バーチャルタレント黎明期の2017年に活動を開始した2人組ユニット・あんたまに、同期の女優部として活動していたメンバーが加わり2018年に誕生したVRアイドル・えのぐ。バーチャルライブや握手会、楽曲制作を精力的に行い、世界一のVRアイドルを目指している彼女たちの1stアルバム「真っ白な夢の世界」が9月27日にリリースされる。
この作品では、2枚組全20曲入りというボリュームでこれまでのグループの軌跡がまとめられている。またi☆Risのメンバー・若井友希が友希名義で作詞作曲を担当した新曲「Dreamin' World」もリード曲として収録。友希はi☆Risの作品などでも見せてきた作曲および作詞のセンスをフルに生かしながら、自身も声優アイドルとして活動する彼女ならではの視点で制作に取り組み、えのぐのメンバーの背中をそっと押すようなナンバーを完成させた。
音楽ナタリーではアルバムの発売を記念し、えのぐメンバーと友希による次元を超えたアイドル対談をセッティング。お互いの印象や「Dreamin' World」の制作過程などを語ってもらった。
取材・文 / 杉山仁 撮影 / 中原幸
本当に憧れの存在
──えのぐの1stアルバム「真っ白な夢の世界」には、i☆Risで活動する若井友希さんが友希名義で作詞作曲した楽曲が収められます。なんでも、白藤環さんはもともとi☆Risのファンだとか。
白藤環 初めて観に行ったライブがi☆Risさんだったんです! そのとき、握手会にも参加させていただきました。
友希 うれしい! ありがとうございます!
環 「i☆Risさんと一緒に仕事がしたい!」とマネージャーさんにずっと言っていたので、今回のお話を聞いたときは「えっ! どうしよう!?」と思いました。今も本当に緊張しているんですよ……! あの、DVDで観たライブで皆さんが「i☆Risに入ったときは、声優もアイドルも自信がなくて、『自分が追いかけてた夢とはちょっと違う』って受け入れるのに時間がかかった。でも今は楽しいって思えるようになりました」という話をしていて……。
友希 ああ、武道館のとき! デビュー4周年のライブですね(参照:みんなのことを愛しちゃうからね!i☆Ris、初の武道館で魅力と実力全開パフォーマンス)。
環 それにものすごく感動したんです! 皆さん1人ひとりのメッセージに大号泣でした。
日向奈央 私はマネージャーさんからi☆Risさんのことを教えてもらったんですけど、「アイドルと声優との両方の顔があるなんて、最強だ!」と思いました。そのあとアニソンフェスでパフォーマンスも観させていただいて、客席で「すごい!」と盛り上がってました。
環 友希さんって、i☆Risさんの中で身長が一番低いですよね。でも、めちゃくちゃパワフルで、本当にすごい。歌声が力強くて……!
奈央 本当に!
友希 小っちゃいから逆に目立つんですよ(笑)。
鈴木あんず 環ちゃんが「観て! ここがいいから!」ってi☆Risさんのことをたくさん教えてくれました(笑)。私もグループの中で一番背が低いので、ライブを観させていただいたときは友希さんことをずっと目で追っていて。本当に憧れの存在です。
夏目ハル ハルも友希さんを目で追ってました。「すごい人だなあ!」って。なので、楽曲提供のお話をいただいたときは、「友希さん!? あの方が曲を作ってくれたなんて……!」と本当にうれしかったです。
運命的だと思った
──友希さんは、えのぐの皆さんにどんな印象を持っていましたか?
友希 もともとSNSなどを拝見して存在はずっと知っていて。楽曲制作のお話をいただいたあとにちゃんとライブを観させていただきました。第一印象は「i☆Risに似てるなあ」でした。バーチャルであっても本当にそこにいるように感じましたし、私たちってライブ中の煽りがガヤガヤしていて、かわいいだけではないグループだと思うんですけど、えのぐさんも同じようなパワフルさがあって。そういう部分がすごく似てるなと思いました。
──i☆Risの3rdアルバム「WONDERFUL PALETTE」が発表されたとき、友希さんがインタビューで「i☆Risはそれぞれに個性が違うけれど、絵の具のようにその違う色が混ざってi☆Risの色になる」というお話をされていたんですが、この話がえのぐのグループ名の由来と偶然にも同じで驚きました。
友希 ああ、言ったかもしれないです! えのぐさんも、皆さんそれぞれに個性や魅力がありますよね。
えのぐ ありがとうございます!
──今回えのぐに提供した「Dreamin' World」はどのように制作されたんですか?
友希 1stアルバムの曲ということもあって、“次のステップ”というテーマをいただいていたんです。それは私たちi☆Risも経験してきたテーマでもあるので、「今こういう気持ちなんだろうな」「こういうことを考えるんじゃないかな」と、自分のこれまでの経験と重なるような部分を見つけていく感覚でした。
──自分のことを思い返しながら、えのぐの皆さんの気持ちを想像したんですね。
友希 はい。この曲の歌詞には「こうあってほしいな」という私の希望も入っていて、4人が共感してくれたらいいなと思いながら書きました。ライブのときの自分や、えのぐさんの姿を思い返しながら歌詞を考えていったような気がします。
えのぐ へー!
友希 「ライブ中、メンバーとどうやって目を合わせてるのかな」「どんな景色を観ているかな」「ファンの方のことがどう見えているかな」とか、そういうことを考えましたね。曲調については最初の打ち合わせで、「WONDERFUL PALETTE」のときに作曲した「Growing days」みたいなさわやかさを出してほしい、というお話をいただいて、私の得意分野だなと思いました(笑)。私はかなりポジティブな人間で、「どんどん前に行こうぜ」というモードのほうが自分に合っているので、「こういう感じか!」とすぐにイメージできて。そのうえで、これまでのえのぐさんの曲とはちょっと違う曲調のものができたのかなと思います。
──曲や歌詞はすぐに浮かんできたんですか?
友希 最初にえのぐのスタッフさんとリモートで打ち合わせをして、そのあとすぐにバーッと浮かんできました。「迷わず Try Try Try!」の部分が頭の中でずっと流れていて、完成版はそのときに吹き込んだデモ音源とそんなに変わっていないんですよ。
あんず すごい!
友希 運命的だなと感じました。普段はそんなふうにスッと曲ができることってなかなかないんですよ。まだメンバーの皆さんと会う前でしたが、私がもともと持っていたえのぐさんのイメージが4人にぴったり合っていたんだと思います。
環 私としては「友希さんが作ってくださった曲を歌える」という時点ですでに最高だったんですが、いただいた曲がとてもいい曲で、本当にすごいなと思いました。歌うのがかなり難しい曲なんですけど、自分にとって挑戦にもなりました。
奈央 「バズらせていこう」みたいに、今どきの言葉もたくさん入れてくださっていて、それが自分の中にスッと入ってきた感じがします。ノリもよくて歌っていて本当に楽しいです。
友希 うれしい! えのぐさんは時代の最先端を行っているグループだと思うので、歌詞にも最先端の言葉を入れていこうと考えたんです。
──友希さんからのえのぐさんへの応援歌のようにも聞こえますね。
友希 そうですね。まさにそういうイメージで歌詞を考えていきました。
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メンバーのお気に入りの歌詞は