ナタリー PowerPush - →Pia-no-jaC←×DE DE MOUSE×渋谷員子「FINAL FANTASY TRIBUTE ~THANKS~」座談会
「FINAL FANTASY」シリーズの記憶と音をたどる
© SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. Character Graphic : Kazuko Shibuya
日本を代表するRPG「FINAL FANTASY」シリーズの25周年を記念したアルバム「FINAL FANTASY TRIBUTE ~THANKS~」がリリースされた。このアルバムには「FINAL FANTASY」シリーズをリスペクトする多くのアーティストが参加しており、それぞれが思い入れのあるシリーズ中の楽曲を、独自の解釈でアレンジしている。
今回ナタリーでは、このトリビュートアルバムに参加している→Pia-no-jaC←のHAYATO(Piano)とHIRO(Cajon)、DE DE MOUSEに加えて、「ドット絵の匠」ことスクウェア・エニックスのデザイナー・渋谷員子(しぶやかずこ)を迎えて、「FINAL FANTASY」シリーズを振り返る特別座談会を実施。シリーズの思い出や今回収録されている曲の制作秘話、そして旧スクウェア時代の貴重な話など、内容盛りだくさんでお届けしていく。
※以下「FINAL FANTASY」のナンバリングタイトルは「I」~「XIII」というように、タイトルの数字表記のみで記載していく。
取材・文 / 古川朋久 撮影 / 山崎あゆみ
こんなキレイな方がゲームを作っているなんて
──本日は「FINAL FANTASY」好きのアーティストの方々だけでなく、渋谷さんにも座談会にご参加いただけて光栄です。
DE DE MOUSE 本当にそうですよね。僕は子供の頃ファミコンの「III」を初めてプレイしたときに、ジョブのドット絵の緻密さに衝撃を受けて、よくノートに落書きをしていたんです。自分なりのジョブを考えたりして。そのデザインをされていた方が、今、僕の隣に座っていて、しかも女性の方だったとは……。
HIRO 僕も今日初めてお会いして「え?」ってなりました。
渋谷員子 よくビックリされますね。
DE DE MOUSE こう言ったらなんですけど、もっとボサボサで「いかにも!」っていう感じの人がグラフィックを担当されているという勝手なイメージがあったものですから(笑)。こんなキレイな方がゲームを作っているなんて想像もできませんでしたよ。
渋谷 ありがとうございます(笑)。
──渋谷さんは、旧スクウェアの初期の頃からグラフィックを担当されているとお聞きしました。スクウェアでお仕事をすることになった経緯は?
渋谷 その頃のスクウェアは、まだPC-88とか98の時代だったんですけど、ファミリーコンピュータという家庭用ゲーム機もやっていくことになりまして。そこでデザイナーの求人が出ていたので応募したという経緯ですね。
──でもゲームでキャラクターをデザインしていくのって、イラストを紙に描いていくのとは勝手が異なると思いますが。
渋谷 もう全然わからなかったですよ。最初の頃はPCゲーム「アルファ」の説明書で挿絵を描いていましたね。実際にゲームキャラクターを初めて作ったのは「キングスナイト」でした。
HIRO おお! 「キングスナイト」でしたか!
渋谷 MSX版だったと思いますが。そこで初めて16×16の範囲の中で絵を描くということを覚えていきました。
──いわゆるドット絵ですね。
渋谷 1色とか2色で描いていくんですけど、今まで勉強してきたことが何も応用できないんですよ。なんで私、こんな絵を描かなきゃいけないんだろうって(笑)。
あー、ブラキオレイドスですね
──皆さん、最初にプレイされた「FINAL FANTASY」シリーズはなんでしょうか?
HIRO 俺はファミコンの「III」ですね。友達の家でたまたま「III」があってプレイさせてもらったら、めちゃめちゃ面白くて。すぐに買いに行きました。そこからスーパーファミコンのシリーズをプレイして、ちょっと戻って「I」と「II」をやった感じです。
──それまでもいろいろなRPGはあったと思いますけど、「III」のどこに惹かれたんですか?
HIRO 「III」はジョブチェンジのシステムが新しくて、とにかく新しいジョブが手に入ると試して、組み合わせを楽しんでいましたね。子供ながら、のめり込むといろいろ試したくなるタイプだったので(笑)。
HAYATO 僕は「VI」が最初にプレイしたシリーズで、とても好きでしたね。でもうちの家、めちゃめちゃ厳しくて、ゲームなんてほとんどできないような家でした。
──「ゲームは1日1時間」とかですか?
HAYATO もっと厳しいですね。週に1回、毎週水曜日の18時から18時半まで。だからRPGなんてまったく進まない(笑)。セーブポイントにすら行けない(笑)。
──「VI」もやり込み要素が多いし、プレイし始めたら結構時間がかかりますよね。
HAYATO かかりましたねー。
──世界が崩壊してから、アイテム集めとか、仲間探しとか、やり始めるといろいろなものが出てきていくらでも遊べました。なんか恐竜の強い敵がレアなアイテム持っていたり……。
HIRO あー、ブラキオレイドスですね。
HAYATO すごいな、お前(笑)。
HIRO いやあ、ここらへんは本当にやり込んでいる(笑)。
──スリースターズっていうレアアイテムを持っていて、倒してもなかなか落とさないから何度もチャレンジしていましたね。
HIRO 「VI」は魔石の使い方もいろいろ試しましたよ。オーディンの魔石を装備しないと素早さのパラメータがレベルアップとともに上がらないので、この魔石を入手するまでにあまりレベルを上げすぎちゃいけない、とか。そういうのをアホみたいにやっていましたね。
──当時の記憶がだんだんよみがえってきますね。最初のプレイでシャドウを見殺しにしてしまったり(笑)。
HIRO あれはね、普通わかんない(笑)。
友達がラグナロクを2本持っていた
──ではDE DE MOUSEさんは、いかがでしょうか。
DE DE MOUSE 僕もHIROくんと同じで「III」が初めてでした。最初はRPGの面白さがまったくわからなかったんですけど、友達が「III」をプレイしているのを見て、キャラクターが武器でめちゃくちゃ斬っているアクションがあるじゃないですか? あれにすごい衝撃を受けまして。「16回斬るってどういうことだよ!」みたいな(笑)。
一同 あはははは!(笑)
DE DE MOUSE 本当にあのアクションにびっくりして。「これは面白いかもしれない」と、だんだんRPGというゲームジャンルを理解できるようになりました。そういう意味でも「III」は記念すべきタイトルです。もちろん裏技でアイテムを増やしていました(笑)。
HIRO ポーションを使った裏技ありましたね!
DE DE MOUSE 友達がラグナロクを2本持っていたのが衝撃的で「それ、どうやるんだよ!」って(笑)。まあバグ技なんですけどね。
- →Pia-no-jaC← 最新アルバム「EAT A CLASSIC 4」2012年12月5日発売 Peaceful Records
- 初回限定盤 [CD+DVD] XQIJ-91005 2300円
- 初回限定盤 [CD+DVD] XQIJ-91005 2300円
- 通常盤 [CD] XQIJ-1008 1800円
→Pia-no-jaC←(ぴあのじゃっく)
HAYATO(Piano)、HIRO(Cajon)の2人で構成されるインストゥルメンタルユニット。名前の由来は左から読むとピアノ、右から読むとカホンとなる。鍵盤と打楽器という至ってシンプルな編成ながら、重厚かつ多彩な音を鳴らすのが特徴。その独自の音楽性が各方面から注目を受け、ディズニーやスクウェア・エニックス、ショパンなど多数のトリビュートアルバムに楽曲提供。2010年発売の嵐のアルバム「僕の見ている風景」では、二宮和也から熱いオファーを受けゲストミュージシャンとして参加した。さらに宝塚歌劇団への楽曲提供、ラジオのジングル制作など幅広い活動を展開。ライブではオリジナル楽曲やクラシックなどのカバーを武器に、迫力満点のパフォーマンスを披露し、国内外の幅広い層から絶大な支持を受けている。2012年3月にオリジナルアルバム「暁」、7月には葉加瀬太郎とのコラボレーションアルバム「BATTLE NOTES」を発表。同年12月にクラシックのカバーアルバム「EAT A CLASSIC 4」をリリースした。
DE DE MOUSE(ででまうす)
遠藤大介によるソロユニット。緻密に重ね合わせたオリエンタルなメロディとドリーミーなサウンドで、幅広い層からの人気を獲得している。自主制作で発売したCD-R「baby's star jam」が各方面で話題になり、2007年1月にExt Recordingから1stアルバム「tide of stars」を発表。異例の好セールスを記録し、同年7月には早くもリイシュー盤「tide of stars SPECIAL EDITION」がリリースされた。2008年3月にavex traxへのメジャー移籍を発表、5月にメジャー第1弾となるアルバム「sunset girls」を発売。その後自主レーベル「not records」を設立し、レーベル第1弾となる4thアルバム「sky was dark」を2012年10月に発売した。
渋谷員子(しぶやかずこ)
旧スクウェア時代から現在のスクウェア・エニックスに至るまで、ゲームのキャラクターデザインなどを手がけてきたグラフィックデザイナー。主に「FINAL FANTASY」シリーズの「I」から「VI」でドット絵のキャラクターデザインなどを担当する。近年では、モバイル事業部アートディレクターとしてモバイル用タイトルのデザイン監修やドット絵キャラを描き続けている。