フジファブリック×ライブナタリー特集|共演者アイナ・ジ・エンドと対談&デビュー20周年祝う著名人コメント

フジファブリックとアイナ・ジ・エンドのツーマンライブ「フジファブリック×ライブナタリー “FAB FUN” ~フジファブリック×アイナ・ジ・エンド~」が、5月9日に東京・Zepp Haneda(TOKYO)にて行われる。

ライブナタリーが主催するこのイベントは、フジファブリックのデビュー20周年を記念した企画。フジファブリックのさまざまな作品などに使用されてきたネーミング「FAB ○○○」を用いたタイトルには「我々“FAN”と、一緒に“FUN”する」という思いが込められている。

その対バン相手に迎えたいアーティストとしてフジファブリックから名前が挙がったのは、昨年6月に解散したBiSHのメンバーとして活躍し、現在は音楽活動のほか映画「キリエのうた」で主演を務めるなどマルチに活躍するアイナ・ジ・エンド。フジファブリックからのオファーを彼女は快諾し、今回の対バン実現へと至った。

今回の特集では山内総一郎(フジファブリック)のソロインタビュー、そして山内とアイナの対談を通じ、フジファブリックの20年の歩み、2組の共演に至った経緯、互いの音楽性やスタンスについての思いなどをたっぷりと語り合ってもらった。2人の打ち解けた雰囲気が楽しめる撮り下ろし写真もお見逃しなく。また特集最終ページではフジファブリックのデビュー20周年を祝い、彼らと縁のある幾田りら、大森元貴(Mrs. GREEN APPLE)、SHISHAMO、JUJU、TK(凛として時雨)、ミキ、三原健司(フレデリック)から寄せられたコメントも紹介している。

取材・文 / 森朋之撮影 / 星野耕作

フジファブリック×ライブナタリー “FAB FUN” ~フジファブリック×アイナ・ジ・エンド~

2024年5月9日(木)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
OPEN 18:00 / START 19:00

<出演者>
フジファブリック / アイナ・ジ・エンド

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山内総一郎 ソロインタビュー

今は歌うことがめっちゃ楽しい

──2024年、フジファブリックはデビュー20周年を迎えます。

15周年から20周年までの5年間は、コロナもありましたし、時間の流れがとても早かったなと感じています。思い返しても、平坦な道は1つもない活動だったなと思うし、1つのバンドをここまで続けてこられたことに対しては感謝の気持ちが一番大きいですね。デビュー当初「バンドを続けていきたい」という漠然とした思いはありましたけど、今のフジファブリックの姿はまったく想像してなくて。奇跡のような時間だったなと思います。

──ニューアルバム「PORTRAIT」のインタビューでも話していましたが、バンドとしてのポリシーを貫いてきたことも大きかったのでは?

いろんな要素があると思うんですよね、そこに関しては。デビュー後もいろいろな音楽を聴いてきたし、テクノロジーの発展によって機材もどんどん新しいものが出てきたり。その結果、いろんなタイプの曲をリリースしてこれたのかなと。「たくさんのことにチャレンジしてきて、いろんな曲を出してきた」ということに関しては自信を持っていいのかなと思ってます。

山内総一郎(フジファブリック)

山内総一郎(フジファブリック)

──フジファブリックらしいバンドサウンドを持ち続けながら、音楽的なトライを続けて。

すでにある曲の焼き直しみたいなことをやっても飽きちゃうと思うんですよ。メンバーそれぞれの色をより濃く出しながら、それまでと違うものを1曲ずつ作っていく。そういう意識は全員が持っていると思います。要所要所で外部のプロデューサーやアレンジャーの方にも参加してもらって。1stアルバムのプロデュースはGREAT3の片寄明人さんだし、亀田誠治さん、CHOKKAKUさん、百田留衣さん、ロジャー・ジョセフ・マニング・ジュニアさんにアレンジなどをお願いしたこともあったんですが、基本はセルフプロデュースでやってきたんですよね。3人ともコンポーザーでありプレイヤーでもある。だからこそバンドの色をしっかり出せてこれたんじゃないかなと。ここ数年はスタジオワークもかなりスムーズになりました。それぞれの持ち場が決まってきて、責任感が持てるようになったんじゃないかなと。

──制作におけるメンバーの関係性も変化しているんですね。

僕はずっとスタジオにいたいタイプなんですよ。でも、そうじゃないメンバーもいるし(笑)、スケジュールの問題もあるんですけど、「いいテイクを録る」という目的に向かって集中できてるんじゃないかなと。

──メンバーのプレイやアイデアに刺激を受けることも多いのでは?

それはすごくありますね。あらかじめ決めていたフレーズであっても、その人が弾けばその人の色になるので。プレイヤーとしての引き出しやアイデアも20年分積み重なっているし、例えば僕が「こういう感じで弾いて」と言えば、「たぶん山内くんはこういうことを求めてるんだろうな」とそれぞれが解釈してくれる。本当に個性がある人たちが集まってるバンドだなと思いますね。共通しているのは「楽々やってることは1つもない」ということかな。みんな必死で作品を作って、必死で演奏して。そこは20年前とまったく変わってないし、身に染みているところだと思います。

──ボーカリスト、フロントマンとしてのキャリアも長くなっていますが、人前で歌うことに対する意識も変化していますか?

かなり変わってきましたね。歌い始めた頃は不安を感じることもあったんですよ。志村(正彦)くんという存在がいたし、プレッシャーを感じながら歌ってましたけど、ファンの皆さんが目の前ですごいレスポンスをくれる中で、少しずつ気負いがなくなってきて「いい音楽をちゃんと届けよう」というベクトルになってきた。あまり覚えてないことも多いんですけど、振り返ってみると「オーディエンスの皆さんに成長させてもらえた」という実感があるし、今は歌うことがめっちゃ楽しいです。ステージに立って歌うのは特別なことだし、今も緊張しますけど、歌うことが日常とそれほど差異のないものになってきた気がします。

このバンドでしか聴けない曲があったほうがいい

──音楽シーンのあり方も大きく変わりましたよね。フェスの増加に伴って、ステージに立つ機会も飛躍的に増えて。

弾き語りのライブもあるし、自分が楽曲を提供したアーティストのステージに参加することもありますからね。いろんなカラーのフェスが増えて、夏場は毎週末のようにフェスに出させてもらって。場数を踏ませてもらえることもありがたいし、各地の風土やお客さんの雰囲気が違うのも楽しいんですよ。

──フェスは音楽のトレンドを実感できる場でもあると思いますが、フジファブリックは流行から適度な距離を取っていた印象があります。

僕らもそっちの仲間に入れてもらいたかったですけど(笑)、“メンバーと一緒に演奏したらこういう音になっちゃう症候群”みたいなものがあって。ダンスミュージックにもチャレンジしたし、いろんな挑戦は続けているんですけど、どうしたってフジファブリックの音になるというか。考え方としては「フジファブリックはフジファブリックの本流でいたい」ということなんですよ。曲作りやアレンジにしても、「こっちのほうがウケるよね」というよこしまな気持ちも少しはありつつ、自分たちがドキドキしないことはやらないようにしていて。新しいチャレンジに時間を使いたいし、自分たちならではの表現を突き詰めたいですからね、やっぱり。このバンドでしか聴けない曲があったほうがいいじゃないですか。

──そうですよね。アルバム「PORTRAIT」にもフジファブリックらしい独創的でポップな曲が収められていて。

「KARAKURI」「ショウ・タイム」もそうなんですけど、ちょっとプログレッシブな曲もありますからね。ファンクラブ限定のライブで新曲をひと足早く聴いてもらう機会があったんですけど、「こういう曲、好きでしょ?」って言ったら、そこにいた全員が拍手してましたからね(笑)。たぶんお客さんも「驚かしてほしい」と思ってるだろうし、そこに応えられる曲ができてよかったなと。何もプログレをやろうと思っていたわけではないし、自分たちも驚けるようなポップな曲を作ろうというのが根底にあるんですけどね。それが独自の音楽になっていたらいいなと。

──サブスクの浸透によって曲の聴かれ方は大きく変化しましたが、フジファブリックらしさは変わらない。

そうなってたらいいですけどね。サブスクリプションが当たり前になったり、アナログレコードの再発が増えたり、20年前には考えられなかったことばかりなので。YouTubeでいろんなミュージシャンの演奏が観られるようになったのも大きいですね。僕もピアノを始めたときはYouTubeの動画を参考にしたんですよ。The Beatlesの曲を演奏しているところを上から撮影した映像なんですけど、それを観て、我流で練習し始めたので(笑)。

山内総一郎(フジファブリック)

山内総一郎(フジファブリック)

──今回共演するアイナ・ジ・エンドさんもそうですが、下の世代のアーティストとの交流も増えてますよね。「学生のときから聴いてました」みたいな会話も多いのでは?

そうですね。去年コラボレーションしたフレデリックもそうですけど、フェスなどで下の世代の人たちとお話をさせてもらうこともあるし、「聴いてました」と言われるとありがたいなと思いますね。ギターリフやシンセもそうですけど、フジファブリックの楽曲のエッセンス的なものを参考にしてくれていたり。影響を与えていると言うと大げさだけど、僕らのことを知ってくれて、何かしらのイメージを持ってくれているのはすごいことだなと。

──フジファブリックのキャリアもさらに先に進みますが、今後の活動ビジョンは?

アルバム「PORTRAIT」を作ったことで、ちょっと出がらし状態になっていて。曲自体はいくつかあるんですけど、自分が出したい曲かと言えば、ちょっと違う気がするんですよ。20周年のライブもあるので、その中でチャージしながら、さらにいい音楽を作り続けていきたいなと……やっぱりそれしかないんですよね。続けることがいかに難しいか身をもってわかってるし、マイペースもある程度守りながら、長く存在していきたいです。

──いい曲を作って、ライブをやって。バンドがやるべきことですね。

そうですね。行ったことがないライブハウスとかホールもたくさんあるので、そういうところでやってみたいという気持ちもあって。僕らがやっていないことはまだまだありますからね。