうことですかね。

潮見 アーティストの方が音楽を作るときの熱量ってあると思うんですよ。そういう情熱的な部分がヘッドフォンを通して聴いたときに伝えることができれば、それは本当にいい音だな思って開発を進めたのが今回の製品ですね。

大友 「いい音とは」ってむちゃくちゃ本質的な質問ですね。ちょうどある音楽雑誌でSGっていうギターの機種の特集をやっていて、実は僕も愛用していてインタビューに出てるんです。SGって1960年代に出たギターで、主流に比べるとB級なんですよ。音が落ちるとか言われてたんだけど、でも僕はそれが好きで。俗にいい音と言われてるもんと自分にとってのいい音は必ずしもイコールじゃないと思うんです。それは多分記憶に関係あるからじゃないかな。子供の頃に大好きで聴いてたロックがSGの音だったとか。これって味と似てると思うんです。どんなに高級なシェフが作ったカレーより、うちの母親が作ったカレーのほうがいいって思うのも記憶と関係してるんじゃないかな。さっきのモノラル盤の音に魅かれるのもそういうことかもしれないです。

これからもいい音を目指していってほしい

──さて、イベントをやってみていかがでした?

大友 本当に面白い話をたくさん聞かせてもらいました。そもそもスタジオのエンジニアとはいつも一緒だけど、さらにその先のハードウェアを作ってる方たちとはめったに会うことはないので、こうやってコミュニケーションできるのはすごいうれしいですね。

佐藤 こちらこそこういう経験を積むことで音をどんどん突き詰めることができると思うのでありがとうございます。

潮見 自分自身も音楽を作ってきたので、ミュージシャンの方に実際に直接話を聞けるのはすごくうれしいです。今後の糧になりますし、これからもミュージシャンが作った音楽の熱量を再現していきたいですね。

大友 今回の2製品、本当に掛け値なしに素晴らしい製品だと思いましたね。こういうヘッドフォンとかイヤフォンみたいに耳に突っ込むものが一般に普及したのって、Walkmanが出た、ちょうど僕が大学生のときなんです。さっきはその悪口も言ったけど、でも、それ以前は原音を目指す高級オーディオ志向みたいなもんが主流だったのが、Walkmanの普及とともに音楽を聴くということがとても身近で手軽なものになっていって、それは素敵なことだったと思うんです。実際僕自身も愛用しまくってましたから。でもその行き着くところが携帯で、正直大していい音ではない音楽を耳につっこんで聴くのが主流ってのは、さすがに引っかかります。ある時期以降メーカーがこぞって大量普及のほうに向かったわけですが、その先駆者でもあるWalkmanが、こうして今、技術の限りを尽くして最高の音をしっかりと目指すっていうのは素晴らしいことだと思います。もちろん普及品もなければダメで、その両輪がないとだとは思うんだけど。だからソニーさんにはぜひ、このハイエンドなモデルのほうもキープし続けてほしいですね。

左から佐藤浩朗氏、大友良英、潮見俊輔氏。

Walkman

NW-WM1Z
NW-WM1Z

価格:オープン価格(※ソニーストア参考価格 32万3870円[税込])

容量:256GB

再生フォーマット:MP3 / WMA / ATRAC / ATRAC Advanced Lossless / WAV / AAC / HE-AAC / FLAC / Apple Lossless / AIFF / DSF / DSDIFF
※著作権保護された音楽ファイル(ダウンロード購入した楽曲など)は再生できません

ディスプレイ:4.0型、FWVGA(854×480ドット)

本体動作対応OS:Windows(R) Vista(Service Pack 2以降) / Windows(R) 7(Service Pack 1以降) / Windows(R) 8.1 / Windows(R) 10 / Mac OS X v10.8~v10.11

外形寸法:72.9(W)×124.2(H)×19.9(D)mm

重量:455g

NW-WM1A
NW-WM1A

価格:オープン価格(※ソニーストア参考価格 12万9470円[税込])

容量:128GB

再生フォーマット:MP3 / WMA / ATRAC / ATRAC Advanced Lossless / WAV / AAC / HE-AAC / FLAC / Apple Lossless / AIFF / DSF / DSDIFF
※著作権保護された音楽ファイル(ダウンロード購入した楽曲など)は再生できません

ディスプレイ:4.0型、FWVGA(854×480ドット)

本体動作対応OS:Windows(R) Vista(Service Pack 2以降) / Windows(R) 7(Service Pack 1以降) / Windows(R) 8.1 / Windows(R) 10 / Mac OS X v10.8~v10.11

外形寸法:72.9(W)×124.2(H)×19.9(D)mm

重量:267g

ヘッドフォン

MDR-Z1R
MDR-Z1R

価格:オープン価格(※ソニーストア参考価格 21万5870円[税込])

形式:密閉ダイナミック

ドライバーユニット:70mm、ドーム型(CCAWボイスコイル)

感度:100dB / mW

再生周波数帯域:4Hz~120kHz

インピーダンス:64Ω(1kHzにて)

質量:385g(ケーブル除く)

接続ケーブル:ヘッドフォンケーブル(約3m) / バランス接続ヘッドフォンケーブル(約1.2m)

大友良英(オオトモヨシヒデ)
大友良英

1959年、神奈川県生まれ福島県育ちの音楽家。主な演奏楽器はギターとターンテーブル。1990年にGROUND-ZEROを結成後、国内外で作品のリリースやライブを行う。GROUND ZERO解散後はフリージャズやノイズミュージックのフィールドで活動を続ける傍ら、DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDENなどさまざまな音楽プロジェクトへ参加する。加えてカヒミ・カリィの2010年のアルバム「It's Here!」でプロデュースを担当するなど、膨大な数の音楽作品に携わる。

劇伴制作にも定評があり、「青い凧」(1993年)や「アイデン&ティティ」(2003年)、「色即ぜねれいしょん」(2009年)といった映画、「クライマーズ・ハイ」(2005年)や「その街のこども」(2010年)、「とんび」(2012年)といったドラマのヒット作で手腕を振るう。さらに現代美術やメディアアートの分野でも評価が高く、音響機器を利用した展示作品「without records」「ensembles」などの展示を国内外で開催している。2011年には東日本大震災を受けて、自身が10代を過ごした福島県で「プロジェクト FUKUSHIMA!」を展開。野外音楽イベント「フェスティバル FUKUSHIMA!」の開催をはじめとした一連の活動が評価され、2012年度の「芸術選奨文部科学大臣賞芸術振興部門」を受賞し話題を集めた。

2013年には、連続テレビ小説「あまちゃん」の音楽を担当。ドラマのヒットと共にその劇伴にも注目が集まり、サントラや劇中歌などが次々とCD化された。また「あまちゃん」のオープニングテーマと劇中歌である「潮騒のメモリー」の2曲で「第55回 輝く!日本レコード大賞」の作曲賞をSachiko Mとともに受賞。「第64回NHK紅白歌合戦」にも出演した。さらに劇伴を実際にライブで披露する「あまちゃんスペシャルビッグバンド」を結成し全国ツアーも行い、2014年3月にはこのツアーファイナルの模様を収めたDVD、Blu-ray、CDを発売。 2014年、アジア各地の音楽家の交流プロジェクト「ENSEMBLES ASIA」を国際交流基金と共に立ち上げる。また、2015年から始まった参加型音楽イベント「アンサンブルズ東京」を監修したり、2017年に開催される札幌国際芸術祭の芸術監督を務めるなど、その活動は多岐にわたる。


2016年11月11日更新