ENVii GABRIELLA「Metaphysica」インタビュー|メジャーのステージで多彩に進化、拡張していくエンガブが目指すもの (2/2)

LGBTQにまつわる言葉自体がなくなればいいな

──ミニアルバムには連続配信された「Moratorium」「DYSTOPIA」「CABARET」に加え、5つの新曲が収録されています。オープニングを飾るのは、エンガブのセクシャリティだからこそ描けるラブソング「Finally Found You」。これ、本当にいい曲ですよね!

全員 わーうれしい!

Takassy この歌詞自体はもう何年も前から1曲分まるまるあったんですけど、なかなかメロディが出てこなかったんですよ。そういう意味では数年かかってようやく形になった曲。内容的としては、それまで卑下してきた自分のセクシャリティを含めた人生が、大事な人との出会いによって肯定できたというもので。「このセクシャリティじゃなかったら、この人とは出会えてなかったんだな」っていう。

──そう思えるようになるまでの厳しい時期のことも赤裸々に描かれている印象がありますね。

Takassy 思春期の頃って、周りの友達には普通に恋人ができるけど、自分にはそれが難しいわけですよ。学生時代に男同士で恋愛をするっていうのは、BLの世界でしか巻き起こらないようなことなので。だから常に片思いで終わっていたという。でもそういったことすらも、この人と出会うための試練だったんだなと思えるようになったというかね。すべてを許せてしまう感じがあったんです。3人で内容的な擦り合わせはもちろんしましたけど、基本的にこれはかなり個人的な曲にはなっていますよね。

──とは言え、ここで描かれている感情は誰にでも当てはまるようなものでもあると思うんですよ。どんな人でも自分に重ね合わせて聴くことができる。そこが素晴らしいなと。

Takassy 確かにそうなんですよ。別にゲイじゃなくても、男と女であったとしても、似たような経験ってあるような気がしますから。お互いが男と女じゃなかったら巡り合わなかったという捉え方もできるし。そういう意味ではみんなに共感してもらえる曲になったなって改めて思います。私たちはそもそも「LGBTQだけどがんばろう」ということではなく、そういう言葉自体がなくなればいいなと思って活動しているところがあって。性別関係なく、みんなが思いを共有できることが目指すべき最終地点なので、今回はあえて1曲目にこの曲を収録することにしました。

Takassy

Takassy

HIDEKiSM いやーもう私はこの曲が本当に大好きで。聴きながら涙した夜もありました。

Takassy あははは。よく泣くわね(笑)。

HIDEKiSM この曲って、ファンの皆さんや支えてくれるスタッフの方との関係性にも投影できるじゃないですか。私はそもそもそういう曲として作られたものだと思ったから、聴いた瞬間にホロリときてしまったんです。「いい曲!」って。でもTakassyに聞いたら、実際はラブソングとして作られたものだって知ったんですけど。

Takassy 最近よね、HIDEKiSMがそれを知ったのは。

HIDEKiSM うん。「えーそうなの⁉」みたいな(笑)。でも、この曲はそれでいいんだと思うんです。聴く人ごとに、それぞれが思い浮かべる対象が違っていいわけじゃないですか。しかも、どんな対象にも当てはまって共感してもらえる曲になっていますから。この曲は大切に一生歌い継いでいきたいです。

Kamus 前を向いて新たなステップへと踏み出すきっかけになるような曲でもありますからね。これをライブでどうパフォーマンスするか、今からワクワクしてます。

Carlos K.にアレンジされるのを待っていた「Ride」

──「Ride/Reboot」と「Sorry Not Sorry」はライブ映えしそうなダンスチューンですね。

Takassy エンガブには結成当初から「Ride」という曲があって、ライブだけでやる曲としてすごく人気があったんですよ。ただ、HIDEKiSMさんがあまりお好みじゃなかったようで(笑)。リリースがずっと先延ばしになってたんです。

HIDEKiSM いや、当時からカッコいい曲だとは思っていたんですよ(笑)。でもこの曲はそもそもTakassyが他グループのコンペに向けて作った曲だったので、私たちがやるにはちょっとボーイッシュすぎるような気がしていて。だから音源としてリリースするのがちょっと気に食わなかったというか。

Takassy 言い方!(笑)

HIDEKiSM ごめんなさいね(笑)。でもインディーズの最後に出したベスト(2021年3月リリースの「ENGABEST」)にも収録しなかったら、「なんで『Ride』が入ってないのよ!」ってファンの皆さんから責められて(笑)。

HIDEKiSM

HIDEKiSM

Takassy 言いたかったわよ。「HIDEKiSMがヤダっつってんのよ!」って(笑)。まあでも本当に音源化が熱望されていた曲でもあったので、今回はCarlosさんにお任せしてリブートしてもらったんですよね。なのでタイトルが「Ride/Reboot」になったっていう。

Kamus 私はもともとの「Ride」も大好きだったんですけど、今回リブートされたことでより大好きな1曲になりました。よりセクシーで大人っぽい、高級車のような仕上がりになったかなって。

Takassy ホントにそうよね。「これはもうCarlosさんにアレンジしてもらうために今までリリースしてこなかったんだな」と思えるくらい大満足な出来になってます。

HIDEKiSM 本当にもう大満足でございます(笑)。

Kamus で、もう1曲の「Sorry Not Sorry」はエンガブらしさというか、パーティっぽさのある楽曲で。けっこう歌詞では毒を吐いてすっきりしちゃってる感じなので、ステージでパフォーマンスするのもすごく楽しみ。めちゃくちゃ盛り上がりそう!

Kamus

Kamus

──この曲は作曲もCarlosさんが手がけていますよね。

Takassy エンガブとしては初めて私以外の方が作った曲を歌いました。この曲はもともと、Carlosさんがほかのアーティストのコンペに出していたものだったんですよ。それを私がたまたま聴いて超気に入ってしまったので、ちゃんと許可をいただいたうえでぶん取ったっていう(笑)。で、歌詞だけ私が書き直しました。

──エンガブのちょっと尖った部分が垣間見える歌詞になっていますよね。曲をぶん取ったこともしっかり書かれていますし(笑)。

Takassy そうですね。ちょっと皮肉交じりな歌詞になったと思います(笑)。こういう歌詞はこの曲で最後かもね。

HIDEKiSM ずいぶん勝気だもんね(笑)。

──「女優(仮)」はまたガラッと違う雰囲気を持った1曲です。

Takassy ミニアルバムの中では一番コロナ禍の影響を受けた曲だと思います。この1、2年は医療従事者の方を含め、皆さん本当に大変で。みんながしっかりがんばることが当たり前になってしまったからこそ、そこに気付きづらくなってしまったところがあるし、労いの言葉をかけるのすら忘れるような時代になっている。でもね、たったひと言「おつかれさま」とか「ありがとう」とか言葉をかけてあげるだけで、状況が変わる人もたくさんいると思うんですよ。そういった気持ちをこの曲では吐き出した感じでしたね。

──この曲で救われる人はきっと多いと思います。

Takassy 世の中には「がんばろう」って歌う曲がすごく多いけど、私は自分の胸の内を吐き出したほうがいいなと思ったんです。世の中に向けた「莫迦ばかり 莫迦まみれ」という言葉はどうしても言いたかったかな。自分としては言い切れた感覚があるので、ここから何かを感じ取ってもらえたらうれしいです。

Kamus、新しい顔よ!

──そしてラストには本作のリード曲にもなっている「ハッピーハッピーウェイウェイドンチー」が。この能天気とも言える楽しさがエンガブの大きな魅力ですよね(笑)。

Takassy 「Finally Found You」や「女優(仮)」とは真逆とも言える曲ですよね(笑)。これはそもそも生配信中にHIDEKiSMが「ハッピーハッピーウェイウェイドンチー」ってポロッと言い出して。すげえ語呂いいなと思ったから、それをもとにして作ったんです。歌詞の内容に関しては……昨年末にテレビの音楽番組を観てたら、「みんな“がんばれ”とか“命大事”とか言うじゃん」って思っちゃって。そんなことわかってんだけど、みたいな(笑)。別にケンカを売ってるわけではないんだけど、世の中に説教くさい曲がたくさんあるんだったら、私たちは意味のない曲を歌いたいなと思ったんですよね。毎日楽しければそれでいいじゃんという気持ちをぶち込みました(笑)。

HIDEKiSM 本っ当にふざけてますよねえ(笑)。だってね、この曲のタイトルを言うだけで笑えてくるじゃないですか。ラジオでオンエアしていただいたとき、パーソナリティの方がマジメなトーンで「はい、お届けしたのはENVii GABRIELLAで『ハッピーハッピーウェイウェイドンチー』でした」って言ってたら、もうねえ(笑)。

Kamus 超ウケる(笑)。楽しい気持ちになるわよね。

ENVii GABRIELLA

ENVii GABRIELLA

HIDEKiSM タイトルだけ取ってもそれくらいパンチがあるし、曲を聴けば一瞬でバカになれる。みんな日々、めちゃくちゃがんばっているわけだから、ちょっと現実逃避してバカになる瞬間があってもいいじゃないですか。そういう役割の曲になってほしいですね。

Kamus ホントに元気になれる曲。この曲でパフォーマンスしてるときは、いつにも増して元気いっぱいです!

HIDEKiSM あら、アンパンマンかな?

Takassy あははは(笑)。ホントにこの曲で踊ってるKamusは関節取れるんじゃないかってくらい楽しそうだもんね。

Kamus 翌日、首痛いもん。人間ってこんなに関節曲がるんだ、みたいな(笑)。自然とそうなっちゃいますね。事務所の先輩である電撃チョモランマ隊のEBATOさんがつけてくださったサビの振りはホントにキャッチーなので、MVをしっかり観ていただいたうえで、ライブでは真似して一緒に踊っていただけたらなって思います。私も首モゲるくらい元気いっぱいで踊るので(笑)。

Takassy アンパンマンみたいにKamusの顔が取れたら、HIDEKiSMがなんとかしてくれるから(笑)。

HIDEKiSM 新しい顔投げてあげるわよ。

Kamus あ、ヒデコさん?

Takassy 違うわよ。ヒデおじさんでしょ(笑)。

Kamus そっちね(笑)。

HIDEKiSM ちょっとー!

ENVii GABRIELLA

ENVii GABRIELLA

ツアー情報

ENVii GABRIELLA TOUR2022~THE CABARET~

  • 2022年3月12日(土)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2022年3月13日(日)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
  • 2022年3月19日(土)東京都 LIQUIDROOM

プロフィール

ENVii GABRIELLA(エンヴィガブリエラ)

Takassy、HIDEKiSM、Kamusの3人による総合エンタテインメントユニット。soul juice名義で作家活動もしていたTakassyを中心に結成され、2017年3年に活動開始。“動画で楽しむ新宿二丁目”をコンセプトにスタートさせたYouTube番組「スナック・ENVii GABRIELLA」が徐々に人気を集め、チャンネル登録者数が17万人を突破する。2018年6月に1stアルバム「Snack ENVII GABRIELLA」、2019年6月に1stシングル「豪華ネェサン」をリリース。2021年3月にベストアルバム「ENGABEST」を発表した。同年10月にキングレコードよりリリースしたデジタルシングル「Moratorium」でメジャーデビュー。さらに11月に「DYSTOPIA」、12月に「CABARET」と3カ月連続でシングルを配信リリースした。2022年3月にメジャー1stミニアルバム「Metaphysica」を発表。同月に東名阪ツアーを行う。