「ギルティクラウン」の世界に近付いていくEGOIST
──ryoさんとしては、EGOISTの今後の活動についてどのようなビジョンを持たれていますか?
ryo 「ギルティクラウン」の続きの世界みたいなものがあるとEGOISTとして輪が広がるかもしれないし、もしくは終焉に向かっていくかもしれないし、そこが難しいところなんですよね。終わり方にもトレンドがあると思うんですけど、EGOISTの場合は活動休止とか意味がないし、かと言って続けるためにEGOISTそのものの存在意義を考えていくと「ギルティクラウン」にたどり着くわけで。そこの前後の話を勝手に拡張して作って、物語を神話的な感じで継ぎ足して作っていくやり方もあるし、考える余地が非常に大きいんですよ。
荒木 なるほど。でも、もはやEGOISTの本体は今の活動にあって、それのルーツをたどったときに「ギルティクラウン」があるということでいいと思うし、そういうことだと思います。
ryo じゃあ、そうします(笑)。その言葉は非常にヒントになって、荒木さんからそう言ってもらえると方向性が決まるというのを常々思ってたんです。
──EGOISTの直近の予定としては、12月29日に行われるライブ「EGOIST Special gig "ALTER EGO"」「EGOIST sync*001」で、東名阪の会場で同時に同じライブを体験できるという新しい試みにも挑戦されますね。
ryo ネットワークでつないで、3カ所中継でライブを行うので、どこの会場もクオリティが損なわれることはないし、違いはchellyちゃんがその場にいるかいないかだけ。それは言われなきゃわからないんですよ。そこで差分がまったくないライブができるのはEGOISTだけだと思うんですよね。この間Perfumeが世界3カ国中継とかやってましたけど、なんなら海外でも同時にやったり、ボリュームを拡大して全10カ所とかもできるし、これは賛否両論巻き起こるでしょっていう。少しずつ「ギルティクラウン」の世界に近付けているのかなと思って。
荒木 その目論見自体、俺は忘れてましたよ(笑)。いや、そんなすごいこと目論めないです。
──そういう意味では、テクノロジーの進化と共に新しいEGOIST像を発展させていくのが、今後の活動の鍵になりそうですね。
ryo その着眼点が大事で、自分が最近興味あるのは現代アートとか、落合陽一さんが研究してるような最先端の技術なんです。例えば空中に絵を描くとか、そういう発展がまさにEGOISTのためにあるんじゃないかと思ってて。まあ触れるまではいかないと思いますけど、近い将来そういうところと組めたら面白いなと思いますね。
荒木 技術の発展がプロジェクトの音楽の新たなきっかけを生むなんて仕組み、よく見つけましたね(笑)。
──それこそ「ギルティクラウン」の世界は2029年という設定でしたけど、その頃には劇中のEGOISTのような存在がいてもおかしくない未来になりそうですよね。SF的な想像力に現実が追い付くというか。
ryo まさにそういうことです。
荒木 すごい。いのりはどんどん先に行きますね。見守っているだけで精一杯です!
互いの根幹にある復讐心と人とつながりたい思い
──最後にお互い聞きたいことがあれば、この機会にどうぞ。
荒木 これは俺個人が最近考えてることでもあるんですけど、ryoさんはモノ作りのモチベーションを何に求めてますか? 俺は超小さいんですけど、高校のときに学校のなかでもダメグループに所属してて(笑)、その頃の俺を侮っていたヤツらに「思い知れ!」っていう気持ちなんですよね。
ryo 復讐という意味合いでいくと、自分もその気持ちがかなり強いです。自分は「13日の金曜日」に出てくるジェイソンみたいな存在がすごく好きで、物を言わずに次々と人を殺していく姿に共感するんですよ。世の中のおぞましいものにこそ安心すると言うか。これはあんまり話したことないですけど。
荒木 確かに初めて聞いた。
ryo バンドで言うとMarilyn Mansonが好きで、フロントマンのマンソンは所謂のけ者にされながら育ってきたんですけど、音楽に出会って自分を高めていくことで、世の中に復讐していくんです。でも、その根幹にあるのは「普通の人になりたい」っていう気持ちの裏返しだと思うんです。本当は自分、サラリーマンになりたかったんです。小学生のときに書いた将来の夢も「サラリーマンの課長」で(笑)、吉良吉影(「ジョジョの奇妙な冒険」に出てくるキャラクター)じゃないですけど小さい頃から普通になりたかった。ただ、どうしてもなれなくて。
荒木 それはどう考えてもなれない人の願いですよね。
ryo たぶん荒木さんもわかってくださると思うんですけど、人とうまくやれないことの裏返しで、人と同じことをやろうとしてるんです。自分はただ生きてるだけでは人を巻き込むことができないので、音楽を通して人を巻き込めたらうれしくて。
荒木 それはすごいわかる。物作りを通してでないと巻き込めないんですよね。
ryo そうそう。そういう意味でクリエイトの根幹は復讐から始まってて、「人とつながりたい」「普通でありたい」っていう願いが作品につながっていく。こういうのが文字になるとすごいアーティストみたいに見えて、誰かと会ったときにギャップを生むのであまり言いたくないんですけど(笑)。だから基本は「普通でありたい」というのが自分らしいところだと思うし、モチベーションにつながってると思いますね。
荒木 面白い話が聞けました。
ryo 自分が聞きたいのは、荒木さんは富野由悠季さんへの憧れも純粋で、クリエイティブと言うか生き様自体が純粋だと思うんですよ。その純粋さが自分自身を傷付ける事態ってけっこうあるじゃないですか。
荒木 まあ軋轢は生みますね。
ryo で、今もこうやってクールに返されますけど、それが自分にはできなくて。それはどういうメンタルで臨めばそういう感じになるのかなと思って。
荒木 答えになってるかはわからないですけど、俺のメンタルは「俺なんて大したことない」っていうところに重要なポイントがあるんですよ。俺自体はそもそも大した人間である必要すらなくて、ryoさんを含めていろんなすごい人が世の中にいるから、その人に「好きだからもっとください」って言うのが俺の係なんですよ。それで失敗して転んだとしても、俺はもともと大したことないから大丈夫っていう。だから傷付いても、けっこうしぶとい(笑)。もちろん人の仕事のよさがわかる目利き的な要素は持ってるかもしれないけど、俺にできることは何もないんです。
ryo 自分自身はたいしたことないというのは共感できるんですよ。自分自身も才能があると思ったことはないんですけど、能力を獲得するための努力は十分にしてきたので、そういう意味で自分は才能のあるやつに負けたと思ったことはなくて。そもそも才能があるというのはどういうことなんだろうと思って。天才に対する憧れがあるんですかね。
荒木 たぶんみんなryoさんのことは天才だと思ってますよ。でも、そういう意味では思ってることは似てると思います。
ryo 荒木さんの受け答えを見てると「こうありたい」って思えるんですよ。大人も納得するし、子供も納得する雰囲気があって、自分は何を言ってもナメられるんですよ(笑)。
荒木 俺だってナメられますよ。ryoさんがそう思ってるなんて誰も思ってないだろうなあ。でも、そういう共通項を含めて、俺は今回のアルバムを聴いたときに「この人は1人だ」という共感を得たんだと思うんです。
- EGOIST「GREATEST HITS 2011-2017 "ALTER EGO"」
- 2017年12月27日発売 / SACRA MUSIC
-
完全生産限定盤
[CD+Blu-ray Disc+グッズ]
9500円 / VVCL-1148~50 -
初回限定盤A
[CD+Blu-ray Disc]
4500円 / VVCL-1151~2 -
初回限定盤B
[CD+DVD]
4000円 / VVCL-1153~4 -
通常盤
[CD]
3000円 / VVCL-1155
- CD収録曲
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- 英雄 運命の詩
- Welcome to the *fam
- KABANERI OF THE IRON FORTRESS
- Door
- Ghost of a smile
- リローデッド
- Fallen
- 好きと言われた日
- All Alone With You
- カナデナル
- 名前のない怪物
- Planetes
- The Everlasting Guilty Crown
- エウテルペ
- Departures ~あなたにおくるアイの歌~
ボーナストラック
- Departures ~あなたにおくるアイの歌~ Acoustic Version
- 初回限定盤・完全生産限定盤Blu-ray / DVD収録内容
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- “Departures ~あなたにおくるアイの歌~” Music Video
- “The Everlasting Guilty Crown” Music Video(TV Edit ver.)
- “Planetes” Music Video
- “名前のない怪物” Music Video
- “All Alone With You” Music Video
- “Fallen” Music Video
- “リローデッド” Music Video
- “Ghost of a smile” Music Video
- “Door” Music Video
- “KABANERI OF THE IRON FORTRESS” Original Movie
- “Welcome to the *fam” Music Video
- “英雄 運命の詩” Original Movie
ライブ情報
- EGOIST「sync*001 / Special gig "ALTER EGO"」
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- 2017年12月29日(金)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- 2017年12月29日(金)愛知県 Zepp Nagoya
- 2017年12月29日(金)大阪府 Zepp Osaka Bayside
- EGOIST(エゴイスト)
- アニメ「ギルティクラウン」に登場する架空のアーティストを実体化した音楽ユニット。ryo(supercell)がプロデュースを手がけ、ボーカルは2000人を超える応募者から選ばれたchellyが務めている。2011年11月にシングル「Departures ~あなたにおくるアイの歌~」でメジャーデビュー。2012年9月に初のオリジナルフルアルバム「Extra terrestrial Biological Entities」をリリースした。その後、「PSYCHO-PASS サイコパス」「甲鉄城のカバネリ」などのアニメ作品のテーマソングを担当。さらに国内外でライブ活動を行いワールドワイドな人気を獲得する。2017年12月に初のベストアルバム「GREATEST HITS 2011-2017 "ALTER EGO"」をリリースした。
- 荒木哲郎(アラキテツロウ)
- 1976年生まれ、埼玉県出身のアニメーション監督・演出家。マッドハウスに入社後、「ギャラクシーエンジェル」シリーズなどの演出や絵コンテを手がける。2005年にOVA「おとぎ銃士 赤ずきん」で監督としてデビュー。その後、「DEATH NOTE」「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」「ギルティクラウン」「進撃の巨人」「甲鉄城のカバネリ」などの監督を務めた。総監督を務める最新作「進撃の巨人Season3」は2018年7月オンエア予定。