ナタリー PowerPush - →Pia-no-jaC←×DE DE MOUSE×渋谷員子「FINAL FANTASY TRIBUTE ~THANKS~」座談会

「FINAL FANTASY」シリーズの記憶と音をたどる

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あの空の色にいまだに憧れを抱いています

DE DE MOUSE 渋谷さんが実際に「FINAL FANTASY」シリーズを手がけられたのはどの作品からですか?

渋谷員子

渋谷 「I」ですね。絵描きは最初、私だけでした(笑)。

HIRO え、お1人でやられていたんですか!?

渋谷 途中でもう1人増えたので実質2人ですが、ほぼすべてをやりましたね。

DE DE MOUSE 「I」で最初の橋を越えるときに絵が出ますよね?

渋谷 はい、それも私が描きました。

DE DE MOUSE 僕はあの絵がものすごく好きで、あの空の色にいまだに憧れを抱いているんです。構図から何から、すべてに感銘を受けた1枚で。僕の中の原体験といっても過言ではないくらいの。

渋谷 ありがとうございます。私もあの絵は好きですね。よく描けていると思います。

──なんと、今回ブックレットの表紙に使われているようです。

「FINAL FANTASY TRIBUTE ~Thanks~」のブックレットの表紙を飾る「FINAL FANTASY I」のワンシーン。

HAYATO あ、本当だ!

DE DE MOUSE そう、これですこれです!

HIRO 素晴らしい。この空の色は俺もはっきり覚えていますね。

渋谷 容量が本当になくて、影絵のような感じに見せるしかなかったんです。あまり凝ったことができなくて。

DE DE MOUSE いや、すごく美しいグラフィックですよ。

渋谷 ありがとうございます。

ガルーダは最高のデキです

──皆さん「III」の思い出が多いようですね。

渋谷 「III」では背景とモンスターを担当していました。

DE DE MOUSE

DE DE MOUSE 僕はガルーダが好きですね。

渋谷 ありがとうございます! 私、ガルーダは最高のデキだったなと今でも思っています。天野喜孝さんの原画があるんですけど、そこからドット絵に落とし込むのは本当に大変な作業でした。あれも2、3色くらいしか使っていないんですよ。限られた中で作ったものとしては、会心のデキだったなと思っています。

DE DE MOUSE 本当にガルーダが強くて、なかなか倒せなかったんですよね。

HIRO そうそう。最終的に全員のジョブを竜騎士にしてジャンプさせて(笑)。

DE DE MOUSE 竜騎士でジャンプするんですけど、それでも回復が間に合わないから白魔道師を1人入れてみて。でも、この白魔道師がすぐ死んじゃうんだよね……。

HIRO そうそう、「かみなり」にやられちゃう。

DE DE MOUSE とにかくレベルを上げてたな……。

俺らの世代には「どストライク」の3曲

──では、そろそろ曲のお話を聞いていこうと思います。シリーズで特に印象に残っている曲はなんでしょうか。

HIRO

HIRO やっぱり「III」の曲が印象的ですよね。なので「Love SQ」(2009年11月発売)でDE DE MOUSEさんが「悠久の風」を選ばれたときは「やられた!」って思いました(笑)。

DE DE MOUSE すいません……。

HIRO いやいやいや、すごく大好きな曲だったので!

DE DE MOUSE 僕も一番好きな曲が「悠久の風」だったので、やらせていただけて光栄でした。

──→Pia-no-jaC←のお二人は、「Love SQ」でバトルメドレーを披露されています。「ビッグブリッヂの死闘」「妖星乱舞」「片翼の天使」という名曲ぞろいでしたが、やはり印象に残っている曲ですか?

HIRO やっぱり→Pia-no-jaC←らしさを出せるのはバトル曲だと思うので、じゃあ何をやろうかという話になったときに、個人的な趣味丸出しだったんですけど、印象深いこの3曲を選びました。俺らの世代にはどストライクですよね。タイトルを聞いただけでワクワクするような3曲です。

──ボス戦の曲をメドレーで聴くと、めちゃめちゃテンションが上がりますよね! 特に「ビッグブリッヂの死闘」は耳に残りますし、メドレーアレンジで最後のほうにも使われていたのは「やられた!」って思いました。

HIRO ありがとうございます! 俺たちとしてもアレンジのやりがいがあるというか、いい意味で壊しがいがありました。

あの曲って弾くとこんなに難しいんだ!

──→Pia-no-jaC←さんは、やっぱり荒々しい感じのバトル曲が合いますね。それをメドレーでつないでいく技術が素晴らしいです。

左からHAYATO、HIRO。

HAYATO 見せたいところや聴いてもらいたいところは、やっぱり俺らのハイパーな部分なので、それを一番出せるのはバトル曲かなと。それをメドレーにして、1曲に仕上げてみました。つなぎ方にもストーリーを意識したり、テクニック的なところで苦労をしたりしましたね。「あの曲って弾くとこんなに難しいんだ!」って(笑)。

──そこで今回の「FINAL FANTASY TRIBUTE ~THANKS~」ですが、「VII」より「更に闘う者達」、「XIII」より「閃光」、「X」より「襲撃」という、PlayStationフォーマット以降のタイトルから選曲されています。

HIRO 前回の3曲が俺ら世代に対してどストライクだったので、今回はもう少し若い世代に対してどストライクなものを作ろうかなと。

──やはりそこを意識されて。

HIRO やっぱり25周年ということで、原点に戻るか、それとも先を見ていくかどちらにしようかと考えたときに、先を見ていきたいなと思いまして、「VII」以降の新しい作品からバトル曲を選びました。

──やはり比較的新しいタイトルは耳に残っていますね。この3曲を選んだ理由は?

HIRO 実は裏テーマとして、新しいハードで一発目に出たタイトルから選んでいます。そこからさらにどのバトル曲がいいかを検討して決めました。

──「VII」は、もう鉄板の曲ですよね。

HIRO 最初の「タタタター」っていうところだけで、聴いている人が「ハッ!」ってするような力を持っている曲なので、それをHAYATOの左手でドカーンっとインパクト強くいきました!

HAYATO 最初は難しいリフを片腕だけでどうやってやろうかというところから考えました。→Pia-no-jaC←らしく、どんどんメロディを変化させていく中で左手のベースラインをどう動かしていこうか、とか。原曲は大切にしながらも、ちょっとずつメロディを壊していくことで、聴いていてもきっと楽しくなるんじゃないかなと思い、そのように仕上げています。

→Pia-no-jaC← 最新アルバム「EAT A CLASSIC 4」2012年12月5日発売 Peaceful Records
初回限定盤 [CD+DVD] XQIJ-91005 2300円
初回限定盤 [CD+DVD] XQIJ-91005 2300円
通常盤 [CD] XQIJ-1008 1800円
→Pia-no-jaC←(ぴあのじゃっく)

HAYATO(Piano)、HIRO(Cajon)の2人で構成されるインストゥルメンタルユニット。名前の由来は左から読むとピアノ、右から読むとカホンとなる。鍵盤と打楽器という至ってシンプルな編成ながら、重厚かつ多彩な音を鳴らすのが特徴。その独自の音楽性が各方面から注目を受け、ディズニーやスクウェア・エニックス、ショパンなど多数のトリビュートアルバムに楽曲提供。2010年発売の嵐のアルバム「僕の見ている風景」では、二宮和也から熱いオファーを受けゲストミュージシャンとして参加した。さらに宝塚歌劇団への楽曲提供、ラジオのジングル制作など幅広い活動を展開。ライブではオリジナル楽曲やクラシックなどのカバーを武器に、迫力満点のパフォーマンスを披露し、国内外の幅広い層から絶大な支持を受けている。2012年3月にオリジナルアルバム「暁」、7月には葉加瀬太郎とのコラボレーションアルバム「BATTLE NOTES」を発表。同年12月にクラシックのカバーアルバム「EAT A CLASSIC 4」をリリースした。

→Pia-no-jaC←×バニラビーンズ リサ対談

DE DE MOUSE(ででまうす)

遠藤大介によるソロユニット。緻密に重ね合わせたオリエンタルなメロディとドリーミーなサウンドで、幅広い層からの人気を獲得している。自主制作で発売したCD-R「baby's star jam」が各方面で話題になり、2007年1月にExt Recordingから1stアルバム「tide of stars」を発表。異例の好セールスを記録し、同年7月には早くもリイシュー盤「tide of stars SPECIAL EDITION」がリリースされた。2008年3月にavex traxへのメジャー移籍を発表、5月にメジャー第1弾となるアルバム「sunset girls」を発売。その後自主レーベル「not records」を設立し、レーベル第1弾となる4thアルバム「sky was dark」を2012年10月に発売した。

DE DE MOUSE 最新アルバム「sky was dark」インタビュー

渋谷員子(しぶやかずこ)

旧スクウェア時代から現在のスクウェア・エニックスに至るまで、ゲームのキャラクターデザインなどを手がけてきたグラフィックデザイナー。主に「FINAL FANTASY」シリーズの「I」から「VI」でドット絵のキャラクターデザインなどを担当する。近年では、モバイル事業部アートディレクターとしてモバイル用タイトルのデザイン監修やドット絵キャラを描き続けている。