「七人の侍」のDVDって、どういうことなんやろ?
──コシバKENさんは総合司会を担当されていた頃、ステージを盛り上げるうえでいろいろ勉強もされたのではないですか? ジェームス・ブラウンのライブ映像を観たりとか。
コシバKEN それめっちゃ言われました。前のレーベルのスタッフさんに「もっとこういうの観て勉強した方がいいよ」とか、「しゃべりの間はこうするんだ」とかいろいろ教えてもらったんですけど、参考にしろと「男はつらいよ」の第1作目と「七人の侍」のDVDをプレゼントされたときは、ちょっと焦りました。「どういうことなんやろ?」みたいな(笑)。
──黒澤明監督の「七人の侍」!
コシバKEN 寅さんの口上はまだわかるけど、「七人の侍」はなんやろ? 自分としては「メンバーそれぞれに役目があるんやぞ」っていう意味やったんかなと勝手に解釈してるんですけど、東京の人はアドバイスもおしゃれですね(笑)。
──現在はMCの一員としても盛り上げてらっしゃいます。
コシバKEN 歌に関してはTENNが天国に行ってからちゃんと始めたので、日々勉強ですね。最初はファンの皆さんのことを意識して、「僕が歌ったらどういうふうに思うんかなあ」という不安もありました。これからもそうだと思います。TENNは僕らの中ですごい偉大な男だし、引き継ぐとかそんな重たいこととは捉えてないんですけど、ET-KINGの歌をしっかり届けていけるように歌っていければいいかなとは思ってます。
──ちなみにコシバKENさんがお好きなボーカリストは?
センコウ 椎名林檎さんやろ?
コシバKEN 椎名さんも好きだけど(笑)、男の人だと玉置浩二さんはすごいなと思いました。お会いしたことないんですけど、テレビで歌っている姿を観ると、思わず聴き入ってしまいますね。すげえなあって。影響受けますね。そのせいか、みんなで歌ってても俺の歌はクセが強いって言われて。なので、今ちょっと玉置さんの映像は封印してます(笑)。
三木道山さんの存在は大きかったと思う
──いときんさん、TENNさんと一緒にET-KINGを結成したKLUTCHさんは、いかがですか?
KLUTCH いときんとTENNと3人で始めた原点が“モテたい”って気持ちなんです(笑)。どうやったら女の子にモテるかを追求したとき、まず「バンドやろうぜ」ってなって。そしたら全員ボーカルやりたいって言うからバンドは無理やなってことで、当時DJスタイルでライブをやってるグループがちょこちょこ大阪にもいてたんで、そういうスタイルやったらいけるんじゃないかと思って……そもそも僕、最初に自分で買ったのは光GENJI「パラダイス銀河」のカセットテープなんです。
──飛鳥涼さん作詞・作曲の大ヒット曲ですね。さきほどのBUCCIさんに続いて、ET-KINGはCHAGE and ASKAの影響が色濃いグループだった(笑)。
KLUTCH 小学校の頃は男闘呼組とか聴いてました。そんなジャニーズ期を経て(笑)、中学校ではヴィジュアルバンドに目覚めまして。インディーズ時代のX、LUNA SEAとか、ZI:KILL、Gilles de Raisとかが好きで。YOSHIKIさんが主催していたエクスタシーレーベルの「無敵と書いてEXTASYと読む!!」という武道館でやったイベントのビデオを観たり、地元の友達集めてライブやったりしてたんですけど、高校に入ってから次はレゲエのサウンドを始めたんです。
センコウ ガラッと変わったな!
コシバKEN なんか端折ったらあかんとこ端折った気するねんけど(笑)。
KLUTCH 友達のお兄ちゃん、お姉ちゃんとかサーフィンやってる世代の人がレゲエ聴いてた影響で、BOY KENさんとか浪花男さん、V.I.Pのコンピレーションとか買って聴いたりしてて。その中にRED MONKEYさんという地元の先輩が入ってて。「こんな人、地元にいるんや」と思ってたら、BOOGIE MANさんの「PACHINCOMAN」がヒットしたんです。
──1994年の、ジャパニーズレゲエシーンがブレイクするきっかけになった曲ですね。
KLUTCH それからレコードを一生懸命買って、地元の小さいクラブとかでレゲエの活動をやってたんですけど、高校卒業して専門学校に進学したらそこでTENNと同じクラスになって、地元の友達以外で音楽の話をする仲間ができたんです。TENNは高校時代、軽音部でロックをやってきてたんで、いろいろロックの話を教えてもらいました。日本のヒップホップも好きなTENNから、SHAKKAZOMBIEさんのCDとか借りてラップに興味を持つようになって。あと、BACK DROP BOMBはけっこうレゲエっぽいメロディも入ってるのがカッコよくてよく聴いてたんですけど、BACK DROP BOMBが出てるイベントに遊びに行ったときにBRAHMANを初めて観て「なんやこいつら!」と思って。そこからその周辺のミクスチャーバンドのCDを買い漁って聴きましたね。
──1990年代後半から2000年代前半にかけて、ひとつのジャンルで括れないバンドが次々と出てきた時期でした。
KLUTCH 当時、大阪でも面白いイベントいっぱいやってて。「HIGHEST MOUNTAIN」(日本最大級のレゲエフェス)も初期の頃で、三木道山さんがバーンと売れたのもその時期ですよね。
──三木道山さんの「Lifetime Respect」は日本のレゲエ史上初のチャート1位を獲得した曲ですが、KLUTCHさんにとっても大きい存在ですか。
KLUTCH やっぱりレゲエをお茶の間に広めたところは大きいと思います。それまでのレゲエのディージェイって、自分を大きく見せることがメインで、当時はラブソングを歌ってるのはMOOMINさんぐらいで、ほとんどいなかったんです。そんな中、三木道山さんが「Lifetime Respect」を出して。泥臭い感じでラブソング歌ってんのを聴いて、すごい共感できたし影響されましたね。ET-KINGを始めた頃はそんな意識なかったし、ラブソングも作ったことなかったですけど、のちにメジャーデビューしてラブソング作るようになったとき、「どっか意識に刷り込まれてるのかな」みたいなことは感じました。
いときんは今度のアルバムにも全曲参加してます
──そういう多様なバックグラウンドを持った皆さんが集まってステージに立つと、ET-KINGとしか言えない音楽になるところが面白いなと思います。
コシバKEN 去年のワンマンツアーでメンバーが前説を各会場でやったんです。それでBUCCIが最初に出て行って「することないからとりあえずメンバーのモノマネするわ」ってやったら、めっちゃウケてたんです。それを見て、歌ってる最中の仕草とか話し方とか、ファンの人は僕らより気付いてるんだろうなって思いました。そんなところも今後のライブで「あいつはあんなクセあんねんな」みたいに見付けてもらえたら面白いですね。ET-KINGのライブは、メンバーの人となりがすごく出てると思うんで。
──そんなET-KINGは、2019年に結成20周年を迎えます。12月の「えびす巡業~出稼ぎ篇~」は、そこに向けての第一歩となるツアーですね。
コシバKEN ホップ、ステップ、ジャンプで言えば2017年はホップの年やって言ってたんですけど、こないいろいろあるかっていうぐらいあったんで、今年沈んだぶん来年取り返せたらいいなと思ってます。それこそ、いときん自身もそういうふうに思ってくれてると思うし。
──それぞれがソロ活動で持ち寄ったものがこれからどういうふうにかたちになっていくのか、楽しみなところです。
コシバKEN この前いときんが「ライフスタイルが歌に説得力をもたらすから、しっかり生きて、書く言葉にも責任持ってやらなあかんで」っていう話をしてたんです。こういう状況やからこそ言える言葉だったり、歌えるメロディがあるって。なので、これから出てくる曲は、今僕らが考えてることがよりわかりやすい曲になってると思うんで、ぜひたくさんの人に聴いてほしいですね。ちなみに、いときんは今度のアルバムにも全曲参加してます。
──それはうれしいニュ—スです!
コシバKEN 周りもすごく応援してくれる人が多いですし、本人もやる気ですので。
──それではせっかくですので、この記事を読んでいるであろういときんさんにひと言お願いします。
コシバKEN じゃあ、「アルバム録り終えたから打ち上げしようって言ってんのに全然行けてないけど、どうする?」(笑)。
センコウ 「はよ日にち出さんと、こっちで勝手に決めとくで?」って(笑)。
- ET-KING「こっちこい」
- 2017年11月22日配信開始
- 収録曲
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- こっちこい
[作詞:ET-KING / 作曲:NAOKI-T、ET-KING]
- こっちこい
ツアー情報
- 全国ツアー「えびす巡業~出稼ぎ篇~」
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- 2017年12月14日(木) 宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
- 2017年12月15日(金)神奈川県 CLUB CITTA'
- 2017年12月22日(金)愛知県 Zepp Nagoya
- 2017年12月24日(日)広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2017年12月25日(月)福岡県 ももちパレス 大ホール
- 2017年12月26日(火)鹿児島県 鹿児島市民文化ホール 第2ホール
- 2017年12月28日(木)大阪府 Zepp Namba(SOLD OUT)
(※大阪公演はOSAKA ROOTSを迎えてのバンド編成で実施)
- ET-KING(イーティーキング)
- 1999年に大阪で結成。5MC+1DJ+1総合司会という異色のメンバー構成で、大阪は通天閣のすぐ近く大国町を拠点に共同生活をしながら活動をスタートさせた。ストレートな言葉と力強いメッセージを武器に、レゲエ、ヒップホップ、テクノ、ロック、歌謡曲、ときには演歌までも取り入れたオリジナルなサウンドを展開。また、はっぴを身にまとい「お祭り」をテーマに繰り広げられるエネルギッシュなライブは、笑いあり涙ありで、聴覚だけでなく視覚でも観客を楽しませる。2007年にシングル「愛しい人へ」とアルバム「LOVE&SOUL」のヒットでブレイク。結成15周年を目前に控えた2014年に全国ツアー「ET-KING 結成15周年記念全国ツアー ~おまえとおったらおもろいわ!~」を開催し、ツアーファイナルを持って“充電期間”と称した活動休止期間に入ることを発表した。同年9月にメンバーのTENNが死去。2015年7月にメンバー6人で活動を再開し、2016年2月に活動再開後初のアルバム「Ideologie」を発売した。2017年8月にリーダー・いときんが肺腺がんの治療に専念するためライブ活動を一時休止することをアナウンス。11月に新曲「こっちこい」を配信リリースした。