手応えのなかった「香水」が生み出した大混乱
──「香水」は曲を作り始めて何番目にできた曲なんですか?
「チェスト」や「俺は俺で生きてるよ」のあとだから……5曲目です。
──曲作りの感覚がつかめたあとにできた曲?
そうですね。
──瑛人さんの場合、どうしても「香水」の話はしばらくし続けないといけないと思うし、今日も聞きますけど、すごくよくできた曲だと思うんです。シンプルに繰り返す構成で、優しさがあって、さらに「え?」と引っかかるようなフレーズが入ってくる。計算して作られたものだとしたらすごいなと思うんですけど、瑛人さんを見ていると「そんなに考え込んで作ったわけではないだろうな」と。実際どうですか?
そうですね。サビのフレーズは本当にひょっと出てきた感じでした。
──レコーディングはこれが初めて?
はい。でも、レコーディングされた自分の声を聴いてみたら子供っぽいし、もっとできるようになってから出したほうがいいのかなって不安になりました。「香水」と「またね」「君の愛と僕の愛」の3曲を出そうとしたんですけど、音楽学校の同級生に電話して「どう?」って聞いたんです。そしたら「めっちゃいいじゃん! もったいないよ、出しなよ」って言ってくれて。そっかあって思いながら、パソコンでピッ!て配信したのを覚えています。本当に最後の最後まで手応えはなかったです。
──これからしばらくは「香水」みたいな曲を作ってほしいというオーダーがあるだろうし、それは瑛人さん本人だけじゃなくて、今はいろんなアーティストが「ドルチェ&ガッバーナみたいな曲を」って頼まれてると思うんですよ。
すごく困りますよね、そんなこと言われたら……(笑)。
──単に固有名詞を入れればいいという話ではないし、計算で作ったわけではないからこそ「もう1回こういう曲を作ってください」って言われたら困りますよね。「香水」が1人歩きしてるみたいな感じもちょっとあるんじゃないかと。
はい、1人歩きしまくりですよ。
──今の状況を楽しめてます? フラストレーションは溜まりませんか?
ストレスですか? それは感じないです。うれしい限りで。
──あまりにも自分の知らないところで盛り上がりすぎちゃったから、変にもてはやす人が出てきたり、逆に売れてるからという理由だけで叩く人がいたり、本当にいろんなめんどくささを今日本で一番受けている人だと思うんです。
そんなですかね!?(笑)
──一方で、モノマネ番組でネタに上がっているのを見ると「本当にブレイクしてるなー」と感じます。モノマネは基本「みんなが知ってる人」前提ですからね。真似される側はどんな気持ちですか?
めっちゃ面白いし、うれしいです(笑)。最近だと亀田史郎さんと亀田大毅さんがモノマネしてくれていて面白かったですね。
──これも「まあいっか」システムの強さだと思うんですけど、そうやって楽しんでいられるのがすごいなって思うんですよ。
Twitterでちょっと腹立ったりしたんですけど、今はそれも「まあいっか」って目に入らないようになりました。いい言葉は本当にめっちゃうれしいですし。今朝も「グッドモーニング!」ってツイートしたら、みんな「いい朝!」とか返してくれて(笑)。うれしいなって。
──根が温厚な感じがしますけど、絶対許せないようなことはありますか?
なんだろうな……いろいろあると思うんですけどね。食べ物の恨みで怒ることはよくあります。すごくお金がないときにコストコで大きい肉とトルティーヤを買ったんですよ。自分で食べるためだったんですけど、その日ちょうどKANが飲みに来てて。2人で飲んだあと俺が先に寝て、朝起きたら肉がもう1、2枚しかなかった。それでブチギレて、そのあと3週間くらいグチグチ言ってました(笑)。
直太朗の事務所を選んだ理由
──「香水」がブレイクする中、瑛人さんが森山直太朗さんの事務所として知られるセツナインターナショナルに所属すると聞いたときは、適材適所というか、一番いい場所を選んだなって感じがしたんですよ。聞くところによると、氣志團の綾小路翔さんからの紹介だったとか。
最初はルンヒャンさんに相談してたんです。「こんな感じになっちゃって、僕どうしたらいいですか?」って。それでルンヒャンさんと一緒に事務所やレーベルの方たちとお話してたんですけど、2人ともパンク状態になっちゃって。そこでルンヒャンさんがつながりのあった翔やんさんに相談したら、翔やんさんが直太朗さんも呼んでくださり、翔やんさん、直太朗さんと初めて会って話すことになったんです。
──話してみて、ここなら安心して身を預けられそうだと感じたんですか?
はい。いろいろ話したんですけど、そのあとセツナの人たちにも会って、とにかくすごく安心感があって。
──9月の「氣志團万博」では2人と共演していましたね(参照:「氣志團万博」配信版でももクロ、BiSH、瑛人、HYDE、EXIT、渋谷すばるら豪華15組競演)。なかなかすごい現場に放り込まれた感じでしたが、どうでした?
めちゃめちゃ楽しかったです! 「香水」の歌い出しで直太朗さんと翔やんさんが出てきたときは本当にびっくりしたんですけど、いっぱい笑わせてもらえてリラックスもできたし、2人の温かさを感じられて。いつもと違う感じで伸び伸びと「香水」を歌えたかなと思っています。
──ステージで翔やんと直太朗さんに将来の目標を聞かれたときは「ずっと楽しく歌い続ける!」とピュアすぎる回答をしていましたけど、瑛人さんにはガツガツしたイメージがないというか、もともと「登りつめてやる!」というタイプじゃないだろうなと思ったんです。実際はどうですか?
ガツガツは全然してないですね。なんかあったらいいなっていうのは心のどっかにありますけど、そこまでちゃんと考えて活動はしてなかったです。
次のページ »
「香水」の次の曲