ENVii GABRIELLA、7曲で世界一周!さらなる大海を目指して漕ぎ出した3人の航海 (2/2)

初のレゲエは「ヨダレをたらすみたいにして歌うのよ!」

──3曲目「Cherry Pie / Dvorakkia」ではジャマイカ・南米からインド洋へと回り込んでいきます。「Cherry Pie」ではエンガブ初となるレゲエに挑戦していますね。

Takassy “航海”“世界一周”というコンセプトを決めたとき、アフリカンとカントリー、レゲエは絶対やりたかったんですよ。自分としてはレゲトンのほうが時代的にマッチしていたし、いわゆるゆったりとしたレゲエはそこまで好きではなかったんです。「なんかまったりしてんな」みたいな(笑)。でも実際に作り始めるとそのよさに気付いたし、そのサウンドに合うちょっとダラダラした歌い方を探っていくのもすごく楽しくて。レコーディングのときもHIDEKiSMに「これは口を開けてヨダレをたらすみたいにして歌うのよ!」なんて言いながら(笑)。

Kamus 私はシンプルにこの曲が好きなので、2人の歌い方に合わせたパフォーマンスができたらいいなっていう想像をしていますね。ただただ心地よくサウンドに乗って、お客さんも一緒にチルしてもらえるようなステージを作れたらなって。

──心地よくチルしていたかと思いきや、「Dvorakkia」ではドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」が鳴り響いてハッとさせられます。その緩急がまたいいですね。

Takassy 予期しないことってダラッと油断したときに来ますからね。ミニアルバムの後半に向けてちょっとシリアスな展開になっていくので、その切り替え的な役割の曲でもあります。穏やかな波に揺られてチルしてたらいきなりクラーケン出たじゃん!みたいな感じですね(笑)。

──ミニアルバムのタイトルにもなっている「DVORAKKIA」は造語なんですよね?

Takassy そうです。サンプリングした「新世界より」が今回のコンセプトにマッチすると思ったので、ドヴォルザークの名前をモジったタイトルにしたんですよね。私たちは航海しながら「Metaphysica」とか「ENGABASIC」とか、アルバムごとにいろんなエリア、ワールドにたどり着いていて、今回は“ドヴォルザキア”地方に向かうというイメージです。

エンガブ版「異邦人」

──雨の音に導かれる4曲目「Strangers / Fate」では東南アジアから北上していき、中国大陸を想起させる5曲目「哀恋」へと流れていきます。

Takassy ここは先行シングルとしてリリースしていた「哀恋」にどうつなげていくかを考えて作ったパートでもありますね。ここまでの流れでけっこう南の国まで行ってしまったので、それをどうアジアに導くかっていう。「Strangers」はもともと、しっとりとしたミディアム曲だったんですけど、今回アレンジに関わってくれたSimさんが超激しくてこってりしたトラックを作ってくださって(笑)。一度リテイクしてもらって収録されているものになったんですよ。

──収録されているバージョンもけっこう激しめではありますよね。

Takassy そうなんですよ(笑)。でも、そのトラックを聴いたのがタイだったんです。夜のバンコクでゲイクラブに行ったタイミングだったから、これはこれでアリかもなと思っちゃって(笑)。タイトルもエンガブ版の「異邦人」ということで「Strangers」にして、歌詞もタイで書き直したんですよね。図らずもタイのおかげで異国情緒あふれる曲になりました。

──「Strangers」で別れた恋人たち、「Fate」では別れを切り出された側の感情をHIDEKiSMさんが歌を通して演じられています。

HIDEKiSM ふふふ。大女優として演じました(笑)。レコーディングのあと、「HIDEKiSMはくたびれた30代っぽい歌が上手だよね」みたいなことをTakassyに言われましたけど。

HIDEKiSM

HIDEKiSM

Takassy 褒め言葉ですけどね。

HIDEKiSM そういう思いがあったからこそ、この曲で私をメインにしてくれたんだと思うんですけど。ここまでドロッとした恋愛ソングは今までのエンガブにはなかったですよね。次の「哀恋」へとつながる流れも含め、私はすごく好き。少なからず同じような経験をされている方はいるはずなので、そういう方々を代表する気持ちで歌わせていただきました。

Takassy 私たちのYouTubeを観てくれているのは20代後半から30代、40代の女性の方が圧倒的に多いので、そういう方々のリアルにブッ刺さる歌詞の書き方は意識しましたね。

こんなに楽しく生きているよ

──続く「僕の名を持つ君へ」で船は再びアメリカへ。カントリーフレイバーを感じさせるサウンドに乗せて、若者へのメッセージが放たれていますね。

Takassy この曲ではちょっといつもとは違うボールを投げたというか。私たちがLGBTQのイベントなどに出させていただくときは、自分たちよりも下の世代の若い子たちに希望を持ってもらいたいという気持ちが強くて。そんな思いをメッセージとしてこの曲に詰め込んでみました。

──とはいえ、ここで歌われていることは大人にも当てはまるものですよね。すごく勇気をもらえる内容です。

Takassy そうですね。言ったらLGBTQに特化して作ったわけでもないですし。生きづらさを感じているすべての人たちに対して、社会の中でいろいろな経験をした私たちがこんなに楽しく生きているよ。ということが伝わったらいいなと思って作りました。

──この曲を含め、今回の収録曲にはライブでシンガロングしたくなるパートが随所に盛り込まれているのもいいですよね。

Takassy 昨年やったツアーとホールライブでの経験が大きかったと思います。今までは「私たちを見ろ!」っていうような曲が多かったので、一緒に盛り上がれる、一緒に楽しめる曲を作ることで、ライブ1本のバランスをよくしようという狙いがありました。

Kamus このアルバムができたことで、またちょっとライブの雰囲気が変わりそうですよね。今回の曲たちは本当に歌詞がいいので、それをナチュラルに、シンプルに受け取ってもらえるようなパフォーマンスをしたいなという思いもあって。驚きを与えることももちろん大事なんですけど、楽曲を聴き込んできてくれた人に対してスッと寄り添えるようなわかりやすいパフォーマンスも盛り込んでいきたいです。

青い空、広い海、HIDEKiSM!

──そしてラストで船は日本へと到着。J-POPに振り切ったナンバー「Sail On」で世界一周の旅が終わります。

Takassy 最初にHIDEKiSMさんが言った「中途半端」って言葉が象徴的ですけど、メジャーに来て3年経った自分たちとしてはまだまだ不完全燃焼なところがあるんですよ。その理由は何なのかを考えてみると、「オネエを掲げたエンガブだったらこうする」みたいなことにとらわれすぎていたんじゃないかなと思って。だったら、オネエとかそういう部分を1回取っ払って、自分たちが当初からこだわってきたJ-POPであることを徹底的にやり切ってみようと思ったんです。なのでオネエ感ゼロのこういう曲が生まれました(笑)。

──エンガブとしてここまで振り切ったことができたら、今後はより自由に活動していけそうですよね。

Takassy そうですね。これができちゃったらもう怖いものはないなと(笑)。

──突き抜けるボーカルも最高です。グッと上がっていくサビメロの気持ちよさにはいい意味でのアニソン感があるというか。

HIDEKiSM 解き放たれるような、大きな広がりが見えるような歌い方にしたいなとは思っていて。青い空、広い海……そんな情景が目の前に映し出される歌を心がけました。

Takassy 青い空、広い海、HIDEKiSM!

HIDEKiSM ああーまぶしい! まぶしすぎますよねえ!

Kamus グラビアだな(笑)。

HIDEKiSM 私、女優よー!

──あははは。ラストのパート、「漕ぎ出せ 泣かずに 新しいステージ」は感涙必至ですよね。

HIDEKiSM そうなの、泣けるの! すごく泣けるんですよ! レコーディング前に練習してるときも毎回グッと来てたし、最近はライブのリハやりながらも泣きそうになっちゃってます。早く皆さんにも聴いてほしい!

──6月21日には3都市のZepp会場を含むエンガブ史上最大規模となる全国ツアー「ENVii GABRIELLA LIVE TOUR 2024『DVORAKKIS』」が開幕します。本作の楽曲たちをどうパフォーマンスされるのか本当に楽しみです。

Kamus 過去のライブを振り返ると、ふとした瞬間にファンの方の圧に負けそうになってしまうことがあったんですよ。今回は会場も大きくなるので、その圧はもっと大きくなるはず。なので、皆さんに押されないように、むしろ押し返すくらいの気持ちで臨もうと思います。皆さんに楽しんでもらうことは大前提として、今回のアルバムの曲たちを最高の形でお届けしながら、最終日のZepp DiverCityで有終の美を飾れたらなと思っています。

Takassy 自分的に会場が大きくなることに関しては、あまり気負いはないんですよ。これは強がりとかおごりではなく、Zeppまで来たというのは自分たちの活動プランに組み込まれていることだったので。私たちはもっと先を見て活動しているし、その通過点である今回のツアーはいつも通り、粛々と楽しめればなと思います。もちろんここまで来れたのは応援してくださる皆さんのおかげでしかないので、そのありがたさを噛みしめつつ楽しみます。

HIDEKiSM 私は結成初期からZeppでライブしたいと公言してきたので、その日が近付いていることが純粋にうれしいです。とはいえ変に気負ってしまうのもダメだと思うので、ある意味、いつも通りに力まず、皆さんと一緒に楽しめればいいかなって思います。「DVORAKKIA」という作品のよさを、しっかりと自分の歌を通して伝えきることに徹しようと考えています。楽しみにしててください!

ENVii GABRIELLA

ENVii GABRIELLA

ツアー情報

ENVii GABRIELLA LIVE TOUR 2024「DVORAKKIA」

  • 2024年6月21日(金)北海道 cube garden
  • 2024年6月22日(土)北海道 cube garden
  • 2024年6月29日(土)大阪府 Zepp Namba(OSAKA)
  • 2024年6月30日(日)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2024年7月6日(土)福岡県 DRUM LOGOS
  • 2024年7月14日(日)東京都 Zepp DiverCity(TOKYO)

プロフィール

ENVii GABRIELLA(エンヴィガブリエラ)

Takassy、HIDEKiSM、Kamusの3人による総合エンタテインメントユニット。soul juice名義で作家活動もしていたTakassyを中心に結成され、2017年3年に活動開始。“動画で楽しむ新宿二丁目”をコンセプトにスタートさせたYouTube番組「スナック・ENVii GABRIELLA」が徐々に人気を集め、チャンネル登録者数が20万人を突破する。2021年3月にインディーズラストの作品となるベストアルバム「ENGABEST」をリリースした。同年10月にキングレコードよりメジャーデビュー。「Moratorium」「DYSTOPIA」「CABARET」のシングル3曲を3カ月連続で配信した。2023年6月にメジャー1stアルバム「ENGABASIC」をリリース。2024年5月に2ndミニアルバム「DVORAKKIA」を発表した。