FANTASTIC◇CIRCUSインタビュー|“LAST”になるかもしれないツアーへの覚悟 (2/2)

想定外の出来事も受け止め、進んでいる今

──2022年にFANTASTIC◇CIRCUSとして活動を始めてから2年以上が経ちましたが、当初思い描いていたイメージから変化はありましたか?

石月 これはライブのMCでもよく言っていることなんですけど、昨今は自分がリスペクトしていたアーティストが亡くなることも増えましたし、自分たちもそういう年齢に差しかかってきたこともあって、人生に後悔を残したくないという思いがどんどん強くなっていて。それでkazuyaやSHUN.に声をかけたわけですけど、その後は偶然が偶然を呼んで、2005年のFANATIC◇CRISISのラストライブと同じ日(5月14日)に日比谷野音が取れたところからすごく順調に活動できていたと思います。kazuyaもSHUN.も別のバンド(THE MICRO HEAD 4N'S)をやっていたし、僕もソロ活動をしていたので、FANTASTIC◇CIRCUSを続けている中で気が変わるかもしれないし、何か違うなと思ったら、辞めるっていうは言い方あれだけど、1年ごとに考え直そうっていうスタンスでいたんです。だけど、1年活動を続けてみて、「ツアー、楽しかったね。じゃあ来年もやろう」っていうことの繰り返しで今年まで来て、2024年は年末まで駆け抜ける予定でいました。

──だけど、予期せぬことが起こった。

石月 はい。SHUN.の病気は、正直想定外でした。彼がどのタイミングで復活できるのか、もしくは復活できないのかってことは、今の僕ら的にも一番ナイーブなところで。彼自身は「決まっているスケジュールに関しては迷惑をかけるけど、このまま続けてほしい」と言ってくれたので、今年はこの体制で……今年中に復活してくれたら、それはそれでうれしいですけど、僕が知っている限りではそう簡単なことではない。それに、SHUN.にプレッシャーを感じてほしくはないので、彼がやりたくなったらやればいいっていうスタンスでいようと、kazuyaとは話していて。9月4日に新宿ReNYで行うライブは「PERFECT UNSTABLE SHOW」(不完全に完璧なショー)というタイトルで、自分たちを励ますような気持ちで臨みますが、応援してくださるお客様に対しては100%喜んでもらえるものを見せようという覚悟でいます。気持ちとしては、FANTASTIC◇CIRCUSはSHUN.やファンのみんなも含めて、みんなが帰ってこられる場所でありたいなと思っているんですけど……現実的には来年以降のスケジュールは本当に白紙のまま。未来が見えないっていう意味では不安しかないですけど、インディーズ縛りのライブハウスツアー「改 / 残像60min EDITION」で刺激を受けつつ、年末のホールツアーでひとまず完結という思いで、最後まで駆け抜けたいと思っています。

石月努(Vo) 

石月努(Vo) 

濃厚な60分になるライブハウスツアー

──9月から12月にかけて2つのツアーが控えているわけですが、まずは「改 / 残像60min EDITION」ですよね。大阪、愛知、東京の各公演にはそれぞれ「改 / 太陽の虜」「改 / MASK」「改 / MARBLE」と、インディーズ時代に発表された3枚のアルバム名がサブタイトルに付けられていて、各会場で1日2公演。かなり濃厚な内容が予想されます。

kazuya いったい誰が考えたんだろうっていう(笑)。

石月 インディーズの頃はもちろんワンマンもやっていたんですけど、イベントとか対バンとかも多くて、だいたい持ち時間って1バンド1時間ぐらいなんですよね。だから、その頃の気持ちを思い出しながら、逆に60分でやれることってなんだろうなと。そこを起点に内容を練っているところです。まだリハーサルにも入っていないので、アレンジに関してはこれからが大変なんですけどね。あと、僕はライブ前にあんまり怖気付かないタイプなんですけど、このツアーに関しては今までで一番怖気付いている(笑)。インディーズ時代はまだ10代だったから、歌も下手くそだった。でも今のほうがいろんな意味で怖いんですよ。

kazuya でも、10代で作った曲をこのメンバーでまたプレイする未来があるなんて想像もしていなかったので、人生って面白いもんだなと思いますし、僕的にはけっこう楽しみなんですよね。「青いでしょ?」っていう当時の初々しさを、なるべくそのまま表現したいと思っています。

石月 あの頃はラクリマともSIAM SHADEとも対バンしてるから、そのメンバーと一緒にやれるっていうのも面白いですね。

──特に1994年発表の「太陽の虜」は、1997年のメジャーデビュー以降と比べてダークな曲が多いので、それを今の皆さんがどう表現するのかも気になります。

kazuya あの若さだからこその勢いもありましたしね。それこそ「黒い太陽」みたいな曲はもう作れないですよ。すごいなと思いますし、10代の自分を本当に褒めてあげたい。

kazuya(G)

kazuya(G)

石月 今のFANTASTIC◇CIRCUSを応援してくださっている方って、メジャー以降のFANATIC◇CRISISから入った方が多いと思うんです。逆にインディーズ時代、それこそ「黒い太陽」とかそのへんの曲に関しては同世代よりちょっと下の世代のバンドマンがみんな「コピーしてました!」って言うんですよ。ちょっと奇抜だけど、バンドマンには人気があったのかもしれないね(笑)。

──それをLEVINさんとNATCHINさんによるリズム隊と、今の石月さんとkazuyaさんが表現するわけですから、観客側としては楽しみでしかないんですよ。

kazuya 今のこのメンバーで演奏するからこそのカッコよさは、絶対にあると思いますよ。でも、それを1日に60分2公演っていうのは……もう大人なのにね(笑)。とはいえ、こういうことってもうそんなにやる機会もないと思うんです。年々そういうことに対して、体力的にも限界が近付いてきてるわけだから、これはこれで楽しもうと思っていますし、すごくレアなので観ておいたほうがいいと思いますよ。

石月 特に今年は「進化」をテーマに掲げて活動しているから、こういう挑戦もアリなのかなっていう。昨年から今年にかけてFANATIC◇CRISIS時代の再録ベストを2枚出したわけですが、その活動のひと区切りに向けた、もう1つの物語として楽しんでもらいたいですね。

現時点で“ラスト”のホールツアーに向けた思い

──そして、先ほどから何度か話題に上がっている年末のホールツアーが、11月から12月にかけて全国3都市で開催される「THE.LAST.INNOCENT」です。ツアータイトルはかつてのアルバム「THE.LOST.INNOCENT」(1999年発表)にもちなんだもので、これまでのお話を踏まえると「LAST」という言葉がより重く響くわけですが……。

石月 ホールツアーの3本に関しては、僕がEX THEATERですごくやりたかったというのが大きくて。かつ、約3年活動してきて、ひとまずここでラストというイメージがあるので、ベストオブベストのFANTASTIC◇CIRCUSを期待してほしいです。

kazuya 本来だったらこの時期は「来年はこういうことやろうね」なんてことをメンバー同士で話していると思うんですけど、本当に何も決まっていないのは僕も寂しい。もし最悪なことが起きたら……ということも2人で話し合ってはいるんですけど、僕らなりにその覚悟もすでにできていて。そういう話ができたことはよかったなと思ってますけど……難しいですよね。続けられるのなら続けたいんですけど、今のこの気持ちのままやるっていうのもどうなんだろうと。だったら、ここでひとつ完結させなきゃいけないんじゃないのかとも思うんです。今決まっている今年のスケジュールっていうのは、FANTASTIC◇CIRCUSにとって第一章なのか何かわかんないですけど、止めるにしても進むにしても必要なことだと思うので、いつも以上にがんばらなきゃいけないという気持ちで取り組もうと思っています。

石月 もしかしたら、明日になったら未来が変わるかもしれないし、kazuyaが言ったみたいに最悪なこと……もう3人でステージに立つ姿を見られないかもしれない。こればかりは本当に誰にもわからないじゃないですか。それでも、今もライブを楽しみにしてくださっている方がたくさんいる。最近、「FANATIC◇CRISISが活動していた頃は小学生とか中学生でライブに行けなかったけど、今は大人になって余裕もできたので、FANTASTIC◇CIRCUSのライブに行くことができる。あの頃の曲を生で聴ける」という話をファンの方からよく聞くんですけど、そういう声が今の僕らの大きな原動力になっていて。だから、今年いっぱいは絶対にがっかりさせないライブをやりますし、みんな目に焼き付けてほしいなって思います。

──なるほど……。

石月 あと、これは僕自分の問題なんですけど、FANATIC◇CRISISのラストライブが僕個人、ずっと心残りだったんです。kazuyaやSHUN.にはずっと話していて、「終わりよければすべてよし」ってよく言うけど、僕の中では全然よしじゃなかったんですよね。それで、人生において後悔したくないということで、2人の協力のもとFANTASTIC◇CIRCUSを始めたんです。今年の年末は僕の中でそのときの気持ちが解消されるといいなと思っていて。そのためにもラストのEX THEATERまで、残されたライブ1本1本を大事にしていきたいです。

kazuya ギタリストとしては、準備としてまずライブで流すSHUN.のギターパートをレコーディングするところから始めなきゃいけないのでなかなか大変ですけど、それは相方のためにも背負っていかなきゃいけないことですしね。僕は「このバンド、やれるなら一生やりたいよね」なんてよく話しているんですけど、それでもこんな想定外のことが起こってしまうわけで。僕も年齢的に、この先どれくらいライブを続けられるのかわからないですけど、だからこそ1本のライブが本当に愛おしいんです。だって、2022年の復活からライブ何本やったかわからないですけど、どれも忘れられない瞬間ばかりで。きっとここからのライブも、そんな大切な瞬間がたくさん生まれると思うんです。間違いなく12月14日のEX THEATERでひと区切りにはなるんで、ネガティブな思いは一切なしに、僕はFANTASTIC◇CIRCUSとしての一瞬一瞬を最後まで、ファンの人たちと楽しみたいです。

石月 前向きな話ができなくて本当に恐縮なんですけど、来年とか再来年とか僕らが生きている間に、また新しいスケジュールを発表したいし、それが実現するように願っています。さっきFANATIC◇CRISISのラストライブの話をしましたけど、今回もある意味ラストライブになる可能性を秘めているわけじゃないですか。僕は二度も後悔はしたくないので、FANATIC◇CRISISからFANTASTIC◇CIRCUSに転生したことの意味を、最後にしっかり見せたいと思います。

FANTASTIC◇CIRCUS

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公演情報

Live house tour 2024【改 / 残像60min EDITION】

  • 「改 / 太陽の虜」
    2024年9月28日(土)大阪府 OSAKA MUSE
    [1部]OPEN 15:00 / START 15:30
    [2部]OPEN 17:30 / START 18:00
  • 「改 / MASK」
    2024年9月29日(日)愛知県 ElectricLadyLand
    [1部]OPEN 15:00 / START 15:30
    [2部]OPEN 17:30 / START 18:00
  • 「改 / MARBLE」
    2024年10月5日(土)東京都 Veats Shibuya
    [1部]OPEN 14:45 / START 15:30
    [2部]OPEN 17:30 / START 18:15

HALL tour 2024【THE.LAST.INNOCENT.】

  • 2024年11月10日(日)大阪府 BIGCAT
    OPEN 16:30 / START 17:00
  • 2024年11月16日(土)愛知県 DIAMOND HALL
    OPEN 16:30 / START 17:00

  • 2024年12月14日(土)東京都 EX THEATER ROPPONGI
    OPEN 16:30 / START 17:30

チケット先行予約はこちら

受付期間:2024年6月28日(金)18:00~7月7日(日)23:59

プロフィール

FANTASTIC◇CIRCUS(ファンタスティック・サーカス)

石月努(Vo)、kazuya(G)、SHUN.(B)からなるロックバンド。2019年11月に前身バンド・FANATIC◇CRISISから“転生”する形で活動を開始する。2022年5月に東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)でのライブを成功に収め、2023年3月にFANATIC◇CRISISの結成30周年を記念したリテイクベストアルバム「TENSEISM BEST SINGLES【1997-2000】」をリリース。2024円2月にはその続編となる「TENSEISM BEST SINGLES 【2001-2004】」を発表した。SHUN.の活動休止という状況の中、バンドはサポートメンバーを迎えて9月にライブハウスツアー「改 / 残像60min EDITION」、11月から「THE.LAST.INNOCENT.」を開催。12月14日の東京・EX THEATER ROPPONGI公演をもってファイナルを迎える。