U-zhaan 青葉市子 みんなで一緒に作るフェス「FUJI & SUN '21」

フェスの怖さ、1日5ステ

──お二人はフェスにもよく出演されています。フェスにまつわる思い出も聞かせてもらえますか?

青葉 U-zhaanさんたちのステージに飛び入りさせてもらったことがありますね。

U-zhaan 「ボタとサーカス2019」の僕と環ROYと鎮座DOPENESSのステージで、市子ちゃんにピアニカを吹いてもらって。「ファ、ラファミ、ソ、ドレミファソ」ってずっと繰り返してもらったんですよ。普段は自分でループを組むんだけど、やっぱり人と演奏したほうが楽しいので。その年の「森、道、市場」のときは、逆に僕が市子ちゃんのステージに出たよね。

青葉 そうでした! できたてホヤホヤで自分でもうまく演奏できない曲に合わせていただいて。ムチャぶりしてすいませんでした。

U-zhaan 「まったく知らない曲だけど大丈夫?」って聞いたら、「私も知らないので大丈夫です」って。あの日は結局、全部で5ステージに出たんだよね。蓮沼執太、坂本美雨ちゃん、市子ちゃんと一緒に演奏して、ナタリーの大山(卓也)さんと対談して、最後あふりらんぽオニのステージにも呼んでもらって。ヘトヘトになって帰りました。あれがフェスの怖さだよね(笑)。

青葉 U-zhaanさん、みんなに求められますからね。

U-zhaan でも、気軽に声をかけてくれるのはとてもうれしいよ。そういえば全然関係ないけど、フジロックに行くときだったかな? 移動車の後部座席で市子ちゃんがモグモグしてるから、「何食べてるの?」って聞いたら、「モロヘイヤ」って言われてびっくりしたことがあったな。

青葉 そうでしたっけ(笑)。車の旅も楽しいですよね。

U-zhaan

音被りを乗り越えて

──青葉さんは2019年に開催された初回の「FUJI & SUN」にも出演されていますが、どんなフェスでした?

青葉 まずケータリングの食事がとてもおいしかったです。その土地の食材を使って、手の込んだ料理がいろいろと並んでいて。食と音楽はとても密接だし、おいしいものを食べて、元気になって演奏できた印象がありますね。あと、私が出演した日のトリがエルメート・パスコアールさんだったんですよ。楽屋で赤ワインを飲まれていて、楽しそうだなって。ライブでの存在感もすごくよく覚えていますね。

U-zhaan 一緒に飲んだ?

青葉 いえ(笑)。お客さんのエリアがのびのびしていたのもよかったです。ライブエリアがぎゅうぎゅうだったり、混んでいてなかなか進めないということがなくて、1人ひとりのスペースがちゃんと確保されていて。今年もその感じだといいんじゃないかなと思いますね。

──U-zhaanさんは去年出演予定でしたが、残念ながら中止となり、今年が初出演になります。ソロ演奏はかなりレアですよね。

U-zhaan そうなんですよ。ソロでのオファーをいただいて「ソロの演奏は普段やってないんですけど、大丈夫ですか?」と聞いたんですけど、ソロでお願いしますということだったので。

青葉 フェスではやったことのない「きこえないうた」(U-zhaan作曲、知久寿焼作詞の楽曲)はどうですか?

U-zhaan え、自分で歌うってこと? 弾き語りで?

青葉 タブラのリズムをループさせて、ホルンでメロディを吹いたらきれいかなって。

U-zhaan 考えておきます(笑)。

青葉 普段の練習でやっていることを、そのままコンサートでやったりしないんですか?

U-zhaan 普段のライブではないけど、「あいちトリエンナーレ2019」で40日間毎日8時間くらい練習しているところを見せ続けるインスタレーションをやったんだよね(参照:あいトリでU-zhaanの40日間タブラ修業スタート、曽我部恵一フリーライブも開催)。ただ、人が見てる環境だと練習に徹し切れなくて。

青葉 パフォーマンスのスイッチが入っちゃいますよね。

U-zhaan そう。毎日のように来てくれる人もいるし、「同じようなフィンガートレーニングだけだと悪いな」と思っちゃって。「FUJI & SUN」は出演順もオープニングだし、自由というかなんでもありかなと。まあ、僕ができることは限られているし、がんばってタブラを叩きますよ。

青葉 U-zhaanさんのそういうストイックなステージを観たい人はたくさんいると思います。「もっとタブラの音色を聴きたい」って。

U-zhaan そう思ってもらえたらいいんだけど。市子ちゃんも1人で出演?

青葉 はい。夕方5時半くらいなので、ちょうど日が沈み始める頃かな。

青葉市子

──青葉さんは1日目のGREENHILLステージのトリですね。フェスのセットリストはどんな基準で決めるんですか?

青葉 フェスに限らず、いつもあまり決めないんです。歌詞の束を持っていって、直前まで楽屋で広げて。その中から多めにセレクトして、ステージの上で「次はこれを歌おう」ということが多いですね。ワンマンライブでPAさんや照明の皆さんとチームでやるときはある程度決めますが、フェスはその場所に乗っかる感じなので。フェスで面白いなって思うのは“音被り”ですね。私は音量が小さいし音の隙間もあるので、ほかのステージの演奏が必ず聴こえてきちゃうんですよ。

──「青葉さんの歌を静かに聴きたいのに……」と残念に思ってしまうオーディエンスも多そうですよね。

青葉 でもフェスの環境ではしょうがないし、必ず起きることだと思っていて。そういうときは途中で曲をやめて、ほかのステージから聴こえてくる曲と同じキーの曲に変えたりするんです。そうすればお客さんの耳がグチャってなるのを防げるかなって。

U-zhaan それは大変なチャレンジだね。

青葉 せっかく聴いてくれているお客さんが「音被りがイヤだな」と思わないといいなって。なかなかうまくいかないですけど。

──飛び入りセッションやコラボレーションもありそうですか?

青葉 U-zhaanさんのあとはGOMAさんですね。どうですか?

U-zhaan GOMAちゃんはドラマーの椎野(恭一)さんと一緒だって言ってたから、タブラは要らないんじゃないかな。ハンバート ハンバートとは共演したことがあるんだけど、時間が離れているしなあ。

青葉 でも何が起きるかわかりませんよ。

U-zhaan トリの森山直太朗さんに呼ばれたり? ないない(笑)。

U-zhaanのタブラと青葉市子のギター。

一緒に作るような気持ちで

──「FUJI&SUN」には音楽以外の楽しみもたくさんあって。フェス飯は地元の食材を使ったメニューが豊富なんですよ。

青葉 「しらずピザ」「しらす丼」「朝霧高原シュークリーム」……おいしそうですね。

U-zhaan 「富士つけナポリタン」なんてあるんだ。でも、僕はどのフェスに行ってもカレー屋の人から「うちのカレーの味を見てってください」って言われて、結局カレーを食べることになるんですよ。

青葉 (笑)。富士鶏と自家製ペーストのマッサマンマレー、おいしそうですよ。

──さらに大自然のロケーションを生かしたアクティビティプログラムもあります。15日には夕焼けスポットを巡る「サンセットウォーク」、16日の早朝には「サンライズウォーク」も実施されます。

U-zhaan 「サンライズウォーク」いいな。早朝に3時間歩いたら、そのあとライブができないと思うけど(笑)。

──フェスが開催されること自体、音楽ファンにとっては大きな喜びだと思います。改めて「FUJI & SUN '21」に向けた思いを聞かせてもらえますか?

青葉 今年の3月に、1年2カ月ぶりにお客さんの前でライブをやったんですが、「これを繰り返して生きてきたんだな」と思ったんです。ミュージシャンにとっては食べるとか寝るのと同じくらい大事なものだなって。フェス自体も本当にひさびさだし、とても楽しみですね。

U-zhaan みんなで協力して、なんとか実現したいですね。

青葉 これから先、またライブがダメになっちゃわないように、会場に来る方にも「これからも続けるぞ」という意識を持ってもらえたらいいなと思います。ライブを観るだけではなくて、一緒に作るような気持ちというか。節度を守りつつ、のびのびと楽しんでもらえたらうれしいですね。

左からU-zhaan、青葉市子。