ナタリー PowerPush - LUNA SEA×famima.com
メンバー公認ギターフィギュア制作の裏側に迫る
今年5月29日に結成25周年を迎えたLUNA SEAがfamima.comとのコラボレーションにより、25周年記念オリジナルグッズをオフィシャルショップにて販売開始。ナタリーではこのオリジナルグッズの中からINORAN、SUGIZO、Jのギター&ベース公式フィギュアに着目し、同フィギュアを制作した株式会社ミッドレンジの中伸介にギターフィギュアの成り立ちからLUNA SEAモデルのフィギュアを制作するまでの話を聞いた。
取材・文 / 西廣智一 インタビュー撮影 / 小坂茂雄
開発者インタビュー
スタートは「BECK」のギターフィギュア
──ギターのミニチュアフィギュアを作ろうと思った最初のきっかけを教えてください。
私は以前、メディアファクトリーという会社で子供向けのトレーディングカードゲームやキャラクターグッズを作ってたんですけど、大人向けのアイテムを作りたいなと常々思っていたんです。それでいろいろ考えていくうちに、「そういえば音楽系のフィギュアって日本にあまりないな」という結論にたどり着いて。当時はチョコエッグから始まった食玩ブームの流れがあって、コンビニにもそういった食玩コーナーが設けられていて、だったらそこで展開できるようなアイテムを作っていきたいと会社に提案したのが始まりです。それが7、8年前の話ですね。で、その頃マンガ「BECK」が大ヒットしてたんですけど、作中に登場するギターをフィギュアにできないかと思いついたんです。食玩サイズなのでサイズは12分の1、大体10cm前後で、発売したところヒットしたんですよ。そこから「のだめカンタービレ」や「けいおん!」といった音楽系のアニメやマンガでシリーズ化していきました。
──現在のギターフィギュアシリーズは、そういった経験にもとづいて作られていると。
そうですね。そこからギターフィギュアというものに対する知名度も上がってきたので、もっとリアリティを追求しようとサイズを8分の1まで大きくして、さらにクオリティの高いフィギュアを作っていくことにしたんです。それが「THE GUITAR LEGEND」シリーズで、ZEMAITISやGRETSCH、Ovation、Fenderのギター、そしてアーティストものとしてhideさんのオリジナルギターをフィギュア化していきました。
──「BECK」や「けいおん!」といったキャラクターものだと原作のファンも購入すると思いますが、こういった本格的なギターフィギュアの場合はそうもいかないですよね。勝算はあったんですか?
そうですね。キャラクターグッズはどうしても旬な時期が限定されますが、世界的ギターメーカーの知名度を考えれば時期も国境も関係なくなりますよね。圧倒的に商品数が少ないわけですし。またギターフィギュアという分野ではパイオニアなわけですし、競合が少なかったというのが大きくて。それにさっきも言ったように、「BECK」や「けいおん!」シリーズでは女性もたくさん購入してくれたんです。実際今の「THE GUITAR LEGEND」シリーズの購入者も2割くらいが女性なんですよ。あと2011年に発売したhideさんのギターフィギュアは大勢の女性ファンが買ってくれたようです。
手に取って細部まで見てほしい
──時間と手間をかけて完成したこのフィギュア、実際に手にしてみるとその精巧さに改めて気付かされます。
実はFenderフィギュア(※写真1)でもっとも時間がかかったのはネックの木目なんです。プラスチックのネックをどうやれば本物の木のネックに見せられるのか。過去の経験からポイントは木目だとわかっていたんですが、完成までに3カ月以上かかりました。本物感にもこだわっていて、ヘッドのロゴは実際にFenderで使われているものを縮小して使用してるんですよ。完全再現するには必要だとメーカーに無理を言って。下地のカラーから縁取り線、小さな文字もギリギリ潰れるか潰れないかのラインに調整しています(※写真2)。実はヘッドの弦をおさえているストリングガイドやピックガードを止めるビスなどは小さすぎて8分の1では再現できないので、違和感を感じない程度の大きさにデフォルメしています。フィギュアとしてよりリアルに見せるために、あえてデフォルメするものもあるので、ほとんどのパーツを100分の1ミリ単位で調整してるんですよ。
──なるほど。
例えばストラトキャスターのボディ裏のバネ(※写真3)なんですけど、技術的にも難しいし開発費もかかるから普通は作りませんよね。それに飾ると見えませんから。でもほとんどのストラトはこのようにバネが見える形で使われているわけです。よくパッケージに入れたまま飾る人もいるようですが、本来はやっぱり手に取っていただきたい商品なんです。そうすることで細部やボディの裏側までこだわった部分に気付いてもらえると思いますし、実物のギターを持っていない人にもギターに興味を持ってもらえるんじゃないでしょうか。「自分の好きなアーティストは、こういうギターを使ってるんだ」と考えながら鑑賞することで、新たな発見もありますしね。
アーティストモデルは「究極のファングッズ」
──今回LUNA SEAのINORANさん、SUGIZOさん、Jさんのギターやベースを8分の1スケールでフィギュア化することになりましたが、その経緯を教えてください。
実は「Fenderアーティストコレクション」という企画を立てて、INORANさんとギターフィギュアの話を進めていたんですね。そこへ今年になってfamima.comさんからLUNA SEAでも「hideギターコレクション」のようなフィギュアを作りたいという話をいただきまして。だったら双方一緒にできたら面白いですねってことがこの企画の始まりで。メンバーの皆さんには監修という形で参加していただいて、ESPやFenderといった各楽器のメーカーさんと打ち合わせながら試作を進めています。
──すでにメンバーの皆さんも試作品を目にしてるんですね。
そうです。SUGIZOさんはもともとフィギュアが大好きで、「実は僕も以前、もっと大きいサイズだけどギターフィギュアを作ったことがあるんだ」と言っていて。「構造上、バネはFenderよりも斜めに埋め込まれているんですよね」と最初の試作品(※写真3)を見てもらったら、「あー、よくできてるね。こんな細かいところまで」と喜んでいただきました。その上でさらにSUGIZOさんならではのこだわりの部分を聞いて、その再現方法を意見交換したり。INORANさんから「最高!」と一発OKをもらったFenderならではの美しいギターフォルムや、INORANさんのこだわりパーツであるバズストップ(※写真4)は特に意見をもらいたかったパーツなので、一見しただけではわからないようなデフォルメ方法を話したりしましたね。監修状況などは公式Facebook(参照:The Guitar Legend ~究極の1/8ギターコレクション~ | Facebook)にアップしていきますのでチェックしてもらえたらうれしいですね。
──Jさんのベースは、ボディ裏側のえぐれた部分も完全再現されてますね。
そうなんです。実際に弾くときボディに太ももが当たるので、そのためにこういう形(※写真5)になってるんですが、普段目にすることができないそういう細かなこだわりも、ここで初めて目にすることができたっていうファンもいると思うんです。「Jさんのあのベースを低く構える秘訣はこれだと。ボディのサイドに埋め込まれたジャック部分など、このシリーズならではの見えない部分にもこだわって作っているので、そこにも注目してほしいですし。試作品は図面から起こしたフォルムチェック用のもの(※写真6)ですが、販売される商品にはJさん本人のベースから直筆の「Wake up! mother fucker」をトレースし完全再現する予定です。
──そういうこだわりは、ファンにとってうれしいポイントだと思います。LUNA SEAの皆さんが使っているギターやベースのレプリカモデルも販売されていますが、数十万円しますし楽器が弾けないファンには手を出しにくい代物です。でもこのフィギュアなら数千円で、アーティスト自身が監修したミニチュアモデルを手にすることができるわけですものね。
そうなんです。アーティストが愛用する楽器って体の一部というか、ファンからすると分身のような存在だと思うんです。どれほど高額なレプリカモデルでもネックやボディの木目は本人モデルとは違うわけですが、このシリーズだと再現できるわけです。世界に1本しかない本人モデルの、まさに“ドンズバモデル”ですよと。ある意味「究極のファングッズ」ですからね、これは。そこに大きな価値を感じていただけるとうれしいです。
──hideさんやLUNA SEAのギターフィギュアをきっかけに、今後もさまざまなアーティストのギターやベースがフィギュア化されたら面白いですね。
私たちとしても今後はアーティストシリーズを中心に、ファンに向けた数量限定で希少価値の高い商品を作っていきたいと考えています。正直、いろんなアーティストモデルの楽器がある中で、実際にフィギュア化されている楽器って1%もないんじゃないかと思っていて。だからこそまだまだ可能性の大きい市場だと思いますし、ファンにとっても新たなファングッズになり得ると信じています。
» 商品紹介
- LUNA SEA 25th Anniversary Guitar collection 1/8 Scale Figure / 予約受付中 / 3,600円(税込)
※1 FENDER, JAZZMASTER, and the distinctive headstock and body designs displayed herein are the trademarks of FMIC. All rights reserved.
※2 株式会社ESPの監修のもと製作されております。
※現在製作中のため画像はイメージです。
LUNA SEA(ルナシー)
RYUICHI(Vo)、SUGIZO(G, Violin)、INORAN(G)、J(B)、真矢(Dr)からなるロックバンド。1989年にこの5名がそろい、ライブ活動をスタートさせる。1991年にYOSHIKI(X JAPAN)主宰の「Extasy Records」から1stアルバム「LUNA SEA」をリリース。翌1992年には2ndアルバム「IMAGE」でメジャーデビューを果たした。1994年のシングル「ROSIER」がロングヒットを記録し、東京ドームや横浜スタジアムなどでライブを行うなど日本を代表するロックバンドに君臨する。以降、「MOTHER」「STYLE」「SHINE」といったアルバムを大ヒットし、1999年5月には東京ビッグサイトで10万人を動員した野外ライブを実施。しかし2000年11月に“終幕”を発表し、同年12月26、27日に行われた東京ドーム公演をもってバンドの歴史に幕を下ろした。
終幕以降も各メンバーはソロアーティストとしてのキャリアを重ね、精力的な音楽活動を展開。2007年12月24日には東京ドームで一夜限りの復活ライブを行い、好評を博した。翌2008年5月にはhide(X JAPAN)のメモリアルライブにも出演。正式な再結成を望む声が高まる中、2010年8月に“REBOOT”と称して本格的な再始動を発表した。同年11月からは東京ドーム3DAYS公演を含むワールドツアーを敢行。2011年3月には1stアルバム「LUNA SEAのセルフカバーアルバム、2012年3月には20分を超える大作1曲のみを収録したシングル「THE ONE -crash to create-」をリリースし、音楽ファンを驚かせた。そしてシングル「The End of the Dream / Rouge」「Thoughts」「乱」の発表を経て、2013年12月に13年5カ月ぶりのオリジナルアルバム「A WILL」を発売。結成25周年を迎える2014年5月29日には国立代々木競技場第一体育館でスペシャルライブ「LUNA SEA 25th ANNIVERSARY LIVE -The Unfinished MOON-」を実施し、同年6月7日からは約9カ月におよぶ全国ホールツアー「LUNA SEA 25th ANNIVERSARY LIVE TOUR THE LUNATIC -A Liberated Will-」をスタートさせた。
(C)2014-2015 LUNA SEA Inc.