「色彩のブルース」は絶対やらん

──森さんは、理想的なキャリアを積んでこれていると思いますか？

うーん、そうっすね、理想ね……まあ自分のことだけで考えると、自然体でやってこれましたよ。無理してない。無理して音楽をやりたいと思わないですもんね。僕らメジャーにおるけど……「一緒にされたくない」って言うと生意気やけど、自分らなりに「みんなとは違うものを」って思ってやってきて。そういう意味では、まんざら間違いでもなかったんだなって思いますね、20年やってきたことが。

──オルタナティブな存在でありたいし、実際にそうあれた感覚がある。

うん。あれたかどうかはわからんけど、僕の目指す音楽って「気持ちのいい違和感」があるものなんですよ。僕が好きな音楽もそういうところがあるんです。みんなが聴いている音楽とは少し何かが違う、なんか引っかかるところがあるっていうかね。僕らの音楽がそういう印象を持たれていたらうれしい。

──あると思います。

僕、もともと「メジャーで戦っていきたい」っていうのはまったくなかってん。どっちかっていうとアンダーグラウンドのほうが面白いって気持ちがあって。ただ自分の作った音楽とかよっちゃんの歌とかを広めたい、聴いてほしいって気持ちがあってトイズさんにお世話になっているんです。そんな中におっても、媚びずにやってこれたな。いろんなミュージシャンと手と手を組んで仲よくやってきたとか、それがないんです。それなのに20年やってこれたっていうのは、まあ……よかったかな。みんなほら、けっこう仲良しがいるじゃないですか。そういうの、うらやましいっていうよりは、ようできるなあって思うんですよね。なんか。

──でも、エゴはよい音楽仲間が多いじゃないですか。

そう、多いんですよ（笑）。The Ska Flamesの方とかレーベルメイトのBRAHMANとかね。そういった方面とは楽しい話ができるというか、肌が合うんですよね。メジャーにおりながらこんなこというのもあれなんですけど。ファンの中には「メジャーなんかいってほしくなかったわ」って思っている人もいるかもしれない。ほんまに僕らの音楽が好きな人の中には「エゴ知らんかったらもうあかん」みたいな極端なことを言う人がいるんです（笑）。でもそう言われるの、うれしいんですよ。20周年イヤーはそういう人らへの感謝を込めてやっていきたいなって思う。「『くちばしにチェリー』聴きたい」って言われたら「おう、やるでやるで」みたいな感じで。これが10年前だったら絶対やらんかったと思うけど（笑）。

──そうだったんですね。

そういうときもあったんですよ。「『色彩のブルース』は絶対やらんぞ」みたいな。ありますやん、そういう作り手の感じ。リクエストなんかされるバンドになりたないって思ってたし。DJとかしててもさ、外人に「ボブ・マーリーかけて」とか言われるとカチンとくるからね。「そもそも持ってきてないし」って。まあ20年やって、極端な話「今年はリクエストに応えるぞ」くらいの感じです。「おう、かけたるで」って一面も出していかんとなって。