FANTASTIC◇CIRCUSインタビュー|“LAST”になるかもしれないツアーへの覚悟

FANTASTIC◇CIRCUS(ファンタスティック・サーカス)は、前身バンドであるFANATIC◇CRISISの石月努(Vo)、kazuya(G)、SHUN.(G / 活動休止中)の3人とサポートメンバーで構成されているロックバンド。2022年にはFANTASTIC◇CIRCUSは、FANATIC◇CRISISの結成30周年を記念してワンマンライブを行うなど、前身バンドの魂を引き継いで活動している。2023年3月、2024年2月にはFANATIC◇CRISIS時代の楽曲のセルフカバーベストアルバムを発表した。

そんなFANTASTIC◇CIRCUSが9月からライブハウスツアー、11月からホールツアーを開催。12月14日の東京・EX THEATER ROPPONGI公演で一旦の“LAST”を迎えることとなる。音楽ナタリーでは石月とkazuyaにインタビュー。FANATIC◇CRISIS時代からブレない信念、活動休止中のSHUN.への思いなど、来年以降のスケジュールが白紙という状況の中、ツアー開催に向けて今の素直な思いを語ってもらった。

取材・文 / 西廣智一撮影 / 星野耕作

公演情報

Live house tour 2024【改 / 残像60min EDITION】

(※各公演1日2部制)

  • 「改 / 太陽の虜」
    2024年9月28日(土)大阪府 OSAKA MUSE
  • 「改 / MASK」
    2024年9月29日(日)愛知県 ElectricLadyLand
  • 「改 / MARBLE」
    2024年10月5日(土)東京都 Veats Shibuya

HALL tour 2024【THE.LAST.INNOCENT.】

  • 2024年11月10日(日)大阪府 BIGCAT
  • 2024年11月16日(土)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2024年12月14日(土)東京都 EX THEATER ROPPONGI

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受付期間:2024年6月28日(金)18:00~7月7日(日)23:59

FANATIC◇CRISIS時代からの思いはブレず

──FANTASTIC◇CIRCUSは昨年から今年にかけて、FANATIC◇CRISIS時代の楽曲を再録したアルバム「TENSEISM BEST SINGLES 【1997-2000】」「TENSEISM BEST SINGLES 【2001-2004】」を立て続けにリリースしました。当時FANATIC◇CRISISの楽曲を聴いてきた身としては、どの曲もまったく色褪せていないことに驚きまして。

石月努(Vo) 聴き比べると再録バージョンは今の音になっているけど、フレーズを変えたり変にリアレンジしたりしていなくて、言ったらほぼコピーなんですよね(笑)。メンバーとしては聴いたときに「懐かしくて新しい」ものを目指して、昨年の「TENSEISM BEST SINGLES 【1997-2000】」に取りかかったんですけど、そこでの経験を生かしつつの「TENSEISM BEST SINGLES 【2001-2004】」だったので、すごくいい形で制作できたんじゃないかな。

kazuya(G) 僕らとしては今おっしゃっていただいたことを狙っていたので、そう感じてもらえたのはすごくうれしいというか、ちゃんと伝わっているんだなという喜びがあります。

石月 FANATIC◇CRISIS時代からより多くの方に曲が届いてほしいという思いが強くて、ある種の大衆性という部分がブレることなかったからこういう結果になっているのかもしれませんね。

FANTASTIC◇CIRCUS

FANTASTIC◇CIRCUS

──FANATIC◇CRISISが活動していた1990年代後半から2000年代前半は、今に続くJ-ROCKの基盤が確立されたタイミングでもありますよね。

石月 そうですね。そもそも僕らが活動を始めた頃はヴィジュアル系なんて言葉もなかったし、僕とkazuyaにとってはTM NETWORKが大好きだったという共通点が大きくて。だから、メジャーデビューしてからも……言い方は悪いですけど、戦うべき相手はヴィジュアル系のシーンではなくて、当時ヒットチャートをにぎわせたような人たちだという意識でやっていたので、それが今につながっているんでしょうね。

──今年3月には「TENSEISM BEST SINGLES 【2001-2004】」を携えたワンマンライブがZepp Shinjukuで開催されました。SHUN.さんがアーティスト活動を休止したため、石月さんとkazuyaさんにサポートメンバーを迎えた形での初ライブでもありました。

石月 SHUN.が体調不良ということで、治療に専念するためにお休みに入ったんですけど、当日はSHUN.のレコーディングデータをアンプから流すことで、結果として彼もライブに参加している状態で実施することができた。不完全な形ですけど、彼が戻ってこれる場所をしっかり守っていかないといけないなっていう意識が2人の中にあったので、当日は全力でやりました。

kazuya 正直、すごい不安でしたよ。SHUN.は僕が17歳ぐらいの頃からずっと相方としてやってきたわけだから、シングルギターの自分はどういう立ち位置に行けばいいのかわからなくて。それに、相方はミスんないわけじゃないですか(笑)。

石月 レコーディングデータだからね(笑)。

kazuya あの日のメンバーの中で一番演奏がうまいわけですよ。しかも、シングルギターになって最初の大きな舞台だったので、かなり胃がキリキリしました。通常のライブよりも完璧でいなきゃいけないので、過去最高に下準備をしましたし、かなり神経質になりました。でも、終わったらお客さんやいろんな方から「すごくよかったよ!」と言ってもらえて、正直ホッとしました。

石月 それに、FANATIC◇CRISISの曲を何十年も前から聴いている人に、僕たちが今も現役であることを示さないと失礼にあたる。そのために努力することはいとわないし、過去にタイムスリップしたぐらいのパフォーマンスを見せたいと思って、僕はFANTASTIC◇CIRCUSと向き合っています。

石月努(Vo) 

石月努(Vo) 

──「TENSEISM BEST SINGLES 【2001-2004】」に収録された楽曲は、お二人が20代半ばから後半にかけてという、ミュージシャンとしてどんどん脂が乗っていく時期に書いたもの。それを20年近く経ち、改めて今の表現力や技術で歌ったり演奏したりすることで新たな発見はありましたか?

石月 たくさんありました。僕はFANATIC◇CRISISの頃、「この曲とこの曲は似ている」とかそういうのが嫌で、常に新しいチャレンジをすることに必死で。だけど、その当時は実力が追い付いていなかったから若さというエネルギーで突き進んでいたところもあった。そういう楽曲を客観的に見直していくわけですが、今はリズム隊をLEVIN(Dr / ex. La’cryma Christi)さんとNATCHIN(B / ex. SIAM SHADE)さんにお願いすることで、当時は16ビートを意識したグルーヴじゃなかったけど、改めて紐解いてみたら16ビートだったことに気付かされたりして。

kazuya 経験を積んだことで知識も増えたから、「これ、本当はこういうことをしたかったんでしょ?」ということを今はちゃんと表現できて、楽曲のよさをさらに強められるようになった。FANATIC◇CRISIS時代の僕は基本的にメロディとか音符の人間だったので、歌詞よりも音のほうが気になっちゃうタイプだったんです。でも今聴くと歌詞の深みが本当にすごくて、改めて「努はあの年齢の頃によくこういう歌詞が書けたな」って思うんです。20代前半とか半ばぐらいだからもっとチャラついてたり言葉が薄かったりしてもいいはずなのに、「なんだこの説得力は?」みたいな。当時からすごく言葉に力を持っている表現者だったんだなと、驚かされますね。

kazuya(G)

kazuya(G)

石月 ちょっと褒められて気持ち悪いですけど(笑)、僕の中ではkazuyaの魅力は「火の鳥」のイントロを筆頭とした奇想天外なフレーズ力。今でも覚えているのが「人生ゲーム」(2001年発売のアルバム「POP」収録曲)に、ゲームオーバーのときによく流れるメロディ(ショパン「ピアノソナタ第2番変ロ短調作品35」の名フレーズ)を取り入れたりして、あれは初めて聴いたときに「すげえ!」と思いました。一方で、SHUN.に関しては奇想天外とは真逆で、わりとベーシックな立ち位置が求められていたところがあるかもしれないです。そういう意味では、ライブの話に戻るとベーシックがレコーディングデータだから(笑)、完成度という意味では今回は高かったのかもしれないです。

kazuya そうだね(笑)。リズムも完璧だし。