ナタリー PowerPush - S.H.Figuarts マイケルジャクソン×西寺郷太(NONA REEVES)
フィギュアでゼロ・グラヴィティ再現 西寺郷太が語るマイケル秘話
西寺郷太(NONA REEVES)インタビュー
頂点にのぼり詰めた時期のマイケルの姿
──マイケル・ジャクソンのアクションフィギュアが完成しました。今日は実物を持って来ています。
1986年後半のマイケルですね。衣装は「Smooth Criminal」のビデオクリップのもの。アルバム「Bad」の中の1曲なんですけど、このアルバムはリリースがすごい遅れて、結果的に1987年の8月の終わりに出たんです。で、アルバムのリリースが遅れた理由が「ムーンウォーカー」っていう映画を撮っていたからで。
──「Smooth Criminal」のPVは「ムーンウォーカー」のワンシーンとして撮られていますね。
そうです。アルバムの完成を待たせるくらいマイケルが気合いを入れて作ったのが、映画「ムーンウォーカー」であり、この「Smooth Criminal」のPVなんです。マイケルの数あるPVの中でも「Thriller」とこの「Smooth Criminal」が最高傑作だっていう声がやっぱり多くて。「Smooth Criminal」の頃のマイケルは「Thriller」が売れて天下も取って、お金も使えて、若さを持ちつつ円熟した感じもある。頂点にのぼり詰めた時期と言えるのがこのフィギュアの姿だっていうのは、1つポイントかもしれないですね。
──今回のフィギュア、西寺さんだったらどんなポーズで飾っておきますか?
どのポーズかなあ……。やっぱりこの衣装であれば「ゼロ・グラヴィティ」はいいですよね。この曲でしかやらないポーズなので。マイケルは出し惜しみをすごいする人だったんです。例えば「ムーンウォーク」は基本的に「Billie Jean」でしかやらないし、「ゼロ・グラヴィティ」は「Smooth Criminal」でしか見れない。だからやっぱりこの前傾のポーズで、家のスピーカーの上に置いて飾ります(笑)。
この時期のルックスを好きなファンが多い
──フィギュアのプロポーションなどはいかがですか?
やっぱりスタイルがいいですよね。僕自身はあんまりそこにフォーカスを当ててないんですけど、結局マイケルの人気の半分くらいはやっぱりルックスだと思うんですよ。世界中で受け入れられたのは人種がミックスされたその容姿にあると思います。アメリカ社会によくあることですが、マイケルの父方の曾祖父はドイツ系の白人なんです。母のキャサリンにはネイティヴ・アメリカンの血が流れていると言われています。そう思ってみると実際、ラ・トーヤやジャネットはじめ3人の姉妹はプエルトリコ地域から生まれるミス・ユニヴァースみたいですしね。それに加えて、マイケルは本人の節制もあってともかくスタイルがいいし。映画の「ムーンウォーカー」のシーンで、風が吹いてマイケルの顔に焦点が当たるシーンがあるんですけれど、それが恐ろしいぐらいに整った彫刻のような表情で。やっぱりこの「Smooth Criminal」の時期のルックスっていうのは好きなファンが多いですよね。
──フィギュアの顔はどうですか? 似ていますか?
マイケルに限らずファンはそれぞれの思い入れがあって厳しいですからね(フィギュアの顔をよく見ながら)、ほんのちょっとだけ焦点が合っていないというか、少しだけ眼球が離れているところとかも似てますね(笑)。
──付属の帽子は角度が調節できます。「Smooth Criminal」のPVでもダンスの中で帽子の角度を変えたりしますが、マイケルといえば帽子もトレードマークの1つですよね。
マイケルは好きですよね、帽子。マイケルが帽子を手放さなかった理由は2つあるんです。1つはファッションとして単純にカッコいいというのと、もう1つは日に焼けないようにするため。彼は斑点上に肌が白くなる白斑症という病気になってしまって、帽子だけじゃなく日傘を差したり長袖を着たり、極力肌が日に当たらないようにしていたんです。そういう背景もあって、帽子は2つの意味でトレードマークだったんです。
──フィギュアでは右手の指にちゃんとテープも巻かれています。
腕を振ったときに指の動きが見やすいっていうことで指にテープを巻いてたみたいですね。80年代後半はよくやってました。当時の様子をよく研究されたということですね、このフィギュアは。
「ゼロ・グラヴィティ」の仕掛けの溝を掃除してた
──今回のフィギュアの特徴はマイケルの有名なパフォーマンスの1つ「ゼロ・グラヴィティ」が再現できることです。
実は僕、日本でかなり初めに「ゼロ・グラヴィティ」のシステムを会場で見た人間なんですよ。1992年の12月に東京ドームで「Dangerous World Tour」の公演があって、その頃の僕は東京に出てきたばかりの大学1年生で、ライブのスタッフのバイトをしてたんです。
──ということはマイケルの公演にもスタッフとして?
ファンとしても何度か観に行ったんですけど、公演の準備期間からトータルで10日間くらいをスタッフとしてバイトしたっていうのが僕の思い出なんです。PVではピアノ線で吊ってるんですけど、ライブではどういうふうにやっているのか僕は見たくて。
──まさに“イリュージョン”だったわけですね。
そうです。それで僕はその仕組みを裏方で知ることができた。実際には「ゼロ・グラヴィティ」って、ステージの上のフックみたいなものにマイケルとダンサーが履き替えた靴を引っかけるっていう仕掛けなんです。本番中、彼らが準備をするときにステージの向こうから花火を持った男が出てくる。そっちをみんなが見ている間にマイケルとダンサーが靴をフックにはめ、彼らにスポットライトが当たると「ゼロ・グラヴィティ」を見せる。それで、ダンスのように見せかけてそのフックを外してっていう。僕はそのフックが出てくる床の溝を掃除してたんですよ。
──すごく重要な部分の掃除を任されていたと。
「こうなってんのかあ」とか思いながら(笑)。だから僕にとってもこの前傾姿勢っていうのは、思い出深いんですよ。
──まさしくフィギュアで再現されている「ゼロ・グラヴィティ」と同じ仕組みということですよね?
そうですね。台座と靴をジョイントするのでほぼ同じです。もう今は有名ですけど、当時はまだインターネットとかがなかったから、この仕組みは全然知られてなかったんですよ。
- 「S.H.Figuarts マイケルジャクソン」
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2014年9月発売予定
メーカー希望小売価格:4860円
全高:約140mm
材質:PVC、ABS製
セット内容
本体・交換用手首右5種・左2種・交換用フェイスパーツ・ハット・台座用足首一式・専用台座・交換用上半身パーツ - UNIVERSAL MUSIC STORE
- Amazon.co.jp
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商品情報
マイケル・ジャクソンの大ヒット曲「Smooth Criminal」の衣装・アクションを再現した可動フィギュアがS.H.Figuartsシリーズに登場。作品中のアクションとして有名な「ゼロ・グラヴィティ」を再現するための、オリジナル台座と足首が付属する。全身の可動関節により“マイケルらしい”印象的なアクションを細やかに再現可能。立体物に高い精度で表情のデータを印刷するデジタル彩色技術を活用し、微妙な表情のニュアンスの再現を可能にした。ノーマルと笑顔の2種のフェイスが付属。
西寺郷太(にしでらごうた)
1973年東京生まれ。1996年からNONA REEVESのボーカリスト兼メインコンポーザーとして活躍するほか、他アーティストへの楽曲提供やプロデュースも行う。日本屈指のマイケル・ジャクソン研究家としても知られ、2009年に著書「新しい『マイケル・ジャクソン』の教科書」(新潮文庫)、2010年に「マイケル・ジャクソン」(講談社現代新書)を上梓。その他マイケル関連作品のライナーノーツも数多く手がけている。2014年3月にティト・ジャクソンが参加した初めてのソロアルバム「Temple St.」、6月4日にNONA REEVESのオリジナルアルバム「FOREVER FOREVER」をリリース。さらに6月25日には小説家として80年代洋楽の秘密を旅するノンフィクション風音楽小説「噂のメロディ・メイカー」(扶桑社)を発表した。