花譜の独特かつきれいな歌声を求めていた
──9曲目「マンネリウィークエンド feat. 花譜」もよかったですね。この祝祭感のある始まり方はどこかで聴いたことがあるぞ、と思って。
DYES そうですね(笑)。7年前に発表した「La Primavera」の続編として「At Atelier」を作り、さらにその続編みたいな感じで「マンネリウィークエンド」を作りました。「La Primavera」の流れを踏襲したのと、僕が好きな花澤香菜さんの「恋愛サーキュレーション」を参考にしました。使ってるコードは違うんですけど、ハッピーなエレクトロスウィングを作るうえでヒントにしてますね。
──曲中に出てくるのは“逆ストイック人間”みたいな、無気力でだらしない男なんだけど、どこか愛らしさがありますよね。
TOPHAMHAT-KYO 俺自身がいい歳になっても、ふらふらして遊んでいたんですよ。そこまで将来のことを考えず、焦りもせずにプラプラしてる。そういう人って、世の中にわりといると思うんです。上の世代の方には「なんでそんな歳まで遊んでんだよ」という見られ方をされると思うんですけど、自分としては「いやいや、難しいよ」って。早々に将来のことを決めたり、正しい道を行くのって簡単じゃない。自分もふらふら遊んでいたからこそ、そういう人たちの気持ちがよくわかるので「そんなこと言われても遊べるうちに遊んだほうが俺はいいと思うよ」みたいな。ちゃんとわかってくれる人もいるよという。なので、ちょっとした無責任な応援ソングですね。特に「週末はぬるま湯で傷を舐め合うから忙しい」というフレーズがめちゃめちゃ好きで。
──ハハハ。心のデトックスというか。
TOPHAMHAT-KYO 週末は愚痴を言いながら酒を飲んでゆったり過ごしたいじゃないですか。というか、それのために生きてるところもある(笑)。そういう気持ちに共感してくれる人、俺はけっこういるんじゃないかなと思ってるんです。
──それぐらいいじゃんって思いますよね。むしろ、どんだけ働くんだっていう。
DYES ハハハ、間違いない。みんな働きすぎだよね?
TOPHAMHAT-KYO ね! 本当にそう思いますよ。
──性別や属性で分けるのもアレですけど、社会人になったばかりの哲学書を愛読しているような人が聴いたら「いや、がんばれ」と思うだろうし、働くことだけが人生の正義じゃないと思っている人は強く共感するだろうし。「男なんだったら、気合い入れていきなさいよ」と思う女性もいるかもしれないし。聴く人によって、受け取り方が変わりそうですよね。
TOPHAMHAT-KYO だからこそ、よくぞこの曲を花譜さんが引き受けてくれたなと思いますね。これまで接点が一切なかったんですよ。でも「この曲は独特かつきれいな声の方がいいよな」というのがあって、ダメ元で花譜さんにお声がけしたら快く引き受けてくださって。届いたテイクもめちゃめちゃよくて。
DYES これ以上ないぐらいハマっていたよね。
FAKE TYPE.のテーマソング
──フィーチャリング曲以外で言うと、「FAKE SOUL」はFAKE TYPE.のドキュメンタリー的な部分を感じたんですよ。
TOPHAMHAT-KYO ヴァース1では俺自身のことを歌っていて、ヴァース2では勝手にDYESの気持ちを代弁をしてるんです。DYESの考えはこうじゃないかな?と想像しながら作ったので、各々のパーソナリティが反映されている。だからこそ「FAKE SOUL」のタイトルともリンクするのかなって。
DYES タイトルは僕が付けました。FAKE TYPE.のテーマソングみたいな位置付けの曲になったら、という思いで先にトラックを作って。それで「FAKE SOUL」と名前を付けたら、AOの書いてくれた歌詞もその内容になった。でもテーマソングを意識したこととか、何も話してないんですよ。なのに、ぴったりハマる歌詞を書いてきたので「バッチリじゃん!」とめちゃめちゃ興奮しましたね。
──曲の構成も見事ですよね。要所要所で入ってくるサックスの音もカッコよかったですよ。
DYES うれしいです! それこそサックスソロを入れたくて作った曲でして。あまりFAKE TYPE.ってソロパートを入れないので、そこは意識して作りましたね。僕が吹いてるわけではないんですけど(笑)。
──あ、そうなんですか? 「FAKE SWING」ではDYESさんが吹いてましたよね?
DYES 「FAKE SWING」では自分が吹いていたんですけど、今回のアルバムからバリトンサックス以外の、アルトサックスとテナーサックスはプロの奏者にお任せすることにしました。あとは、今回共作で作っているトラックがあって。「ヨソモノ」だとケルト奏者のぱとりさんと一緒に作ったり、「Dryad」に関してはFAKE TYPE.をサポートしてくれているギタリストのjohngarabushiさんと2人で作った曲になります。ギターのパートはすべてjohnさんに考えてもらって、それ以外のパートを僕が作るやり方でした。そうやって今まで1人でやっていたところを、プロの方の手を借りて形にしたのも今作の大きなポイントですね。
エレクトロスウィングの可能性を感じた
──改めて「FAKE SWING 2」が完成して、どんな手応えを感じていますか?
DYES いやあ、もうね「FAKE SWING」の続編にふさわしい、本当に素晴らしいアルバムができたなと思います。
TOPHAMHAT-KYO 客演を呼んだのがよかったよね。
DYES すごく華のある1枚になったんじゃないかな。変わったギミックもいろいろと盛り込むことができたので。
──このアルバムを聴くと、FAKE TYPE.はこの先がどうなるんだろうとワクワクしました。
DYES 進化はさせたいですよね。まだまだエレクトロスウィングでやれることはいっぱいあると感じているので、その幅を広げていきたいです。アルバムの制作を終えて、ほかのジャンルと混ぜることで生まれる可能性を強く感じたんですよ。1曲目「Toon Bangers」の和モノだったり、5曲目「ヨソモノ」もけっこう変わった曲という認識だと思うんですけど、あれはケルトとエレクトロスウィングを混ぜて作っていて。そういう新しい試みもしているし、今後も僕の中でやりたいことがあるので、楽しみに待っていてほしいですね。
──ちなみに初回限定盤の特典映像には、初のアメリカ公演「FAKE TYPE. Live in LA」の模様が収録されているということで、振り返ってLAでのライブはどうでした?
TOPHAMHAT-KYO すごく楽しかったです。今までFAKE TYPE.は日本でしかライブをしていなかったので、初めての海外ライブは少し不安もあったけど、ステージに上がった瞬間にすごく盛り上がってくれて。「あ、受け入れてくれてるんだな」と伝わったので、いつもと変わらない俺らのスタイルでライブをしたら、日本の方と同じように楽しんでくれて。あとは楽しい時間が過ぎていきましたね。
DYES 日本と明らかに違うと思ったのが、僕らが煽らなくても勝手にコールが始まるんですよ。AOが英語で「ちゃんと英語が伝わってるかな?」と言ったら「ダイジョウブ! ダイジョウブ!」という大きなコールが返ってきて。こんな優しい世界があるんだ、と温かい気持ちになりましたね。あとは、オーディエンスの腹の奥底から出てる野太い声。今まで浴びたことのない歓声を浴びました。
TOPHAMHAT-KYO 声の圧力がすごかったよね。自分らもそれに引っ張られて、いつも以上にワーッと盛り上がってね。うん、いい経験になりました。
DYES 僕は海外に行くこと自体が初めてだったので、不安も多かったんですけど、あれを味わったらまた海外へ行きたくなりましたね。
TOPHAMHAT-KYO 12月から全国5都市を巡るツアー「FAKE SWING 2 Release tour」が始まるんですけど、海外での経験も生かせそうですし楽しみですね。
DYES なんと言っても、声出しができるライブがひさしぶりなので、そこもうれしいですね。お客さんと絡みながら、一体感のあるパワフルなライブができたらと思います。
ライブ情報
FAKE SWING 2 Release tour
- 2023年12月1日(金)北海道 cube garden
- 2023年12月15日(金)福岡県 DRUM Be-1
- 2024年1月8日(月・祝)愛知県 DIAMOND HALL
- 2024年1月12日(金)大阪府 BIGCAT
- 2024年2月1日(木)東京都 Zepp Shinjuku(TOKYO)
プロフィール
FAKE TYPE.(フェイクタイプ)
MC / トラックメイカーのTOPHAMHAT-KYOとトラックメイカーのDYES IWASAKIが2013年8月に結成した音楽ユニット。2014年4月にリリースした1stアルバム「FAKE BOX」でデビュー。2015年12月に2ndアルバム「FAKE BOOK」、2016年9月に3rdアルバム「FAKE WORLD」を発表後、2017年から約3年にわたり活動を休止する。2020年に活動を再開し、2022年7月に配信シングル「Knickknack Kingdom」でメジャーデビュー。11月にはメジャー1stアルバム「FAKE SWING」をリリースした。2023年11月には、DEMONDICE、青妃らめ、nqrse、缶缶、花譜をフィーチャリングゲストに迎えたメジャー2ndアルバム「FAKE SWING 2」を発表。12月からはリリースツアーで全国5都市を巡る。
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