étéがニューアルバム「Apathy」を3月27日にリリースした。
昨年12月発売のミニアルバム「Burden」からわずか3カ月で制作された新作「Apathy」は、表題曲をはじめとした全10曲が収められたフルアルバム。今回のインタビューではソングライター・オキタユウキ(G, Vo)が楽曲を通じて伝えたいこと、またスキルを磨き続けるヤマダナオト(B)と小室響(Dr)のプレイヤーとしてのこだわりなど、彼らの創作活動の源泉に迫った。
取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 関上貴也
音楽的な筋力が付いた
──前作「Burden」の発売が昨年の12月なので、わずか3カ月でフルアルバムを完成させたわけですよね。
オキタユウキ(G, Vo) そうですね。今までこんな短いスパンで音源を作ったことってなくて、すごく忙しくはあったんですけど、それ以上に意味のある3カ月が過ごせた手応えがあります。
小室響(Dr) 大変っちゃ大変だったけど、楽しかったな。この3カ月。
ヤマダナオト(B) 響は練習好きだもんね(笑)。いろんな曲に挑戦できて、プレイヤーとしても成長した3カ月だったと思います。
オキタ これだけ短いスパンで曲を作り続けたことで、“音楽的な筋力”が付いた実感があるんです。前作「Burden」では形にできなかったアイデアの曲を仕上げられて、バンドの新しい引き出しを開けられたし、単純に曲を作ってアレンジしてレコーディングして、という一連の流れを止めどなく、もちろん手を抜くことなく続けることができた。自分たちの自信にもつながりました。
一貫したメッセージ性
──今作はどういう構想のもと制作をスタートさせたんでしょうか?
オキタ アルバム全体の構想をそこまで具体的に考えていたわけではないんですが、前作「Burden」の曲と比べて、より強力なリード曲を打ち出したいというのはすごく意識していました。僕らが鳴らしている音楽、ギターロックとポエトリーリーディングの融合という手法を用いながら、パンチがあってカッコよくて、密度の濃い曲を作ろうと思って作ったのが「ruminator」という新曲なんです。
ヤマダ 最初に「ruminator」のデモを聴いたとき、すごく難しそうな曲だなって印象があって。
小室 うん。今までのétéにはなかった曲だよね。
ヤマダ 僕と響が今まで通って来なかったような音楽が求められてる感じがして。「今回のアルバムは相当練習が必要になるぞ」と思いました。
オキタ 四つ打ちの曲を2曲、アップテンポの曲を3曲、みたいに全体のバランスだけ考えて、あとはひたすらデモを作って2人に投げて、という行程を繰り返しました。
ヤマダ 「Burden」リリース後、すぐに今作の制作に入ったんですけど、オキタのアイデアは全然枯れてなくて。むしろやりたいことが次々と出てきたよね。
オキタ リリースのスパンが短かったので、いろんな音楽を聴いてインプットしていったというより、やりたいと思っていた曲をどんどん形にしていった感覚ですね。
──アルバムタイトルの「Apathy」という言葉はどういう経緯で生まれたんですか?
オキタ アルバムに「Apathy」という曲が入っているんですけど、実は曲ができる前からアルバムタイトルを先に決めていたんです。「Apathy」という言葉は無関心であることとか、感情がない状態を指すものなんですけど、僕は生きていく中でApathyを感じる瞬間がすごくあるんです。それは僕自身の心が疲れてしまって、普段なら心が動くはずのものに対して何も思わない状態のときもあるし、自分から見て他者にApathyを感じることも多くて。自分自身のApathyと、世間に感じるApathy。この2つが根幹にあって、今回のアルバムをくくる言葉として選びました。
ヤマダ 「Apathy」って、「Burden」でオキタが書いていた歌詞とも関連してる言葉だと思うんです。オキタのメッセージって、ずっと一貫してるんですよね。すごく胸に響くと思います。
小室 言葉の選び方のセンスがいいよね。
オキタ ありがとう(笑)。「Apathy」は自分の中でちょっと特別な曲ですね。歌とラップ、それにポエトリーリーディングも盛り込んでいるし、サウンドも生楽器と打ち込みが入っている。étéというバンドのすべてを詰め込んだ、今作を象徴する曲になったと思います。
思想の共有は必要ない
──皆さんのやり取りを見た感じ、制作中にアルバムのコンセプトや曲に込められたメッセージ性を3人で共有することは……。
ヤマダ ないですね。こういうインタビューの場で「あ、そういう意味だったんだ」って知ることのほうが多いです(笑)。
オキタ 僕らは誰の力も借りずに3人だけで音楽を作って、3人で演奏しているわけなんですけど、そこに思想の共有は必要ないと思っているんです。例えば僕が怒りの感情で曲を作ったとして、2人に怒って演奏してくれとは思わないんです。2人には2人の感性があるわけだから、それに従って演奏してくれればいい。僕の気持ちは歌詞を書いて曲の名前を付けたときにある程度は消化されているから、悲しい曲を悲しそうにライブで歌う必要も、演奏する必要もないんです。
──思想の共有がなくてもétéの3人には強い信頼関係があるように感じます。
オキタ 思想は共有できていなくても、僕らはバンドとしてのマインドが合ってるんですよね。3人が3人ともカッコいい音楽、面白い音楽を鳴らしたいと思っている。作詞作曲は任せてもらっていますけど、僕はこの2人がいなければétéというバンドは成立しなかったと思います。
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バンドっていいな