ENVii GABRIELLA「ENGABASIC」インタビュー|ドロドロした感情もエンタメに昇華、楽しいだけじゃないエンガブの集大成がここに (2/2)

ヴィランズのようなエンガブの真骨頂

──3曲目にはエンガブらしい視点で恋愛への思いを描いた「Toxygen」が収録されています。

Takassy タイトルは“毒”を意味する“toxic”と“酸素”を意味する“oxygen”を混ぜた造語なんですけど。要は、恋愛には依存して中毒になってしまう側面と、生活に張りが出る酸素のような側面があると思うんですよ。その諸刃の剣のような感覚を曲にしてみたんです。

──ダークな雰囲気がありつつ、でもどこかファニーな雰囲気も感じさせるサウンドが歌詞の世界観とマッチしていますね。

Takassy ハロウィンとか海外のビックリハウスみたいなイメージで作りました。子供の笑い声やおもちゃの音を入れてみたり、すごく不規則に鳴ってるピアノを入れたりという仕掛けをしています。

HIDEKiSM ダークさとコミカルさを一緒に盛り込めるっていうのは、エンガブだからこそのスタイルのような気がしますね。以前に一度ライブで披露させてもらったこともあるんですけど、そのときもすごく反響が大きくて。わりとヴィランズのような扱いを受けがちなエンガブの真骨頂的な楽曲だと思います(笑)。

Kamus あははは。

Takassy 「わりと」って言うか、ほぼほぼヴィランだけどね。

HIDEKiSM 私自身はプリンセスだと思ってますから、皆さんの目が節穴なんでしょうね(笑)。まあでも、パフォーマンスしがいのある楽曲に仕上がったのはすごくうれしいですね。

ENVii GABRIELLA

ENVii GABRIELLA

心から出てくる本当の言葉だけを発信したかった

──4曲目の「PAY ME」は全編ラップのヒップホップナンバーです。この歌詞もけっこう衝撃的ですよね。

Takassy ドロドロした感情を吐いてますからね。よく収録させてもらえたなって(笑)。この曲を書いたのは、Twitterで見たフルート奏者の方のつぶやきがきっかけで。その方がある企業からオファーを受けたんだけど、提示されたギャラがかなり安かったみたいなんです。で、その方が希望金額を提示したら、「そんなに高いならもういいです」と言われて終わってしまったという。私たちも音楽という形のないものを売り物にしているので、その方と同じ立場なんですよ。日本は特にお金の話を持ちかけると引かれちゃうことが多いですけど、自分の価値と、その対価について考えようよっていう曲を作ろうと思ったんですよね。この6年間で泥水をすするように活動していた時期もあったので(笑)、その頃の実体験も含めて書きました。

HIDEKiSM 概ね暴言ですけどね(笑)。

Kamus あはははは!

Takassy それは確かにそう。特に2番とかは、私たちのようなオネエにすり寄ってくる人の中にはこういう女性がいるよねってことを書いたんですけど、エンガブは女性ファンが多いのでけっこう誤解を受けるギリギリなラインかもしれないです。しかもそのパートを女友達の多いHIDEKiSMに歌わせるっていうドSな感じで(笑)。

──あははは。でも、ここで歌われていることは至極、真っ当なことですからね。

HIDEKiSM そうそう。この曲の表面上だけしか見れない方はもうそれまでかなって気もするので、ここまで書いちゃってもいいんじゃないかなと私は思いました。1つひとつのワードはパンチが強いし、攻撃的なところもある。でも、この曲も「本来こうあるべきでしょ?」ということを歌っているだけですから。こういう曲が入っていることでアルバムとしても締まるし、本当に作れてよかったと思っています。

Takassy ラップの曲にするからにはヒップホップのセオリーにちゃんと則りたい気持ちもあったんですよ。本気のラッパーの方々がこの曲を聴いたときにがっかりされないように、ちゃんと自分たちの心から出てくる本当の言葉だけを発信したかったんですよね。

Kamus 純粋に楽曲としても新しいエンガブを見せられているので、今まで聴いてくれてた人にも、新しくハマってくれた人にも、たくさん届いたらうれしいです。

Takassy この曲はかみゅっち(Kamus)の声も入ってるしね。

Kamus そう! 実はいっぱい入ってるんです。ぜひ私の声を探してみてください。

Kamus

Kamus

優秀な添削マシーンHIDEKiSM

──5曲目「90's」はタイトル通り、90年代にヒットした楽曲のタイトルが歌詞にちりばめられています。相当面白い仕上がりですよね。

Takassy こういう曲をずっと作りたいと思っていたので、歌詞はサラッと書けました。サビの「Tomorrow never knowsでもdon't wanna cry」というフレーズがパッと出てきたときに、「あ、これはもういい曲になるわ」と思えて(笑)。メロディに関しては、鼻歌でもサラッと歌えることを念頭に置いて作りました。エンガブのメロディは案外、難解だったりするんですけど、この曲はみんなで一緒に気持ちよく歌えるようにしたかったんです。

Kamus 聴いていてすごく心地いいサウンドとメロディになっていますね。歌詞には聞き覚えのある曲名がたくさん入っているから、私たちからするとちょっと懐かしい気持ちにもなれるし。90年代のヒット曲って、今でもカラオケランキングの上位に入っていたりして、愛され続けていると思うので、若い世代の方にもきっと響くんじゃないかなと思います。気になったタイトルがあればサブスクですぐ聴けますしね。

Takassy 歌詞の中に1つでも知ってる曲名があれば、それが自分の思い出とリンクしていくはずだと思ったので、できるだけジャンルに偏りがないように曲を選んでいくことを意識しました。ありがたいことにうちにはHIDEKiSMという優秀な添削マシーンがいるので、ずいぶん助けられました(笑)。

HIDEKiSM 「残念なお知らせです。この曲は90年代ではなく00年代です」とか、「同じ曲名が違うフレーズで2度出てきますけど、よろしいんでしょうか? よろしければそのままでもいいのですが」みたいな。

HIDEKiSM

HIDEKiSM

Takassy 言い方がイヤらしいんですよ(笑)。

HIDEKiSM あははは。この曲はぜひカラオケで歌ってほしいですね。その流れで歌詞に出てくる曲もどんどん歌ってほしい。

Takassy そうね。「このタイトル知ってる、歌いたい!」みたいなノリでどんどんデンモクが埋まってく、みたいなのが理想ですね(笑)。

狂ったように踊りたい

──そして8曲目にはラテンテイストの「The Crown -No necesito, No queiro-」という新曲もあります。

Takassy 突然、様子のおかしい曲が(笑)。エンガブは情熱的なパフォーマンスが似合うので、タンゴを盛り込んだ曲をずっとやりたかったんですよ。ただ、今回はそこにラテンっぽいピアノを入れてしまったので、一気に無国籍な曲になってしまい。挙句の果てにサビはヒップホップのビートを使っているので、ものすごく雑多な感じになりましたね。歌詞はふと思いついて、物語調にしてみました。

──一見、ファンタジー的なストーリーですけど、いいメッセージが込められてもいますよね。

Kamus ファンタジーっていい表現よね。

Takassy そうね。もともとこの曲は「ロード・オブ・ザ・リング」みたいなイメージで書き始めたから。ここで言いたかったのは価値観なんですよ。時に人が押し付け合ってしまう価値観というものを“クラウン”に例えて書いています。この曲で言いたかったところはHIDEKiSMさんの語りのパート。ちょっと古臭いかなと思ったんですけど、声を加工することでなかなかいい仕上がりになったと思います。

HIDEKiSM セリフだからこそ伝わることもあるし、それによって物語っぽさがより強まる効果もあるかなって。私としては全然、抵抗はなかったです。Takassyの指示通り言わせていただきましたわ。

Takassy 従順! 素直!(笑)

Kamus ステージ上ではこんなパフォーマンスしたらカッコいいかもね、みたいな話は3人でしていて。具体的にはまだ固まっていないですけど、ライブではきっと楽曲の世界観にマッチした振りが付くことになると思うので、そこもぜひ楽しみにしていてほしいですね。

Takassy この曲では狂ったように踊りたいよね(笑)。

ENVii GABRIELLA

ENVii GABRIELLA

「また来たい」と心から思ってもらえるショーに

──7月30日には全6公演のツアー「ENVii GABRIELLA LIVE TOUR 2023 ENGABASIC」もスタートしますね。

Kamus はい。今の我々がやりたかったことを詰め込んだアルバムを持って回るツアーが本当に楽しみです。前回のツアーから1公演増えたし、個人的には自衛隊時代に暮らしていた仙台でライブができるのがすごくうれしいんですよ。エンガブとしての東北初ライブも含め、皆さんにカッコいい私たちの姿を見てもらえるようにがんばりたいと思います。

HIDEKiSM ライブの本数が増え、名古屋は会場の規模も大きくなったツアーになるので、しっかりと成長したエンガブのパフォーマンスをお見せしたいですよね。「去年のツアーのほうがよかったわ」と思われちゃったら次はきっとないですから。絶対に「また来たい!」と思わせるライブをしますので、ぜひ楽しみにしていてください!

Takassy 正直に言うと、新規のお客さんを楽しませる絶対的な自信はあるんですよ。なので、私としては何度もライブに足を運んでくださっている方々にこそ「また来たい」「エンガブについてきてよかった」と心から思ってもらえるショーにしたいんです。それが実現できればきっとエンガブの存在はもっともっと広がっていくと思っているので。毎公演、全力で臨みますので、ぜひ遊びに来てください。

ツアー情報

ENVii GABRIELLA TOUR 2023 ENGABASIC

  • 2023年7月30日(日)宮城県 誰も知らない劇場
  • 2023年8月6日(日)福岡県 DRUM Be-1
  • 2023年8月12日(土)大阪府 BIGCAT
  • 2023年8月13日(日)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2023年8月20日(日)北海道 cube garden
  • 2023年8月26日(土)東京都 LIQUIDROOM
ENVii GABRIELLA

ENVii GABRIELLA

プロフィール

ENVii GABRIELLA(エンヴィガブリエラ)

Takassy、HIDEKiSM、Kamusの3人による総合エンタテインメントユニット。soul juice名義で作家活動もしていたTakassyを中心に結成され、2017年3年に活動開始。“動画で楽しむ新宿二丁目”をコンセプトにスタートさせたYouTube番組「スナック・ENVii GABRIELLA」が徐々に人気を集め、チャンネル登録者数が20万人を突破する。2018年6月に1stアルバム「Snack ENVII GABRIELLA」、2019年6月に1stシングル「豪華ネェサン」をリリース。2021年3月にベストアルバム「ENGABEST」を発表した。同年10月にキングレコードよりリリースしたデジタルシングル「Moratorium」でメジャーデビュー。さらに11月に「DYSTOPIA」、12月に「CABARET」と3カ月連続でシングルを配信した。2022年3月にメジャー1stミニアルバム「Metaphysica」を発表。2023年6月にメジャー1stアルバム「ENGABASIC」をリリースした。