EGOISTのベストアルバム「GREATEST HITS 2011-2017 "ALTER EGO"」がリリースされた。
2011年に荒木哲郎監督のアニメ「ギルティクラウン」に登場する架空のアーティストを実体化した音楽ユニットとして誕生し、放送後も「甲鉄城のカバネリ」「PSYCHO-PASS サイコパス」などのアニメ作品とタイアップしてきたEGOIST。ベストアルバムにはユニットが発表してきたさまざまな楽曲が詰め込まれ、集大成的な1枚と言える内容となっている。
ベスト盤リリースのタイミングで音楽ナタリーでは、プロデューサーのryo(supercell)と荒木哲郎というEGOISTの生みの親2人の対談を企画。EGOISTの始まりからこれまで、そしてその未来について語り尽くしてもらった。
取材・文 / 北野創
一切説明しないEGOISTのレコーディング現場
──EGOIST誕生の功労者となるお二人がそろったということで、改めてEGOISTが生まれた経緯を教えていただけますか?
荒木哲郎 自分が監督した「ギルティクラウン」というアニメ作品で、ryoさんに劇中歌の制作をお願いしたのがきっかけですね。その曲が今回のベスト盤にも入ってる「エウテルペ」という曲なんですけど、これは作中でメインキャラの楪いのりがボーカルを務めるEGOISTというユニットの歌なんです。
ryo それで荒木さんの作ったEGOISTの設定が「インターネット上、世界中で賛否両論を巻き起こす超人気アーティスト」というものだったので、それを表現するには歌に説得力を持たせないとリアリティが生まれないと思ったんです。監督もレディ・ガガとかを引き合いに出されてて。そのときちょうどsupercellの新ボーカリストのオーディションをやってたので、そこで参加者にEGOIST用のデモ曲も歌ってもらったりして、自分のほうで作品に最適だと思う人を選んだ形ですね。
──それでchellyさんというボーカリストに巡り合ったわけですが、楽曲はどのようなイメージで作られたのでしょうか?
ryo オープニングとエンディングに関しては、自分がやってるsupercellと劇中のEGOISTがそれぞれ担当して。しかも物語が2クールあるうちの1クール目はsupercellがオープニングでEGOISTがエンディング、2クール目はその逆の組み合わせだったので、自分としては話の最後に向かって交互に盛り上がっていく感じにしたくて。特にアニメのオープニングは起爆剤だと思うので、高揚感を意識して作っていきました。
荒木 オープニングについてはryoさんに2クール連続で作ってもらうことになってたので、1つめは“明るいアゲ”で、2つめは“重たさを入れたアゲ”というお願いをしました。物語も後半になると重くなるので。でもEGOISTというアーティストを実在させる流れについては僕の手から離れてて、気付いたら「おっ、いのりががんばってる……!」ぐらいの気持ちなんですけど(笑)。
ryo 「ギルクラ」放送時のEGOISTには、実在感がほぼなかったんですよ。アニメ本編で誰が楽曲を作ってるみたいな描写はなかったし、聴衆を巻き込むアジテーション的な意味合いの歌が多かったので、劇中でかかってる歌がどうこう言うのは視聴者はあまり気にしてないのかなと思って。だから自分が前に出ることは絶対にやめようと思ったし、今でもそうですけどchellyちゃんに歌ってもらうときも歌の説明をしないんですよ。
荒木 へえ!
ryo いのりも誰かのディレクションを受けて歌うようなことはしないじゃないですか。それと同じ行為を現実でも行うことで、得られる効果が似てくるんじゃないかと思ってるので、いまだに曲のシチュエーションについて自分から説明は一切しないんです。
荒木 普段は歌う方にしっかり説明されるんですか?
ryo 普段はしますね。でもchellyちゃんに対してはまったく言わないです。彼女から出てきた歌でOKっていう。もちろん本人の試行錯誤が何回もあったうえでのことですけど。
荒木 それはchellyさんのパーソナリティや個性を頼りにしてるというのがあるんですか?
ryo そういう理由もありますし、こちらでディレクションするとどうしてもやらされてる感じになるじゃないですか。でもEGOISTにとって“やらされてる”スタンスは反するものだし、歌ってる人のパーソナルが自然に出てくるほうが、「ギルクラ」本編のEGOISTの歌のあり方として正しいのかなっていう。だから自分は「録りまーす」って言ったあとは、腕組みしながら見てるだけです(笑)。
荒木 へー。俺もchellyさんに何回かお会いしましたけど、すごく物静かな方という印象で。ryoさんと作業するときはよくしゃべるんですか?
ryo みんなが思ってるほどにはしゃべらないですね。
一同 はははははは(笑)。
荒木 俺は「ありがとうございます」とか「こんにちは」みたいな挨拶ぐらいしか交わしてないんですけど。
ryo 僕もほぼそんな感じです(笑)。彼女は絵を描くのが好きなので、待ち時間の間はひたすら絵を描いてるんですよ。それで「出番だよー」って言うと、スッと入ってきて歌うんです。
荒木 なんか妖精みたいでいいなあ。
いのりは時代と共に進化していく
──EGOISTは「ギルティクラウン」の放送が終了したあとも、アルバムを制作したり、さらにはほかのアニメの主題歌も担当するようになりましたが、企画当初からそういった活動を展開する予定だったのですか?
ryo もともとは劇中歌とアルバムを作っておしまいのつもりだったんですけど、ノイタミナ発のアーティストということで「同じノイタミナのアニメに続投してみないか」という話をいただいたんです。ただ、そこは荒木さんが作ったものだから、まずは荒木さんにOKかどうかの確認を取って。
荒木 でもダメなんて言うわけないじゃないですか。「俺のもの」なんて意識もほぼないですからね(笑)。どちらかと言うとryoさんのものですよ。
ryo いやいや。で、「ギルクラ」から派生した超人気アーティストという設定があったうえで継続していくにはどうしたらいいか試行錯誤して、今では技術と一緒に進化するというのが軸になってます。昔のライブではスクリーンにいのりの映像を投影してたんですけど、今は液晶パネルに直接映してるので画質も相当きれいなんですよ。今後は4Kのパネルも出てくるので、時代の進歩と共によりきれいになっていくと思います。
荒木 さらに実在感が増していくんだ。
ryo 落合陽一さんとかが研究してますけど、光の投射を利用して空間に3Dで絵を描く技術があって。今は小さいものしか描けないんですけど、そういう時代もいつか来ますからね。
荒木 なるほど。横からも見られるようになるわけですね。
ryo そういうことです。それがいつできるようになるかはわからないですけど、そういう技術が発展するにつれてEGOISTもすごく発展していくと思うんです。まあ、そのときに自分は死んでるかもしれないけど(笑)。
荒木 ははは(笑)。俺も死んでると思うけど、いのりはずっと生きてるんだ。
ryo そう、アーティストって本来は老いていくものですけど、いのりは時代と共に進化していくという。これは賛否両論巻き起こるじゃないですか。
荒木 そんなすごいものを生み出していたんですね。
ryo もともとは監督が生み出したんですけどね(笑)。
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全力で来られたから全力で返す
- EGOIST「GREATEST HITS 2011-2017 "ALTER EGO"」
- 2017年12月27日発売 / SACRA MUSIC
-
完全生産限定盤
[CD+Blu-ray Disc+グッズ]
9500円 / VVCL-1148~50 -
初回限定盤A
[CD+Blu-ray Disc]
4500円 / VVCL-1151~2 -
初回限定盤B
[CD+DVD]
4000円 / VVCL-1153~4 -
通常盤
[CD]
3000円 / VVCL-1155
- CD収録曲
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- 英雄 運命の詩
- Welcome to the *fam
- KABANERI OF THE IRON FORTRESS
- Door
- Ghost of a smile
- リローデッド
- Fallen
- 好きと言われた日
- All Alone With You
- カナデナル
- 名前のない怪物
- Planetes
- The Everlasting Guilty Crown
- エウテルペ
- Departures ~あなたにおくるアイの歌~
ボーナストラック
- Departures ~あなたにおくるアイの歌~ Acoustic Version
- 初回限定盤・完全生産限定盤Blu-ray / DVD収録内容
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- “Departures ~あなたにおくるアイの歌~” Music Video
- “The Everlasting Guilty Crown” Music Video(TV Edit ver.)
- “Planetes” Music Video
- “名前のない怪物” Music Video
- “All Alone With You” Music Video
- “Fallen” Music Video
- “リローデッド” Music Video
- “Ghost of a smile” Music Video
- “Door” Music Video
- “KABANERI OF THE IRON FORTRESS” Original Movie
- “Welcome to the *fam” Music Video
- “英雄 運命の詩” Original Movie
ライブ情報
- EGOIST「sync*001 / Special gig "ALTER EGO"」
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- 2017年12月29日(金)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- 2017年12月29日(金)愛知県 Zepp Nagoya
- 2017年12月29日(金)大阪府 Zepp Osaka Bayside
- EGOIST(エゴイスト)
- アニメ「ギルティクラウン」に登場する架空のアーティストを実体化した音楽ユニット。ryo(supercell)がプロデュースを手がけ、ボーカルは2000人を超える応募者から選ばれたchellyが務めている。2011年11月にシングル「Departures ~あなたにおくるアイの歌~」でメジャーデビュー。2012年9月に初のオリジナルフルアルバム「Extra terrestrial Biological Entities」をリリースした。その後、「PSYCHO-PASS サイコパス」「甲鉄城のカバネリ」などのアニメ作品のテーマソングを担当。さらに国内外でライブ活動を行いワールドワイドな人気を獲得する。2017年12月に初のベストアルバム「GREATEST HITS 2011-2017 "ALTER EGO"」をリリースした。
- 荒木哲郎(アラキテツロウ)
- 1976年生まれ、埼玉県出身のアニメーション監督・演出家。マッドハウスに入社後、「ギャラクシーエンジェル」シリーズなどの演出や絵コンテを手がける。2005年にOVA「おとぎ銃士 赤ずきん」で監督としてデビュー。その後、「DEATH NOTE」「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」「ギルティクラウン」「進撃の巨人」「甲鉄城のカバネリ」などの監督を務めた。総監督を務める最新作「進撃の巨人Season3」は2018年7月オンエア予定。