音楽ナタリー PowerPush - fhána
憂鬱の向こう側示す1stフルアルバム
メジャーデビューから約1年半。fhánaが待望の1stフルアルバム「Outside of Melancholy」を2月4日にリリースした。
本作には、テーマソングとしてさまざまなアニメの世界を彩ってきた「ケセラセラ」「tiny lamp」「divine intervention」「いつかの、いくつかのきみとのせかい」「星屑のインターリュード」といったシングル表題曲に、カップリング曲と新曲を加えた全14曲を収録。このアルバムの制作を通して彼らはfhánaというユニットが持つ確固たるアイデンティティを改めて確認することができたと話す。果たしてそれはなんなのか? そして本作を通じて彼らが響かせたかったメッセージとは? メンバー全員に話を聞いた。
取材・文 / もりひでゆき
ユニットのアイデンティティが満載
──全14曲収録、大ボリュームの1stアルバムになりましたね。
yuxuki waga そうですね。70分超えちゃいました。改めて名刺代わりのアルバムができたなって思います。シューゲイザーもオルタナもやっていて自分たちの好きなサウンドを幅広く詰め込むことができたので、とてもハイブリッドなものになったなと。そういう意味でもアニメファンはもちろん、いろんな人に届いてほしいなって思います。
kevin mitsunaga シングル曲がたくさん入っているからベスト盤っぽくも見えてしまうんですけど、それだけにとどまらないfhánaのいろいろな魅力に気付いてもらえる作品になったと思いますね。アニメで流れた曲だけしか聴いたことがなかった人にとっては、そのほかの楽曲の空気感に新鮮な驚きがあるんじゃないかな。自分たちとしてもすごく思い入れのある1枚です。
towana 私はとりあえず完成させることができてよかったなって、今ホッとしてます(笑)。
──制作は大変だったんですか?
towana 精神的に不安があったんですよ。フルアルバムを作るのは初めてだったので、アルバム1枚すべての曲を自分1人で歌うことが今の私にできるんだろうかって。制作期間は去年の11、12月の2カ月くらいだったんですけど、特に歌に関しては、その期間の私のパフォーマンスで決まってしまう。だからすごく緊張してしまって。
──結果、すごくいい歌声がすべての曲で響いていますよね。
towana だったらよかったです(笑)。今の私にできることは全部出し切りましたね。
──佐藤さんは仕上がりに関してどう感じていますか?
佐藤純一 すでにいろいろと「ああすればよかった、こうすればよかった」っていうのはあるんですけど、それは次の作品へのモチベーションになるのでいいかなと思いつつ。アルバム全体としては、fhána自身のアイデンティティを見つけることができる内容になったと感じていますね。
──シングル曲だけでは見えなかった、ユニットとしての深みをしっかり感じることができますよね。アルバム1枚通してfhánaとしてのストーリーを感じるというか。
佐藤 そうですね。僕らが自主制作の頃にやっていたことの世界観とメジャーデビューしてアニソンをやるようになってからの世界観を、ここでようやく統合させることができた気がしてるんですよ。自主制作盤の「New World Line」というミニアルバムが象徴的なんですけど、その作品を作っていた頃は、“世界線”……アニメやゲーム、SFによくある、いわゆるパラレルワールドみたいな世界観をコンセプトにしていたんです。
──はい。
佐藤 でもメジャーデビュー以降からは、主題歌を担当させていただくアニメの世界観や雰囲気に合わせた曲作りをしていて。その楽しさに没頭はしていたけれど、ふと考えると曲単位でいいものを作れている手応えはあっても、fhánaとしての全体像が見えにくくなってきてしまっていたんです。
アニメの物語もfhánaの物語の可能性の1つ
──なるほど。じゃあ今回のアルバム制作は、fhánaとしてのアイデンティティを取り戻すことを念頭に置いて進めていったんですか?
佐藤 制作を始めた段階では、なんとなくそう思っていただけでしたけどね。最初に「Outside of Melancholy」……つまり“憂鬱の向こう側へ”という希望を込めたアルバムタイトルにしようということを決めて、それを踏まえて表題曲を作り始めたんです。で、いつも歌詞をお願いしている林(英樹)くんに、ちょっと青春っぽいエモーショナルな内容で、かつfhánaのもともとのコンセプトである“ループもの的な世界観”や“並行世界”を感じさせる歌詞にしてほしいとオーダーしたんですよ。それで上がってきた歌詞を読んだときに、アルバムの全体像が一気に見えてきたというか。
──1曲目の「Outside of Melancholy ~憂鬱の向こう側~」の歌詞には、これまで発表してきた楽曲に出てきたフレーズが散りばめられていますよね。
towana そうなんですよ! メジャーデビューする前の曲の歌詞も入っていたりして。ニクいですよね。「林さん、やってくれたなー」みたいな(笑)。
kevin 曲ごとの世界観がリンクしている感じはもともとあったと思うんですけど、さらに今回はそういうニクいことをしてくれて。それでアルバム全体がより太い1本の線でつながったところもあったと思います。
佐藤 そう。で、「Outside of Melancholy ~憂鬱の向こう側~」を踏まえて、アレンジ的にも歌詞的にも対になる「white light」という曲を作って、その2曲でほかの曲を挟んでみて。そしたら「ああそうか、これまで主題歌を作ってきたアニメの物語もfhánaという大きな物語の中の“世界線”の1つ、いろんな可能性の1つだったんだな」って思えたんです。
──メジャーデビュー後の楽曲群も、それ以前に掲げていたコンセプトにしっかり収まるものだった。バラバラだったと思っていた世界観が統合されたと。
佐藤 はい。アニメの世界に寄り添う曲たちも、「もっと上から、メタな視点で見てみればすべてfhánaの世界に包まれていた」みたいな。今回のアルバムを作る中で、そういうことに気付けたんですよね。
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- 1stアルバム「Outside of Melancholy」 / 2015年2月4日発売 / Lantis
- 初回限定盤 [CD+Blu-ray Disc] / 3888円 / LACA-35473
- 通常盤 [CD] / 3240円 / LACA-15473
CD収録曲
- Outside of Melancholy ~憂鬱の向こう側~
- tiny lamp
- divine intervention
- lyrical sentence
- スウィンギングシティ
- はじまりのサヨウナラ
- いつかの、いくつかのきみとのせかい
- Paradise Chronicle
- ARE YOU SLEEPING?
- ケセラセラ
- innocent filed
- 君という特異点 [singular you]
- 星屑のインターリュード
- white light
初回限定盤Blu-ray DISC収録内容
[MUSIC VIDEO]
- Outside of Melancholy ~憂鬱の向こう側~
- 星屑のインターリュード
- いつかの、いくつかのきみとのせかい
- divine intervention
- tiny lamp
- ケセラセラ
[LIVE VIDEO(2014.9.23 深窓音楽演奏会 at Shinjuku BLAZE)]
- tiny lamp
- 星屑のインターリュード
- kotonoha breakdown
ライブ情報
- 1stアルバム発売記念ライブ「Outside of Melancholy ~憂鬱の向こう側~」
- 2015年3月1日(日)東京都 渋谷duo MUSIC EXCHANGE
- ワンマンツアー「Outside of Melancholy Show 2015」
- 2015年5月17日(日)東京都 渋谷duo MUSIC EXCHANGE
- 2015年5月23日(土)大阪府 OSAKA MUSE
- 2015年5月24日(日)京都府 METRO
fhána(ファナ)
佐藤純一(FLEET)、yuxuki waga(s10rw)、kevin mitsunaga(Leggysalad)という3人のプロデューサーと、女性ボーカリストtowanaによる4人組ユニット。それぞれ個別に活動していた佐藤純一、yuxuki waga、kevin mitsunagaの3人が2009年に出会い、ボーカリストを固定しないユニットとして始動した。2012年秋にはゲストボーカルの1人だったtowanaが正式加入。「僕らはみんな河合荘」「ウィッチクラフトワークス」「ぎんぎつね」「有頂天家族」「天体のメソッド」といったアニメ作品でテーマソングを担当して高い評価を集めた。さらにChouChoや相沢舞のプロデュース、さよならポニーテールやDECO*27の楽曲のリミックスなども行っている。2015年2月には1stフルアルバム「Outside of Melancholy」を発表。また同年3月には初のワンマンライブ「Outside of Melancholy ~憂鬱の向こう側~」を東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGEにて開催する。