FIFTY-FIFTY Records特集 古川朋久×渡辺淳之介(WACK)対談 |元音楽ナタリー記者がレーベル立ち上げ、アイドル運営の“WACKな先輩”と初対談

あふれる情報に埋もれない努力

古川 WACKに関するニュースって今でもナタリーでほぼ毎週、毎日のようにいろんなものが出てますよね。実はうちの会社にはDEAR KISSというグループが所属していて、とにかく情報を枯渇させちゃいけないという部分で、すごく参考になってます。

──裏側の話ですけど、渡辺さんも古川さんもマメにプレスリリースを仕込んで送っていますよね。

古川 それをやろうとするのがなかなか大変で、記事になるようなネタを作らなきゃいけない。なんでもないようなニュースかもしれないけど、仕込むのにすごく時間かかることもあるし、継続するのって実は大変なことで。

──今は情報量が増えてきてる分、埋もれやすいから情報発信のスピード感は大切かもしれませんね。

渡辺 5年前、8年前と対比してみると、今と明らかに違う面白い事実があるんです。ゲームの話ですけど、「モンスターハンター」って8年前の作品だと倒すまでに80分くらいかかるクエストがありましたよね。

古川 PS2の「MONSTER HUNTER2」あたりはそうですね。

渡辺淳之介

渡辺 当時、多くの人がそれに熱狂してたと思うんですけど、今では1クエスト20~30分くらいになっていて。あと「龍が如く」シリーズもどんどんクエストタイムが短くなってるんですよ。僕の知る限り、アメリカのドラマも昔は1時間きっかりあったけど、最近は45分くらい。何が言いたいかというと、みんな情報がありすぎて飽きっぽくなってる傾向を受けた変化なんだろうなと。新しい情報を発信して、変化し続けないとお客さんを引き付けていられない。最近はより一層加速してるので、今WACKは積極的に情報出しをしてる感じではあります。

──以前と比べると、そういう状況って消耗しやすくないですか?

渡辺 そうですね。だからこそ毎年合宿をやって、現状をぶっ壊してます。結局ビルドすると消耗しちゃうんでスクラップし続けてる(笑)。直そうとしたら一生直らないので、完成させちゃいけないと思うんですよね。あの美しいと言われているサグラダファミリアは未完成だからよさがあるわけで。

古川 完成しない美学みたいな?

渡辺 そうです。完成してないから、今のWACKのお客さんにはこの先に興味を持ってもらえてるような。もちろん「変えないで」という人たちもいっぱいいますけど。

3社合同オーディションの開催を発表

──FIFTY-FIFTYではアーティストの育成なども計画しているんですか?

古川 うちでやりたいと思ってくれた人がいたら、本当にありがたいことなので積極的に話を聞きたいです。でも今は僕自身が動いて、一緒にやりたいと思ったところに熱烈にアプローチしていくほうが先かなと。別にアイドルに限ったことじゃないです。バンドとかも全然やりたいですよ。

渡辺 今、難しいですよね。メジャーの人たちも昔より青田買いしようとする感じがすごくある。握手会で売り上げが立つからだと思いますけど。

古川 ということもあって、自社コンテンツを強化しようという思いもあって実はオーディションをやることにしました。新しいアイドルを作るんですけど、それは3社共同でプロデュースする形にしようと思っていて。バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHIやWILL-O'などを手がけてるパーフェクトミュージック、天晴れ!原宿を手がけているTAKENOKOと弊社の3社で共同プロデュースの合同オーディションをやるんです。パーフェクトミュージックさんがマネジメントと制作、TAKENOKOはプロデューサーのカノウリョウくんがディレクションですね。うちはレーベルとプロモーションを主に担当みたいな感じで。それぞれの特技を生かして1グループを作るという。

渡辺 こんなこと言っちゃなんなんですけど、カノウくんはまず天晴れ!原宿を売ったほうがいいんじゃないかな。

古川朋久

古川 今回の話は僕が若い運営とグループを作りたかったというわがままから始まったので(笑)。あとパーフェクトミュージックの担当はWILL-O'を見ている渡部飛鳥くん。彼とは彼が学生の頃からの付き合いなので、この業界で一緒に仕事したかったという思いもあって。

渡辺 僕がBiSを立ち上げたのが25歳くらいだったかな。あの世代は一番怖いっすよ。何やるかわからないから。

古川 僕が今年42になるんですけど、もうおっさんだなと思って。自分の感性をたまに疑うことがあるので、若い子と一緒にいると気付くことがたくさんあるんです。

オーディション主催者の現実

──オーディション、たくさん応募があるといいですね。

古川 いったいどんな子が来るのかわからないですけど。

渡辺 けっこうたくさん来るんじゃないですか? 時期的に「WACKオーディション落ちました」みたいな子たちの応募もあると思います。今回WACKのオーディションには3000人くらい応募がきてて。

──全員のオーディション用紙を見るんですよね?

渡辺 一応見てはいるんですけど……。

古川 いい子いました?

渡辺 いなくて。

古川 3000人も応募があるのに?

渡辺 僕がわがままになってるんでしょうね。ハードルが高くなってきて、昔だったらバンバン受かってるような人がいっぱいいるんですけど、なんかピンとこない感じで。今回の合宿もだいたい20人呼ぶ予定なんですけど、顔面の偏差値は高いです。3000人も応募が来れば平均が高くなるのもわかる。でもなんかピンとこない。

古川 いつも合宿中に開花する子がいるじゃないですか。

渡辺 そういうところはあるのでまだわからないんですけど、今年はどっちかと言うと新メンバーを入れるというよりはWACKの哲学を教える会みたいな感覚に今回の合宿は近い気がします。でもやりたくなったら新しいグループを作るかもしれないので。

古川 僕としてはうちのレーベルにゆくゆくはWACKの子が所属してくれたらという野望がありますね。渡辺さんの無理難題にどれだけ僕が応えられるかっていうのは僕のミッション。

渡辺 俺も甘い汁を知っちゃったからな。自分でレーベルをやったほうがおいしいから(笑)。

古川 そこはわかりながらも、うちのレーベルとしての強みをさらに増して、一緒にやったほうが勝てるんじゃないかと思わせるような、そういう未来がくるといいなと思います。

渡辺 そうですね。古川さんの力を借りるときがくるかもしれないですね。

古川 箱も押さえますんで。

渡辺 (笑)。