ただのギャル、ナメんなよ
──アルバムには、おなじみの宮田“レフティ”リョウさんが参加された曲に加え、新しいクリエイターとのコラボ曲も収録されています。
そうですね。「honey-cage」という曲ではROMderfulさんにいただいたビートにメロディを付けていったんですよ。私の場合、展開がめちゃくちゃある曲が多いので、ビートのループに曲を乗せること自体がすごく新鮮で。歌でストーリーを作らなきゃいけないというのが、すごくやりがいもあったし、楽しかったです。
──ROMderfulさんはUKのプロデューサーですよね。
はい。私は英語が得意ではないのでやり取りを直接はしていないんですけど、刺激的な作業でした。ピアノソロを入れてほしいとお願いしたら、間奏ではなくアウトロに入れてきてくれたんですよ(笑)。「ここにソロを入れるんだ!」と思いましたけど、その感覚の違いが面白くて。すごくかわいいアウトロだったので、そのまま使わせてもらいました。いつもとは違うクリエイターの方とご一緒すると、予期せぬ方向からアイデアをもらえることがあるなという気付きがあったので、今年はそういうこともどんどんやってみたいなと思っています。
──「ただのギャル」ではLYNNさんの名前がクレジットされていますね。
インディーズ時代にずっと一緒にやっていたLYNNくんと今回改めて一緒に曲を作れたのはうれしかったですね。ちょっと月日が経ったことで、彼のスキルもめちゃくちゃ上がっていて。最高のトラックを作ってくれました。
──この曲は歌詞の内容的にもかなり衝撃作だなと。
あははは。この曲は20歳のときに書いたもので。当時の私は見た目がめちゃくちゃギャルっぽかったんですよ。髪の毛はピンクで、冬でもお腹を出して「ウエーイ!」みたいな(笑)。で、当時はクラブで歌ったりしていたんですけど、そういう場所にいるお兄さんとかによく「え、自分で曲書いてんの? ウソでしょ?」とか言われてムカついてたんです。だから、「ただのギャル、ナメんなよ」という思いを曲として書きました。2番の歌詞は今回のタイミングで全部書き直しているんですけど、ナメられたくないという思いは今も変わらずにあります(笑)。
──eillさんの「PALETTE」にはこういう尖った曲もあるのかと驚く人もいるかもしれないですよね。本当に痛快だと思います。
まさかメジャーで出せるとは思ってなかったですけどね。驚くことに、最初は「この曲をシングルカットしよう」という話もあったんですよ。ヤバくないですか、ポニーキャニオンさん(笑)。結局は私がビビってアルバムに入れることにしたので、スタッフの皆さんには「ひよってんじゃねーよ」ってマイキー(eillがエンディングテーマを担当したアニメ「東京リベンジャーズ」の登場人物)の言葉をずっと言われ続けるという(笑)。「ただのギャル」と「honey-cage」は、昔のeillの匂いがする2曲というか。それをメジャー1stアルバムに入れられたのもよかったですね。昔からのファンの方にも喜んでもらえたらいいな。
これからもみんなの近くにいられたら
──また、インディーズ時代にリリースされていた「片っぽ」がピアノ弾き語りによるアコースティックバージョンで収録されていたり、アコギと歌のみで構成された新曲「letter...」があったりと、シンプルな音像でeillさんの歌の魅力を存分に味わい尽くせる曲があったのもよかったです。
「片っぽ – Acoustic Version」のピアノは私が弾いたので、大丈夫かなという不安もちょっとあるんですけど(笑)。この曲の根源というか、最初のデモに近い形なので、その雰囲気を楽しんでもらえたらうれしいですね。「letter...」に関しては、インディーズのときにもこういうシンプルな楽曲を出したことがあって、ライブでもすごく人気が高かったんです。自分の声の色がしっかり出るし、表情やニュアンスも感じ取ってもらいやすいと思うので、今回はアルバムを聴いてくれた人へ向けた手紙のような感覚で作りました。「これからもみんなの近くにいられたらいいな」という私の思いを感じていただければと。
──大充実のメジャー1stアルバムが完成したことで、未来に向けた新たなビジョンも見えてきていますか?
相変わらず自分に自信はないんですけど(笑)、それもまた自分だなと改めて思えるようになりました。ただ、自分が作った作品をちゃんと愛してあげて、そこに自信を持つことは必要だなとすごく思うようになったんです。今まではそれがあまりできていなかったけど、このアルバムを作ることでそう思えるようになった。だから、これから先に生まれる作品もちゃんと愛して、信じてあげることができるな、と今は思っています。
──eillさんの中にはまだまだたくさんの色があるはずですしね。
「まだまだこんなもんじゃないですよ!」という気持ちはもちろんあります。ただ、今回のアルバムで出し切った感もあるので(笑)、ここからしっかり充電しようかなと思っています。
eillはブルーローズに似ている?
──2月6日からスタートする東名阪ツアー「BLUE ROSE TOUR 2022」も楽しみです。
私もすごく楽しみです! アルバムリリース直後に始まるツアーではありますけど、何度も何度も繰り返し聴いたうえで遊びに来てほしいですね。本当にさまざまな色の曲を作ることができたので、自分が1色1色にちゃんと染まりながら、それぞれの曲の世界にみんなのことを連れて行けるライブにしたいと思います。曲によってはダンスもがんばろうかなと思ったりもしています(笑)。
──ツアータイトルの「BLUE ROSE」は「23」の歌詞にも登場しますし、eillさんにとって大事なキーワードなんですか?
そうですね。“ブルーローズ=青い薔薇”というのは、もともと存在し得ない花だったんですけど、いろんな人の力によって存在できる花に変わったんです。それによって花言葉も「不可能」から「不可能を可能にする」に変わって。私は自分のことを最初からなんでもできる人間ではないと思っていて、いろんなことを可能にしていきたいから活動を続けているところがあるんですね。そこがブルーローズに似ていると思ったので、ずっと自分の大事なモチーフにしています。
──じゃあ今回のツアーでもまた“不可能を可能にする”eillさんの姿が見られることになるんでしょうね。
そうなったらいいなと思っています。同時に、来てくれた皆さんもこのライブを通して何かを可能にするきっかけを得てくれたらいいなと思っています。次に会ったとき、お互いに成長した自分のことを報告し合えたら最高じゃないですか。だから私にとっても、来てくれた人たちにとっても、何かの始まりになるようなツアーにしようと思います。
ライブ情報
BLUE ROSE TOUR 2022
- 2022年2月6日(日)東京都 チームスマイル・豊洲PIT
- 2022年2月11日(金)大阪府 なんばHatch
- 2022年2月12日(土)愛知県 DIAMOND HALL
プロフィール
eill(エイル)
東京都出身のシンガーソングライター。15歳の頃から歌い始め、同時にPCで作曲も開始する。2018年6月にシングル「MAKUAKE」でCDデビュー。ソウルやR&Bなどブラックミュージックの要素が色濃く反映された楽曲やシルキーかつソウルフルな歌声が魅力。K-POPをはじめ、韓国カルチャーへの造詣が深く、テヨン(ex. 少女時代)やEXIDへの楽曲提供などでも知られる。2021年4月にテレビアニメ「東京リベンジャーズ」のエンディング主題歌「ここで息をして」でメジャーデビューを果たし、その後「hikari」「花のように」「23」と立て続けに配信シングルをリリース。また同年9月に配信された竹内まりや「プラスティック・ラブ」のカバーは、映画「先生、私の隣に座っていただけませんか?」の主題歌として使用された。2022年2月にメジャー1stアルバム「PALETTE」をリリースする。
衣装協力
イヤリング 15950円(パメオポーズ)
ブーツ 35200円(ビアバンダ / エックスナインデザインラボ)
その他 スタイリスト私物
パメオポーズ:03-6840-5553
エックスナインデザインラボ:03-5411-1102