静岡ってこんなにいい場所だったんだ
──fishbowlの活動を通して、静岡に対するイメージが変わることはありましたか?
新間 より好きになりました。私はもともと静岡で仕事して暮らし続けたいと思ってたんですけど、fishbowlの活動で東京やほかの地方に遠征してみて、やっぱり今後別のところに住むことはないだろうなと思うぐらい居心地のよさを感じています。気温もちょうどいいし、ごはんもおいしいし、必要なものもそろうし、東京より空気が淀んでないし(笑)。静岡という帰ってくる場所があるからこそ遠征も楽しめるのかなって。
久松 遠征に行くことで静岡の魅力が改めてわかるし、活動を通して静岡の知らなかったところもいろいろ知ることができました。「こんなにいい場所だったんだ」って、静岡のことがもっと好きになりました。
大白 なんか、東京って歩きにくいじゃないですか(笑)。常に自分の前に人がいて。私、歩くスピードがめっちゃ早いんですけど、東京だと早く歩けなくてストレスなんです。だから静岡に帰ってきたらもうめっちゃ早く歩いてます。電車も、スマホで調べて出てきた時間よりも2本ぐらい早いのに乗れちゃう。
木村 東京ってぶつかりながら歩くみたいな感じなんですよね。「あ、すいません、すいません」って言いながら。静岡はまず人が少ないからぶつからないですし、もしぶつかっても「大丈夫だよ。お菓子食べる?」みたいに言ってくれるんです。
久松 いきなり?(笑)
木村 それぐらい優しいです(笑)。御殿場は寒いんですけど、人はめちゃくちゃ温かいです。
久松 ファンの方にも静岡の魅力が伝わっているみたいで。fishbowlきっかけで初めて静岡に来た人もいて、「ライブ前に観光してきたんだよ。めちゃくちゃ楽しかった」と言われることもあります。
木村 静岡が好きになって、こっちに引っ越して来ちゃった人もいるくらいです。
「王国」のお気に入り曲は
──2ndフルアルバム「王国」には、そんな静岡をイメージした全11曲が収録されます。
新間 このアルバムには細かい工夫、こだわりがちりばめられてるんですよ。「半分」という曲がアルバムの“半分”の位置の6曲目に収録されていたり、「王国」というタイトルが、静岡がサッカー王国であることに由来していたり、曲数がサッカーチームの人数の11になっていたり。どれも今日初めて知ったんですけど(笑)、すごいテンションが上がりました。このほかに、まだ私たちも見つけられてない仕掛けがあるかもしれないです。
大白 あと、ジャケットが「Fireball」のオマージュになっていたり。
──Deep Purpleが1971年に発表したアルバム「Fireball」ですね。
大白 私は元ネタを知らなかったんですけど、ファンの方は気付いてくれました。アイドルってかわいらしさを前面に出すグループのほうが多いと思うんですけど、このジャケットは前髪を全部まとめて坊主みたいな感じで撮影して。そういうアイドルっぽくないところが面白いなと思いました。
──アルバムには新曲もあればライブで何回も披露されてきた既発曲も入っていますが、メンバー的に特に気に入ってる曲はありますか?
木村 「王国」はいろんな種類の曲がそろっていて、どんな人でも1曲はハマる曲があると思います。その中でも私は「茶切 dope side」がお気に入りで。「ラップをやりたい」とか、ショウさんが私が言った希望そのままに楽曲を作ってくださったんです。「サビあたりで少し止まるような曲がいいです。落ち着いた感じで」とも言ったんですけど、「まさにこれじゃん!」って思う曲ができあがってきて。
──アルバムには「茶切 cute side」と「茶切 dope side」という同一テーマで作られた別トラックのナンバーが収録されますが、木村さんは「dope side」のような中毒性のあるビートの楽曲が好きなんですか?
木村 というか、サビで1回止まるのがとにかく好きなんです。呼吸や時間が止まる感じが(笑)。
──トラックの音が数拍分、止まるということですかね? 確かに「茶切 dope side」にはそういう部分がありますが、「サビで1回止まる曲がいい」ってかなりピンポイントで特殊なオーダーですね(笑)。
木村 はい(笑)。そんな変なオーダーをしたにもかかわらず、ちゃんとカッコいい感じに仕上げてくださって、すごいお気に入りの曲です。
新間 私は「半分」が好きです。確か今の4人体制になってから初めての曲が「半分」で、音源をもらって、レコーディングで歌を入れて、ダンスビデオを撮ってっていう一連の流れをやってるとき、すごくポップな曲調なのに、当時不安もあったのか悲しく感じたんです。今でも曲だけ聴くと切なくなるんですけど、ライブで披露するとお客さんがクラップしてくれて。ライブの盛り上げ方がわからなかった私たちが、それをわかり始めた曲なのかなと思います。「半分」ができてからライブの可能性が広がったのかなって。
──今のfishbowlは楽曲を自分たちのものにしているというか、楽曲の評価がパフォーマンスの評価にも直結しているように感じますが、以前はライブに関してはどこか手探りな感覚があったんですね。
久松 そうですね。私も「半分」がお気に入りで、ライブのときにお客さんの手拍子が聞こえるのがめちゃくちゃ好きなんです。みんなすごくきれいにそろっていて、もしかしたらライブの中で一番好きな瞬間かもしれない。あの一体感がいいんですよ。
大白 私は「熱波」が好きです。去年の「アイドル楽曲大賞」で1位になった曲ということで、たぶん今の女性アイドルファンの界隈で知らない人はいないんじゃないかと思っています。みんなが大好きな1曲です。初めてfishbowlのライブを観た人の反応をSNSで見ると、「『熱波』っていう曲の盛り上がりがヤバかった」「『熱波』がいいからまたライブに行きたい」という声をたくさん見かけます。特に最後のサビはみんなで一緒に歌って飛び跳ねてっていう、あまりアイドル現場にないような盛り上がり方なんです。みんな我を忘れてはっちゃけて楽しんでいて、なんだか変な集団に見えます(笑)。
──フロアがお祭り騒ぎになるイメージですよね。ちなみに、久松さんがさっき言っていたロックバラードというのは、アルバム11曲目の「風花」のことですか?
久松 はい。デモを渡されたときにショウさんから「ロックバラードだよ」と言われて。ロックバラードってどういう曲のことを言うのかよくわかってなかったんですけど、聴いてみたら自分が歌ってみたいと思っていた感じの曲でした。この曲を歌えることが楽しくて、自分が憧れてる人に少しでも近付けてるんじゃないかと思える瞬間があるんですよ。「もっとこうしたい、もっとこう歌いたい」という欲がどんどんどんどん出てくるんです。憧れてる人がよく歌っているようなジャンルだから。
──その憧れてる人というのは?
久松 BUCK-TICKさんです。ちょっとでも櫻井敦司さんに近付きたいんです。
──そうなんですね。それで個人的にロックに対する思いが強いと。
大白 「風花」のデモが届いたとき、夜遅めの時間だったから音源を聴くのは明日にしてとりあえず歌詞だけ見ようと思ったんですけど、歌詞を見たら「目の前の君が好きだ」というフレーズが書いてあって、「え!?」と驚きました(笑)。今までfishbowlの曲にこんなにストレートな歌詞はなかったし、ちょっとキュンってしました。歌詞だけ見ると(手でハートを作りながら)「好きだー」みたいな感じだと思ってたんですが、音源を聴いてみると全然違いました。
──(笑)。
新間 このアルバムの曲はどれも思い入れがあって。私はデモが来て、レコーディングで自分たちの声が入ってという制作の過程がすごく好きなんです。その過程の結果、「王国」はどの曲も違うタイプに仕上がったのでぜひたくさんの人に聴いてほしいです。
ライバルは「さわやか」
──最後に、グループの行く先について話を聞きたいのですが、ゆくゆくはこういう存在のグループになりたいという想像図みたいものは頭の中に浮かんでたりするんでしょうか?
大白 私たちのライバルはハンバーグの「さわやか」(「炭焼きレストランさわやか」)なんです。「さわやか」って静岡県民の誇りだと思うんですけど、私たちもそういう存在になりたくて。仕事で静岡に来た人が「せっかくだから帰る前に『さわやか』でハンバーグを食べよう」って考えるように、fishbowlに対しても、仕事で静岡に来たからにはライブを観たいなと思ってもらいたいんです。
久松 静岡と言えば、という話になったときに、富士山の次にfishbowlの名前が出てくるぐらいの存在になりたいですね。富士山、fishbowl、「さわやか」の順。富士山は無理でも、いつかは「さわやか」を追い抜きたいなって(笑)。
──静岡のグループであることに誇りみたいなものも感じてるんですね。「ここでいつかライブをやりたい」と憧れている会場はありますか?
木村 私はZeppでワンマンライブをしたいです。一度だけZepp DiverCityのステージに立ったことがあるんですけど、あそこって2階席もあるじゃないですか。ほかのライブハウスだとみんな立って「わー」ってやってくれるんですけど、えーとなんて言うか、Zeppは広くて2階席があって、会場の中で人が座る場所があるんだっていうのが……。
──言いたいことはわかります(笑)。確かに、ライブ会場はZeppクラスから広さが一段階グレードアップする感じがありますよね。
木村 「2階席ー!」とか言ってみたいんです(笑)。Zeppより大きなステージにも立ちたいですし……それはもうエコパとか。
大白 花道のあるステージでライブをしたり、ポップアップでステージにボンッと跳んで登場したりもしたいですし、やりたいことはたくさんあります。そして、私たちの活動を通して静岡のことをたくさんの人に好きになってもらえたらうれしいです。
久松 私も大きい会場でライブをやりたいです。人生で初めて観たライブがBUCK-TICKさんの横浜アリーナ公演だったんですけど、もともと親がBUCK-TICKさんを好きで、当時中学生だった私は車の中で曲を耳にしていたものの、その魅力をあまりわかってなかったんですよ。でも横浜アリーナでライブを観たら、お客さん全員がキラキラした目でステージに向かって手を伸ばしている光景に感動して。「こんなに大勢の人を夢中にさせるなんてすごい!」と思ったんです。漠然と「私もやってみたい!」って。今のfishbowlはまだ小さい会場でライブをやらせてもらってる段階ですが、もっとたくさんの人にライブを観たいと思ってもらえるような、大勢の人にステージに向かって一生懸命手を伸ばしてもらえるようなアーティストになりたいです。
──ローカルアイドルの中にはあまりライブの規模を大きくせず、その土地だけでマイペースに活動しているグループもいると思うんですけど、fishbowlとしては静岡に身を置きつつも行けるとこまで行きたいという思いがあるんですね。
久松 はい! 行きたいです!
木村 3月から初のワンマンツアーをやるんですけど、1つひとつの会場が大きくて。それこそ東京キネマ倶楽部は2階席がありますし(笑)、やっとそういう規模でライブができるんだって感激しています。今までより広い会場でどれだけのライブができるのかという不安もあるんですけど、ぜひ応援しに来てくれたらうれしいです。
大白 2階席があっても、そこまでお客さんが埋まらなかった意味がないから、たくさんの人に来てもらえるように今がんばってます。私はツアーを通して強くなりたいという思いがあるんですよ。精神的にもパフォーマンス面でも強く成長したいなって。
新間 ツアーを開催すること自体も1つの目標だったので、まずそれがありがたいです。でも、まだ通過点に過ぎないと思うし、成功させて自信につなげたいですね。
久松 私はこのワンマンツアーが今から楽しみで楽しみに仕方がなくて。名古屋、大阪、東京、静岡を回るんですけど、この4人でどういうライブを作れるかワクワクしています。確かに会場が埋まるかという不安はあるんですけど、不安よりも早くやりたいという気持ちのほうが大きいです。この4人なら絶対大丈夫だろうという自信があります。
ライブ情報
fishbowl 1stワンマンツアー「ブリストルシュブンキン」
- 2023年3月12日(日)愛知県 名古屋ell.FITS ALL
- 2023年3月19日(日)大阪府 Shangri-La
- 2023年3月21日(火・祝)東京都 東京キネマ倶楽部
- 2023年3月24日(金)静岡県 ホテルアソシア静岡(プレミアムファンミーティング)
- 2023年3月25日(土)静岡県 LIVE ROXY SHIZUOKA
プロフィール
fishbowl(フィッシュボウル)
静岡発のアイドルグループ。グループ名は英語で「金魚鉢」という意味で、金魚の形に見えると言われる静岡県すべてを包み込めるアイドルになれるようにという思いを込めて付けられた。メンバー全員が静岡県出身で、サウンドプロデュースは静岡県出身の音楽プロデューサーであるヤマモトショウが担当。2020年秋にテレビ静岡公認の「しずおかアイドルプロジェクト」が発足し、オーディションが行われた。2021年に活動をスタートさせ、6月に初の楽曲「深海」をCDリリース。同年12月に初のアルバム「主演」「客演」を同時リリースした。2023年3月に初のワンマンツアー「ブリストルシュブンキン」をスタートさせるほか、2ndフルアルバム「王国」をリリースする。
fishbowl (フィッシュボウル) | 静岡発アイドルグループ