青妃らめの歌声は唯一無二
──4曲目の「BARBER SHOP feat. 青妃らめ」に参加した青妃らめさんは、去年3月にYouTubeで「Mister Jewel Box」のカバー音源を上げていましたよね。
DYES まさしく、そのカバーを聴いたのがオファーのきっかけになってます。
TOPHAMHAT-KYO そう、すごくよかったから、いつかご一緒できたらいいなと思っていたんです。そしたら「BARBER SHOP」ができて「この曲はらめさんがハマりそうなんじゃないか」ということで、お声がけしたら快く受けていただけて。イメージした通りの、カッコいいらめさんの歌声が届いたので、すごくうれしかったです。
──青妃さんの魅力や特徴ってどういった部分ですか?
TOPHAMHAT-KYO 狂気的な部分もあれば、少し気だるい部分もある。何より歌声が異質ですよね。
DYES なかなかいないよね。すごく珍しい声を持っていらっしゃる。
TOPHAMHAT-KYO そうそう。あと「Mister Jewel Box」で感じたのがラップがお上手だなって。
DYES ラップがすごく映える声だよね。
TOPHAMHAT-KYO そういった部分でFAKE TYPE.の楽曲はとてもピッタリなのかなって。とにかく唯一無二なシンガーだと思います。
DYES この曲を誰にお願いするか考えたときに、2人ともらめさん一択だったんだよね。
──ほかの曲はまくし立てるようなテンポ感だったり、緩急も目立ったりしますけど、「BARBER SHOP」に関しては一定のリズム感でしっかり重めに刻む感じだから、ボーカル2人の歌い回しのうまさが映えますよね。
TOPHAMHAT-KYO そうなんですよ。テンポがゆっくりだとスキルの差が出てしまうからこそ、逆に遅いほうが難しいんですよね。
DYES この曲は「FAKE!FAKE!FAKE」のBPM帯と似た感じにしたくて、パート2として作りました。サビが終わったあとに来るセクションをカッコよく聴かせたいのと、最後は盛り上がって終わらせる、というのを意識しました。
──歌詞は今のメディアやSNSについての状況が題材になっていますね。
TOPHAMHAT-KYO 昨今は事件やスキャンダルなど、情報の一部が切り取られて広まってしまうから、みんなが事の経緯や問題を勘違いしちゃう流れが往々にしてあるじゃないですか。情報をカットすることと、床屋さんが髪をカットするのをリンクさせて、床屋さんが裏で情報を切り取ってあえて誤解させるような記事を作って拡散していたら面白いかなと。そこからイメージを膨らませて、ストーリー仕立てにしました。これも歌詞とハマるようなMVになっているので、楽曲と合わせてチェックしてもらえたら、俺らのやりたいことがより伝わると思います。
nqrseと歌う、FAKE TYPE.のルーツ
──6曲目「アングラ劇場 feat. nqrse」は、タイトルを見てピンとくる人も多いかもしれません。
TOPHAMHAT-KYO 俺とDYESが出会うきっかけとなった、ラップを投稿するネット掲示板「Underground Theaterz」からタイトルを引っ張ってきました。なので、自分たちのルーツがこの曲の大きな要素としてあるんです。ただ、このテーマをnqrseちゃんには説明していなかったんですよ。たぶん曲を聴いてタイトルを見て「ああ、ルーツみたいなことを言ってんだろうな」と感じ取ってもらったからこそ、nqrseちゃんもテーマに合った歌詞を書いたのかなって。
──この曲はスクラッチの音がいつもより特徴的に使われていたり、2000年代のドープなヒップホップさを感じたんですけど、どんなことを考えて作曲されました?
DYES おっしゃる通り、ドープなヒップホップを作りたかったんですよ。Smokey Joe & The Kidという、すごくカッコいいエレクトロスウィングを取り入れたヒップホップユニットがいまして。彼らのような曲を作れたらと思ったんですよね。……で、スクラッチに関してはAO(※TOPHAMHAT-KYOの愛称)が入れているんです(笑)。
TOPHAMHAT-KYO 単純にスクラッチが好きなんですよ。隙あればチュクチュってやっちゃう(笑)。
DYES ハハハ。FAKE TYPE.はスクラッチが入ってる曲が多いんですけど、ほぼほぼAOが入れてるんですよね。もう1つこの曲について言うと、AOがゆっくりめのフロウを乗せていたのが、めっちゃ新鮮でしたね。いつもは言葉を詰め詰めにして歌うけど、今回はまた毛色が違っていいなと思いました。
TOPHAMHAT-KYO ビートに寄り添うみたいなことってあんまりやっていないので、フレッシュな印象を受けるかもしれないですね。
ムーディな雰囲気に合う缶缶のボーカル
──8曲目「Honky Tonky Night feat. 缶缶」は、今年6月にデジタルシングルとして配信された曲です。缶缶さんに声をかけたのは、どういう経緯があったんですか?
TOPHAMHAT-KYO 「Honky Tonky Night」はすごくムーディな雰囲気かつメロウな曲なので、「女性ボーカルのほうが映えそうだよね」という話になったんです。
DYES そうそう、女性ボーカルが歌う想定で作っていってね。
TOPHAMHAT-KYO 缶缶さんはこれまで何度かご一緒したことがあるんですけど、どれも彼女のハイトーンボイスがガツンと出るような曲ばかりだったので、今回は少し抑えめのボーカルが聴きたいと思って。ムーディな雰囲気の「Honky Tonky Night」を歌っていただいたら、バッチリいい感じの歌声が返ってきて。個人的にもすごく好きな曲ですね。
──サウンド同様に歌詞にもすごくきれいな描写があり、ちょっとファンタジー的な世界観もあって。
TOPHAMHAT-KYO これもMVとリンクした歌詞になっているんです。夜の世界に憧れる女の子が主人公で、その子が夜の世界で歌うに至るまでの流れを曲にしました。
──楽曲リリース時の公式コメントに「ちょっぴりレトロでメロディアスな掛け合いが織り成す抜群のコンビネーション」とありましたが、このレトロというのは?
TOPHAMHAT-KYO ちょっと昔の雰囲気なんですよね。それこそホンキートンク(※お酒を飲みながら生演奏を楽しむことができた安酒場)なんて今はないじゃないですか。あえてそこを引っ張ってきてるのが、俺らの考えるレトロな要素であり、ホンキートンクを自分たちなりに解釈して作ったのが「Honky Tonky Night」です。
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花譜の独特かつきれいな歌声を求めていた