ナタリー PowerPush - EGOIST

「ギルティクラウン」が生んだユニット 満を持して1stアルバムリリース

まだまだEGOISTでいろんな曲が作れそう

──劇中のEGOISTはネット上で活躍するアーティストで熱狂的なファンがいるという設定ですが、今回のアルバムはそのEGOISTが歌うとしたらこんな曲、という気持ちで作っていったわけですか?

ryo まさにそうで、ファンがいるとしたら、どういう曲を聴いたら熱狂するのかって考えました。ただ、いのりには音楽の中でしか感情表現できないっていう設定があるんです。だからそれに合わせて、アルバムの中で彼女が感情を獲得していく流れを描きました。最初は無だったところから次第に自分の感情を見つけていく。本編の最後に至るまでに、主人公の集くんからすごくいろんな感情をもらっていくという流れになっています。かつ、時系列的にはアニメの本編が終わった後じゃなくて、始まる前に存在したアルバムなんです。つまりこれはいのりにとって、自分についての予言書みたいな感じなんですよ。自分はこうやって徐々に感情を獲得していき、集くんっていう男の子に恋をして、最後は遠いところから見ているということを、このアルバムによって自ら予言していたんじゃないか、みたいな体になっていますね。アルバムタイトルの「Extra terrestrial Biological Entities」(地球外生命体)も、いのりは人ではないのかもしれないということを暗示するような意味で付けています。

──アルバム収録曲の「Planetes」は、ゲーム「ギルティクラウン ロストクリスマス」の付属DVDに収録されたアニメの主題歌ですよね。こちらもストーリーを意識してるんでしょうか?

ryo 「ロストクリスマス」は本編のスピンアウトで、本編の10年前を描いているんです。だから時系列的には、このEGOISTのアルバムが最初に作られて、次に「ロストクリスマス」があって、「ギルティクラウン」の本編があるという考え方で作っています。

──逆に言うと、その時間軸の中に、本当はまだいろんなエピソードがあるということですよね。

ryo そうです。さらに今後EGOISTが動いていくと、その時間軸が埋まっていく感じです。そういうのはすごく楽しいですね。chellyちゃんがやってくれてるうちは、多分EGOISTでまだまだいろんな曲が作れそうだなと思います。

曲のイメージの95パーセントはボーカリストが提示する

──ちなみにアニメだと歌はいのりが歌っていることになっていますが、曲は誰が作ってることになるんでしょうね?

ryo そうなんですよ。アニメではそれが表現されてないんで、同じことを監督に訊いたんです。そうしたら「いや、そういうことじゃないんだ!」っておっしゃるんですよ。

──(笑)。

ryo 「バンドなんですか?」って訊くと、「いやバンドじゃないよ」って。「楽器とかどうしてるんですか?」って訊くと「ギターとかベースとかは存在しない」「ギターの音色があったとしても、ギターの形状はない」とか言われて。音楽っていうものがイコール感情であるっていう扱いなので、誰が曲を作るとか楽器がどうのとかユニットがどうのっていうのは関係ないんですね。かつ、それをイメージさせてもいけないんです。たまたま、そこに感情=音楽が転がっていて、それを受け取ったいのりが歌っているというイメージですね。

──逆に言うとボーカルだけでなく、それ以外の音色も、その「感情」を表現するためのものっていうことなんですかね。

ryo 最初はそういう気持ちで作っていました。だけどアルバム製作の半ばぐらいから意識がすごく変わっていったんです。というのは、曲の感情とか表現とか、伝わってくるイメージのほとんど全ては、自分が作った音じゃなくてchellyちゃんが歌うことによって提示されるんだなと気づいたんです。95パーセントくらいはそうなんだと思いましたね。だから自分の役割は、そこで5パーセントをいかに提示するかなんだって本気でそう思ったんですよ。今までは自分が曲を作るから、自分が世界観を提示しているっていう、ちょっとおこがましい考え方があったんですけど。

──まあ、自分が作曲してアレンジした曲を歌ってもらうんですから、普通なら当然そういう考え方になりますよね。

ryo だけど、全然考え方が変わりましたね。曲のイメージはボーカリストが提示するんだって。だからさっきも言ったように、「そう提示してくるんだったら、こう変えたほうがもっとそういうふうに聴こえる」とか思うたびに、その場で曲を書き換えていったんです。元々あったメロディも歌詞もその場で全部変えるので、普通だったら結構なムチャ振りですよね。だけどそういうのもchellyちゃんは全然問題なく、当然のようにやってくれるんですよ。

──chellyさんとしては、そのムチャ振りに対応できたんでしょうか?

chelly レコーディングの回数を重ねていくにつれて成長したなあって思います。育てていただいたというか(笑)。

ryo いやあ、今は本当にもう、こっちがついていくので必死みたいな感じですけどね。

2ndシングル「♪(おんぷ)の国のアリス」 / 2012年9月12日発売 / PONY CANYON

CD収録曲
  1. 原罪の灯
  2. The Everlasting Guilty Crown
  3. Extra terrestrial Biological Entities
  4. 雨、キミを連れて
  5. Lovely Icecream Princess Sweetie
  6. 手遅れ
  7. LoveStruck
  8. Ce que j'aime ~inori no kyuuzitu~
  9. 想いを巡らす100の事象
  10. この世界で見つけたもの
  11. Planetes
  12. Departures ~あなたにおくるアイの歌~
初回限定盤DVD収録内容
  • Departures ~あなたにおくるアイの歌~ ミュージックビデオ
  • The Everlasting Guilty Crown ミュージックビデオ(TV Edit ver.)
  • Planetes ミュージックビデオ
  • 『ギルティクラウン ロストクリスマス』 Movie(Planetes Ver.)
EGOIST(えごいすと)

アニメ「ギルティクラウン」に登場する架空のアーティストを実体化した音楽ユニット。ryo(supercell)がプロデュースを手がけ、ボーカルは2000人を超える応募者から選ばれた17歳、chellyが務めている。2011年11月、シングル「Departures ~あなたにおくるアイの歌~」でメジャーデビュー。2012年9月19日に初のオリジナルフルアルバム「Extra terrestrial Biological Entities」をリリースした。