ナタリー PowerPush - F.I.B

This is メロディックパンク! 10年選手が手に入れた王道感

ライブでしばらくコンピに入っている曲だけ盛り上がった

──F.I.Bは最初にPIZZA OF DEATH RECORDSのコンピに楽曲が収録されて、ミニアルバム、フルアルバムと比較的スピーディにリリースを続けて、そして状況も上向きになっていった。そういう状況を当時はどう思ってましたか?

中途(Vo)

まずうれしさがありました。お客さんが増えて聴いてくれている人たちが大勢いるって感触がありましたし。ただライブではしばらくの間、コンピに入っている「Are you standing on?」だけが盛り上がったんですよ、ほかの曲はシーンとしていて。それが悔しくて。もちろん「Are you standing on?」は大好きな曲なんですが、僕らはそれだけじゃないですからね。そういう状況を超えなきゃって気持ちはありました。

──自分たちでは「Are you standing on?」はどういう意識で作った曲なんですか? コンピに入るってことが前提で作ったものですか?

いえ。僕ら、それ以前からずっと、新曲ができるとPIZZAに送っていたんですね。で、何回か送っていたら「今度コンピを出すから参加しませんか?」って。

──「キター!」って感じですね(笑)。

「ちゃんと聴いてくれてて良かった」って。

PIZZA OF DEATHスタッフ ちゃんと聴いてるよ(笑)。

あ、そうですよね(笑)。で、既存の曲の中からPIZZAと相談して決めたんです。だからコンピに向けて作った曲でもないし自分たちの代表曲ってつもりもなくて。僕らはどの曲も同じように力を注いでいるので、あの曲だけが取り上げられるのはうれしいはうれしいんですけど、やっぱりすごく悔しかったんですよね。そういう思いもあって、今作はじっくりと作っていこうって気持ちになったのかもしれません。とにかくあの曲を超えるものを作ろうと。

──なるほど。

ホント、地に足を着けたバンドなんで状況を意識できるほど器用じゃないから、結局は1曲1曲に向かうしかないんですよ。ただ僕は、これぐらいの時期に作品を出したいとかこういう曲が欲しいとか、そういうことは言うんですけど。

健太はピアノでメロディから作っていくことが多い

──今作はとてもバラエティに富んでいて、どの曲もキラーチューンって感じで。

それはうれしいです。全部がライブで映える、ライブで刺さる曲にしたかったんです。

──ただ単にライブの勢いを出せばいいってものではなく、非常に練り込まれた作品ですし。

そうですね。曲の良さをちゃんと出しつつ、どこまでライブを感じさせるものにできるか。そういう挑戦はしていて。

──その楽曲ですが、メロディがハッキリしてますよね。

健太は元々ピアノを習っていたこともあって、ギターでコードから作るんじゃなく、ピアノでメロディから作っていくことが多いと思うんです。あとクラシックが好きなんですよね。

いろんな音楽をやりたいね、楽しいことをやりたいね

──あの、さかのぼりますが、昔はやっぱりコピーとかしていたんですよね?

中途(Vo)

してました。スタジオに行ってはハイスタのコピーをやって。AIR JAMに出たバンドをコピーしていったり。難しくて全然うまくできなかったですが(笑)。

──じゃあオリジナル曲を作るようになったのはいつ頃から?

コピーしていたのはF.I.Bの結成前なんです。で、健太がバンドを組もうって言ってきて、そこからオリジナル曲を始めて。だから健太は自分で曲を作りたかったのかもしれないですね。

──今でもそのコピーバンド時代が思い浮かぶようなライブですもんね。ライブはパワフルで人懐っこい。でも曲は凛々しく壮大で、そのギャップが面白い。

ライブは楽しいですから(笑)。

──そのギャップというかバランス感覚は、どういうとこから出てると思います?

僕ら、育ったのが田舎だったもんで、いろんな音楽に触れる機会がなかなかなかったんです。ネットもそこまで普及してなかったし。誰かが大阪とかに行ったときに買ってきたCDをみんなで貸し借りして聴くっていう。大好きなメロディックパンクだけは聴いてたんですけどほかの音楽には疎かった。で、F.I.Bを結成して京都に出てきてからいろんなバンドを観たり対バンしたり、ハードコアやエモのバンドも観て初めて外の世界に触れたんです(笑)。そこで話したのが「いろんな音楽をやりたいね、楽しいことをやりたいね」ってことで。その上で健太も自分のルーツでもあるクラシックの要素を持ってきたんだと思います。

ニューアルバム「FIRE CRACKER」 / 2012年9月26日発売 / 2300円 / PIZZA OF DEATH RECORDS / PZCA-57
CD収録曲
  1. Intro
  2. Cast Off Your Tinsel Lie
  3. The Brilliant Future
  4. Story
  5. Trip
  6. Burn Down
  7. I'll Stay By Your Side
  8. So We Can Claim
  9. Answer
  10. Do It More Fool
  11. Get Back
  12. Strings
  13. Beginning Sign
  14. For All Time
F.I.B(えふあいびー)

2002年に京都で結成されたメロディックパンクバンド。現在のメンバーは中途(Vo)、健太(Dr)、ホワイティ(B)、JJ(G)、Pelori(G)。結成以来京都を拠点にライブ活動を行ってきた。2006年、PIZZA OF DEATH RECORDSからリリースされたオムニバスアルバム「The Very Best Of PIZZA OF DEATH」に、オリジナル曲「Are You Standing On?」を提供。これがきっかけとなり、翌2007年にミニアルバム「FILL IN THE BLANKS」をPIZZA OF DEATH RECORDSから発表した。2009年には1stフルアルバム「FIGURE」をリリース。その後もツアーの実施や「RUSH BALL」「京都大作戦」「COMIN' KOBE」「BAYSIDE CRASH」といったフェス&イベントに出演し、知名度を高めていった。2012年9月に約3年半ぶりとなるニューアルバム「FIRE CRACKER」をリリース。