ナタリー PowerPush - S.H.Figuarts マイケルジャクソン×西寺郷太(NONA REEVES)
フィギュアでゼロ・グラヴィティ再現 西寺郷太が語るマイケル秘話
「ムーンウォーカー」はピラミッド
──このフィギュアを手に取ったファンが「Smooth Criminal」のPVや映画「ムーンウォーカー」を観る機会もあると思うんですけど、西寺さんから見てこれらの作品の見どころはどこですか?
僕はもうね「ムーンウォーカー」を500回くらい観てるんです(笑)。というのも仕事で観てるのと、息子が大好きでびっくりするくらい何度も観るんですよ。当時「ムーンウォーカー」って大失敗作だとされたんです。マイケルがスーパーカーになったり、ロボットになったりとかハッキリ言って通常の大人の感覚ではわけわかんない映画なんで。結局、当時僕が映画館に観に行った時はガラガラでしたね。でもこの映画って今みたいなPCでの映像編集の技術がない時代に、マイケルが自分の稼いだお金をひたすらつぎ込んで作ったすごい映像なんですよ。粘土細工のアートをこつこつと人間が作ったり、今とは比べ物にならない手間をかけたCGだったり。だいたいのマイケルの映像ってそうなんですが、初体験したときに僕らが受けた衝撃っていうのは口あんぐりもいいとこでした。どうなってんのこれ?っていう。例えばエジプトに行ってピラミッドを見て、あの頃クレーンもないのにどうやってあんな巨大なもの作ったんだろう、大変だったろうなっていうレベルの作品なんです。
──映画の内容も徹底的にマイケルが主人公で、やっぱりちょっと変わった作品ですよね。
ある意味幸福な映画だなって思うんですよ。あれだけ映画を作りたがっていたマイケルが自分が生きている間に唯一作ることができた映画が「ムーンウォーカー」で。あの中には一般的な大人が理解できない、子供のまま天下を取ったマイケルならではの部分がすごく多いと思うんですよ。もしかしたら、それが子供には伝わっているのかもしれない。
──映画内なのにファンに見つかってマイケルが笑顔で逃げるシーンとか。これをわざわざ映像にして見せるんだっていう、ちょっと大人にはわからない“無邪気さ”みたいなものがあります。
しかもそれが延々続くんですよ。実際マイケルが好きだった遊びっていうのがいくつかあって。マイケルの家にプールがあるんですけど、子供に「落とすなよ」って言うんです。「絶対落とすなよ」って。それで子供がマイケルをプールに落とすっていう遊びをずっとやるんです。1回ならわかるんですけど、乾かして帰ってきたマイケルがまた「落とすなよ」って言う。子供がまた落として、大笑い。で、また帰ってきて「落とすなよ」。子供のほうが逆に飽きちゃうんですよ(笑)。あとマイケルは卵を頭の上で割られるのも大好きで。
──マイケルが卵を割るのではなく、割られるんですね。
やっぱりマイケルが「割るなよ」「やるなよ」って言うんです。で、マイケルの頭の上で子供が卵を割って大爆笑。でもこういうのってマイケルに対して大人はもう誰もやれないんですよ。天下のスーパースターですから、みんなビビりまくって。だけど本人はやってほしい。結局彼は「子供としか遊ばない」とか「変だ」とか言われてたんですけど、むしろこういう無邪気な遊びができないまま大人になっちゃって、単純にそれがしたかっただけのことで。しかも子供たちがちょっと大人になると、もう子供が遊んでくれなくなるんですよ(笑)。
──成長してしまうと、子供のほうが何が面白くてやってるのかわからなくなってしまうんですね。
だからやっぱりそういう意味でもすごく特殊な境遇で育ったピュアな人で。だからこそああいう映画が撮れたんだなって思います。
フィギュアが出て一番喜ぶのはマイケル
──マイケルはフィギュアやおもちゃで遊ぶのも好きだったんですよね?
正直言ってこのフィギュアが出て、一番喜ぶのはマイケル自身だと思っちゃいますね。80年代末に一度、マイケルが日本の会社にフィギュアを作ろうって持ちかけたことがあったんです。それはネバーランドにいるチンパンジーのバブルスとかヘビのマッスルズとか、動物たちをフィギュアにするっていう企画で。日本の会社もけっこうお金を出してフィギュアを作った。で、いざ完成して持っていったら、マイケルが「目が違う」って。そのまま発売中止になっちゃったんです。
──ということは世の中には一切出回らず……。
その会社は負債を抱えたそうです。つまりそれくらいマイケルはこだわってたんですよ。普通、お金のことを考えたらどんなクオリティでも売ったほうがいいじゃないですか。だけどマイケルはフィギュアとかおもちゃというもののプライオリティを一般的な大人よりもすごい高いところに置いていて。彼にとっては“目が違う”ってだけで致命的だったんです。マイケルのこういう逸話が残ってるから、フィギュア作りってプレッシャーを感じると思うんですよ。今回のフィギュアは新しく進歩した技術で丁寧に作られてる感じがしますね。
時代ごとのマイケルをそろえたい
──もしこのS.H.Figuartsで次回作が出るとして、どの時期のマイケルが欲しいですか?
「Thriller」はすでにいくつかフィギュアにもなってるので、僕だったら95年の「Scream」とかかな。この年にリリースされたアルバム「HIStory」って、当時失敗作だって言われていて。でも「Scream」のフィギュアを、デュエットしたジャネット・ジャクソンとセットで作ったりしたら絶対カッコいいと思う。PVに出てくる白い宇宙船のセットもあって、そこでジャネットとマイケルを同じような感じで立たせられたらファンは食いつくと思うんですよね。あと、多分僕だけが喜ぶのが「Victory Tour」セットっていうので(笑)。
──兄弟6人集合ですか!
そうです(笑)。6体そろうと値段も高くなってしまうけど、インパクトはすごいと思うんですよ。「Victory Tour」って「Thriller」の頃のマイケルだし、ティトがギターを持っていたりして。売れないと思うけど僕は欲しいです(笑)。あと、みんなが欲しいと思うのは「Bad」ツアーのときの銀のボディスーツ。ツアーの衣装は親友の和田唱(TRICERATOPS)くんが大興奮して喜ぶかもしれないですね。このフィギュアよりもうちょっと肉付きをよくして、黒いジャケットと赤いシャツにすれば「Dangerous」のときの衣装になる。そうやってシリーズ展開していって、1個は「ゼロ・グラヴィティ」、1個は「ムーンウォーク」みたいに、それぞれの時代の特徴的なダンスの形をさせられたら全部コンプリートしたいなって思っちゃいますね(笑)。いくつか並べてこそ魅力が増すと思うんで、本当に何種類も作ってほしいです。
- 「S.H.Figuarts マイケルジャクソン」
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2014年9月発売予定
メーカー希望小売価格:4860円
全高:約140mm
材質:PVC、ABS製
セット内容
本体・交換用手首右5種・左2種・交換用フェイスパーツ・ハット・台座用足首一式・専用台座・交換用上半身パーツ - UNIVERSAL MUSIC STORE
- Amazon.co.jp
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商品情報
マイケル・ジャクソンの大ヒット曲「Smooth Criminal」の衣装・アクションを再現した可動フィギュアがS.H.Figuartsシリーズに登場。作品中のアクションとして有名な「ゼロ・グラヴィティ」を再現するための、オリジナル台座と足首が付属する。全身の可動関節により“マイケルらしい”印象的なアクションを細やかに再現可能。立体物に高い精度で表情のデータを印刷するデジタル彩色技術を活用し、微妙な表情のニュアンスの再現を可能にした。ノーマルと笑顔の2種のフェイスが付属。
西寺郷太(にしでらごうた)
1973年東京生まれ。1996年からNONA REEVESのボーカリスト兼メインコンポーザーとして活躍するほか、他アーティストへの楽曲提供やプロデュースも行う。日本屈指のマイケル・ジャクソン研究家としても知られ、2009年に著書「新しい『マイケル・ジャクソン』の教科書」(新潮文庫)、2010年に「マイケル・ジャクソン」(講談社現代新書)を上梓。その他マイケル関連作品のライナーノーツも数多く手がけている。2014年3月にティト・ジャクソンが参加した初めてのソロアルバム「Temple St.」、6月4日にNONA REEVESのオリジナルアルバム「FOREVER FOREVER」をリリース。さらに6月25日には小説家として80年代洋楽の秘密を旅するノンフィクション風音楽小説「噂のメロディ・メイカー」(扶桑社)を発表した。