スマートフォン向けゲーム「Fate/Grand Order」がリリース8周年を迎えた。
2015年7月30日にリリースされた「FGO」は、TYPE-MOON原作によるゲーム。人類滅亡を阻止するため、プレイヤーが“マスター”となり、神話や歴史上の英雄を使い魔とした“サーヴァント(英霊)”とともに“聖杯探索(グランドオーダー)”と呼ばれる旅に出る物語が描かれている。現在は最新エピソード「奏章Ⅰ 虚数羅針内界 ペーパームーン」が公開されている。
ナタリーではゲーム配信8周年を記念し、「FGO」の特集を展開している。音楽ナタリーでは8周年に合わせて作られたアニメPV「Memorial Movie 2023」のテーマソング「flowers」を歌唱しているHana Hopeにインタビュー。テーマソングの制作エピソードや7月に千葉・幕張メッセ国際展示場9~11ホールで開催されたイベント「Fate/Grand Order Fes. 2023 夏祭り ~8th Anniversary~」で「flowers」を初披露した際の思いについて聞いた。
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取材・文 / ナカニシキュウ
「FGO」ファンの熱意
──Hanaさんのメジャーデビュー曲「flowers」は、スマートフォン向けゲーム「Fate/Grand Order」のリリース8周年を記念したアニメPV「Memorial Movie 2023」のテーマソングとなっています。「FGO」の楽曲を歌うことが決まったときの心境はいかがでした?
「FGO」には多くのファンが付いていて、その1人ひとりがゲームに対して感謝と尊敬を強く持っている印象があります。私の友達にもプレイしている人がいますが、みんな熱意があってすごい。そういう素敵なファンベースと関わる機会をいただけたことはすごく貴重な経験ですし、とてもうれしく思いました。
──7月に幕張メッセで行われた「Fate/Grand Order Fes. 2023 夏祭り ~8th Anniversary~」でHanaさんは「flowers」を初歌唱していますが、そこでもファンの熱さを改めて感じたのでは?
そうですね。熱気が伝わってきて、それで緊張が高まってしまいました。でも、歌い始めたら皆さん温かい視線で見守ってくださって、その瞬間は自由になれた気がしました。あんなに大人数の前で歌うことも初めてだったので、それも緊張するポイントの1つだったんですけど、皆さんの温かさに救われました。
──Hanaさんご自身としては、「FGO」に対してどんな印象をお持ちでしょうか。
私も実際にゲームをダウンロードしてプレイしてみましたが、とてもしっかりしたストーリーラインがあり、しかもキャラクター1人ひとりに深いバックグラウンドがあることに驚きました。
──作品の奥行きに感銘を受けたんですね。ちなみに、ファンタジー作品がもともとお好きだったりはするんですか?
あまり詳しくはないんですが、昔から「ハリー・ポッター」シリーズがすごく好きで、その世界に入り込むような感覚で物語を楽しんでいました。そういう意味では、「FGO」にも少し「ハリー・ポッター」と共通する部分があるように思いますね。
「FGO」を知らない人が聴いても共感できる
──「flowers」の制作はどんなふうに進んだんでしょうか。
まず、歌詞が付く前の段階でメロディを聴かせていただいて、仮歌を入れて。ただ、その時点ではまだそれが「FGO」の曲になるとは知らなかったんです。
──そうなんですか。そのあとで「FGO」タイアップが決まって、それに合わせた歌詞が付いたという順番ですか?
そうです。そうやって楽曲が作り上げられていく過程を、いろんな段階で見ることができたのがよかったなと思っています。
──最初にデモを聴いたときの感想を教えてください。
すごく素敵な曲だと思いました。特に、曲の最後で荘厳なシンバルが鳴っているんですけども、そこがすごくリッチで、ファイナリティな感じがして……気持ちを湧き立たせる曲だなと。
──実際に歌うにあたっては、どんな心構えで臨みました?
何度も詞を読んで、1つひとつの言葉を理解したうえで自分から出てくる思いを足していく、ということを心がけました。私は一応、人生で最初に習得した言語が日本語ではあるんですけど、普段の生活では英語を使うことのほうが多いので、だんだん日本語がわからなくなってきていて。
──なるほど。
なので日本語の曲を歌うときは、いつも必ず言葉の意味を学習して自分の中に定着させてから、歌詞の中にある感情を表現していく。そういうステップを踏んでいます。
──そういう方からすると、おそらく「flowers」の歌詞はけっこう難しいですよね?
はい。「あらたな翳(かげ)を呼び起こした」とか「標(みち)は繋がっている」とか……。
──そのあたりは100%ネイティブの日本語話者でも難しいので大丈夫です。
それならよかったです(笑)。
──漢字以外のところでも、例えば「僕らはなぜ手に入れるため 失うことを選び続けてる」のようなフレーズの場合、言葉の意味はわかったとしても言わんとしていることを理解するのは難しそうな気がするんです。というのも、僕がHanaさんくらいの年齢の頃にこの歌詞を見たら「よくわからないけどカッコいい」くらいで済ませていたと思うんですよね。そのあたりはどんなふうに読み込んでいきました?
「flowers」の歌詞で特徴的だと思うのは、「FGO」の世界をしっかりと描き出していながらも、「FGO」を知らない人が聴いてもまったく違和感なく共感できるところで。そこがすごくスペシャルだなと思っているんです。今おっしゃった「手に入れるため 失うことを選び続けてる」で言えば、自分の人生の中でもそれに当てはまることがある。難しい選択をしなければいけない場面というのは私自身も経験してきているので、それと重ね合わせることができるのが面白いなと思いました。
──なるほど。その照らし合わせの作業は、歌詞全編を通してスムーズにできましたか?
スムーズだったんじゃないかなと思ってます。
楽曲の持つ二面性をよく表している映像
──楽曲が完成しての手応えはいかがですか?
スタジオで音に囲まれて聴いたときはすごく……あの、ユーホリックで。
──ユーホリック?
ユーホリックって、日本語でどう言うのかわからない。なんだろう……どこか違う世界に連れて行かれたような感覚で、すごくスペシャルな曲だなと感じました。
──それが「Memorial Movie 2023」の映像に乗ることで、また違う印象を感じられたのでは?
映像で観たときは、制作スタッフの方のキャラクターへの思い入れの強さがまず伝わってきました。サーヴァントたちのバックグラウンドをしっかり感じられる映像になっていますし。私が特に好きなシーンは、音が消えて手と手が触れるところです。
──楽曲に対する新たな発見などもありましたか?
音源を作っている段階では自分の世界における表現だったものが、映像が付くことによって「FGO」の世界とより一層コネクトできていることを実感できました。あと、切ない場面だけじゃなくてうれしい場面や楽しい場面も描かれているので、この楽曲が持つダブルミーニング、二面性をよく表している映像だなと思います。
──Hanaさんはこの曲でメジャーデビューを果たしたわけですけど、メジャー以前と以後で何か変わったことはありましたか? といっても、まだデビュー日から1週間くらいしか経っていませんが(取材は8月上旬に実施)。
そうですね。まだそんなに「メジャーデビューをした」と実感しきれていないところはあるんですけど。でも、先ほども話に出た「FGO Fes.」の出演日がちょうど「flowers」のリリース日だったので、その日にあれだけの大人数の前で歌うことができたのは貴重な経験だったなと思っています。
──確かに、そういう意味ではわかりやすく規模感の拡大を感じられたかもしれないですね。
はい。聴いてくださる方の顔をたくさん見ることができて、あの日は感謝の気持ちであふれました。
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全部がチャンスだった