全力で来られたから全力で返す
──監督は「ギルクラ」以降のEGOISTの活動について、どのようにご覧になってましたか?
荒木 一番のトピックは、2013年にシンガポールのイベント(「ANIME FESTIVAL ASIA」)に「進撃の巨人」の監督として行ったんですけど、そこで会場に着いた瞬間、目の前でいのりが「The Everlasting Guilty Crown」を歌ってたんですよ。そのときはびっくりしたし、めちゃくちゃ感動したんですよね。「いのりが元気でやってる!」みたいな(笑)。あとは自分の身近なフィールドの作品で主題歌を歌ってることが多いのでよく耳にしてましたし、曲が毎回いいですよね。キャッチーだし、グッときます。
──「ギルティクラウン」以降で監督が印象に残ってる曲は?
荒木 やっぱり俺にとって次は「カバネリ」なんですよね。
──「ギルクラ」以来のタッグでしたものね。監督はなぜ、EGOISTに「甲鉄城のカバネリ」のオープニングテーマをお願いしたのでしょうか?
荒木 ノイタミナチームとやるからには、それが一番ふさわしいと思ったし、俺自身もEGOISTにもう1回主題歌をお願いしたかったんですよね。「やっぱりここはいのりに歌ってもらっちゃおうかなあ、どう?」って言いたかったと言うか(笑)。でもやっぱり感慨はありましたね。
──ryoさんは監督からオファーをいただいていかがでしたか?
ryo その時点ですでにパイロット映像ができてたんですが、それが本当にすごかったんですよ。4話の甲鉄城の上で戦闘するシーンだったんですけど、すごくカッコいいし熱量も伝わってきて。ここまですごい映像を作ってるのを観て、もう全力で来られたから全力で返すっていう感じでしたね。それでできたのが「KABANERI OF THE IRON FORTRESS」なんです。それこそハリウッドでアニメを作ったらこうなるんじゃないかみたいな映像だったので。
荒木 パイロット映像に関しては、現場も騒然としてましたからね。喜んでる人は誰1人いない。一体どれだけやらせる気なんだと(笑)。(※映像はBlu-rayの3巻に映像特典として収録)それはそうと、俺が「カバネリ」の曲で一番思い出深いのは、イントロのやり取りなんですよ。ベスト盤の音源には入ってませんけど、テレビ版ではイントロの部分に「貴様、人かカバネか?」「どちらでもない。俺はカバネリだ」って言うセリフが入ります。セリフ自体は自分が考えましたが、そもそも「セリフ入り」という案はryoさんが提案してくれたものなんですよ。
──あっ、そうだったんですか?
荒木 俺がオーダーしたのは「歌詞にカバネリという言葉を入れてください」ということだけです。自分がEGOISTの世界にあえて違う味を付けるにはどうすればいいか考えたときに、タイトルを曲中で叫ぶものにしようと思ったんです。そもそも「カバネリ」という作品自体、1970年や80年代返りを狙った作風でもあったし、その時代のテレビアニメはタイトルを叫んでいたなと思って。
ryo 確かにそうですね。
荒木 それでryoさんには「タイトルを叫ぶ歌」という条件でお願いしたんですけど、その切り返しとしてryoさんが例に出されたのが「北斗の拳」だったんですね。あのアニメはオープニングで「世界は核の炎に包まれた」というナレーションが入るんですけど、そのニュアンスで「まずセリフが入るのはどうでしょう?」と提案されて。俺は最初「いやあ、それはあり得ないでしょう」みたいな反応をしたんですけど(笑)、あとからだんだんものすごくアリに思えてきて。
ryo そうそう。急に連絡が来て「あの件、やっぱりアリにします」って言われて(笑)。「カバネリ」は熱いアニメなので、最初はセリフを入れて「今週も始まったぞ」っていう感じで視聴者を釘付けにしたかったんです。
荒木 でも、ベスト盤を聴かせていただきましたけど、この曲は全体の中でもっと浮くのかなと思ってたら、全然そんなことなかったですね。そもそも曲調にバラエティがあるから、こういう暑苦しい曲も全然、幅として許容できるっていう。
ryo ぶっちゃけこの中で一番好きなのは「カバネリ」の曲なんですよ。EGOISTの中で一番よくできた曲が「カバネリ」で、このフォーマット以上の形を探すのが自分の中では次のターニングポイントになると思ってます。
ryoさんは家で1人なんじゃないかな
荒木 俺は好きな曲たくさんありますよ。「屍者の帝国」の曲(「Door」)がすごく好きで、予告を観たときにサビだけでもいきなり聴いても感動しましたから。映画の格調をさらに高めている感じがして、すごくよかったです。あの作品は世界観が19世紀末から20世紀頭ぐらいの感じですよね。
ryo そうですね。最初の舞台が英国で、「カバネリ」じゃないですけど列車が走ってて、くすんだ雲があって。なのでそういう空気感を感じさせるような曲にしました。
荒木 「Fate/Apocrypha」の曲(「英雄 運命の詩」)だけは今回初めて聴いたんですけど、これもすごくよかったですね。観たことのない「Fate/Apocrypha」の映像が浮かんできましたから。「ここで剣を使うはずだ!」とか勝手にイメージして(笑)。
──今回のベスト盤には新録曲として「Departures ~あなたにおくるアイの歌~(Acoustic Ver.)」が収録されてますね。
ryo これは以前に作ってずっと未発表だったものなんです。chellyちゃんとギターのプレイヤーさんにクリックなしで生演奏でやってもらって。基本はそういう雰囲気を楽しんでもらえるものにしてます。
荒木 同じメロディで、こういう聞こえ方にすることができるんだってびっくりしましたね。前半はドライ&クール感があって。
ryo 洋楽のベスト盤だとオマケでアコースティックバージョンが付くことが多いので、そういうのが入ってるとベスト盤っぽいかなと思ったんです。
──監督としても今回のベスト盤はお気に入りの1枚になりましたか?
荒木 ええ。めちゃめちゃいいですね。俺、普段からEGOISTの曲はよく聴いてるんですよ。嫁もすごく好きで、ドライブ中に「今日もryoさんの曲かけちゃうわ」「お、いいねえ!」みたいな感じで(笑)。これは余計な感想かもしれないですけど、アーティストさんのアルバムを聴いてると、その人の立ち位置と言うかイメージがみんな浮かんでいると思うんですよ。例えば、この作家さんはクラブで酒を飲んでるとか、この人は大海原を眺めているな、とか。
ryo ああー。
荒木 そういう意味で、俺はEGOISTのアルバムを聴いて、「この人は家で1人だな」と感じました(笑)。でも、それは全然ネガティブなことじゃなくて、多くの人が自分の家に1人でいるときの“友達”として、この音楽を聴くんだろうと思ったんですね。1人で寂しがってるこの音楽に対して、みんなが「私もわかる」みたいな気持ちで好きになってると言うか。俺もそうだし。
ryo それは正解ですね。荒木さんは鋭い人で、すべての事象に対して本質を突いてくるんですよ。例えば1つ何かを伝えようとするときも、ものすごく的確な事柄を例に出されたりして、それがわかりやすいんですよね。何かを経由した発信ではなくて、より核に近いところを話してくると言うか。そんな人はほかに会ったことないですね。
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「ギルティクラウン」の世界に近付いていくEGOIST
- EGOIST「GREATEST HITS 2011-2017 "ALTER EGO"」
- 2017年12月27日発売 / SACRA MUSIC
-
完全生産限定盤
[CD+Blu-ray Disc+グッズ]
9500円 / VVCL-1148~50 -
初回限定盤A
[CD+Blu-ray Disc]
4500円 / VVCL-1151~2 -
初回限定盤B
[CD+DVD]
4000円 / VVCL-1153~4 -
通常盤
[CD]
3000円 / VVCL-1155
- CD収録曲
-
- 英雄 運命の詩
- Welcome to the *fam
- KABANERI OF THE IRON FORTRESS
- Door
- Ghost of a smile
- リローデッド
- Fallen
- 好きと言われた日
- All Alone With You
- カナデナル
- 名前のない怪物
- Planetes
- The Everlasting Guilty Crown
- エウテルペ
- Departures ~あなたにおくるアイの歌~
ボーナストラック
- Departures ~あなたにおくるアイの歌~ Acoustic Version
- 初回限定盤・完全生産限定盤Blu-ray / DVD収録内容
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- “Departures ~あなたにおくるアイの歌~” Music Video
- “The Everlasting Guilty Crown” Music Video(TV Edit ver.)
- “Planetes” Music Video
- “名前のない怪物” Music Video
- “All Alone With You” Music Video
- “Fallen” Music Video
- “リローデッド” Music Video
- “Ghost of a smile” Music Video
- “Door” Music Video
- “KABANERI OF THE IRON FORTRESS” Original Movie
- “Welcome to the *fam” Music Video
- “英雄 運命の詩” Original Movie
ライブ情報
- EGOIST「sync*001 / Special gig "ALTER EGO"」
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- 2017年12月29日(金)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- 2017年12月29日(金)愛知県 Zepp Nagoya
- 2017年12月29日(金)大阪府 Zepp Osaka Bayside
- EGOIST(エゴイスト)
- アニメ「ギルティクラウン」に登場する架空のアーティストを実体化した音楽ユニット。ryo(supercell)がプロデュースを手がけ、ボーカルは2000人を超える応募者から選ばれたchellyが務めている。2011年11月にシングル「Departures ~あなたにおくるアイの歌~」でメジャーデビュー。2012年9月に初のオリジナルフルアルバム「Extra terrestrial Biological Entities」をリリースした。その後、「PSYCHO-PASS サイコパス」「甲鉄城のカバネリ」などのアニメ作品のテーマソングを担当。さらに国内外でライブ活動を行いワールドワイドな人気を獲得する。2017年12月に初のベストアルバム「GREATEST HITS 2011-2017 "ALTER EGO"」をリリースした。
- 荒木哲郎(アラキテツロウ)
- 1976年生まれ、埼玉県出身のアニメーション監督・演出家。マッドハウスに入社後、「ギャラクシーエンジェル」シリーズなどの演出や絵コンテを手がける。2005年にOVA「おとぎ銃士 赤ずきん」で監督としてデビュー。その後、「DEATH NOTE」「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」「ギルティクラウン」「進撃の巨人」「甲鉄城のカバネリ」などの監督を務めた。総監督を務める最新作「進撃の巨人Season3」は2018年7月オンエア予定。