“ロックの耳”で音楽を作っている
──20周年イヤーに突入してみて、いかがですか。
「ああ、20年か」くらいの感じで、あっという間っちゃあっという間ですね。インディーズのときは運営のこととかも含めて自分らでやらなければいけないことが多かったんですけど、メジャーではレーベルのスタッフとかライブのスタッフとかがいろいろやってくれるので、考えんでいいところを任せることができて。そういうサポートのお陰で続けて来られました。
──音楽に集中してやってこられたんですね。
そうですね。「作れ作れ」って言われることもなく、僕らのペースをわかってくれているっていうか。まあこっちも大人なんで、「ああ、もう作らなあかんな」って思うこともあるんですけど。
──そういう意味では、マイペースと言っていい20年。
うーん、僕だけマイペースなのかもしれん(笑)。よっちゃんは待ってくれていたのかも。あと、事務所のスタッフもずっと一緒にやっているから、助けてもらっています。
──メジャーにあって、ここまで自分たちのペースで活動を続けてこられるケースも希だと思います。
そうですかね? まあ、作るものを信頼してもらっているのは伝わります。ディレクターに「こういう曲を書け」とか別に言われずにここまでやってきたというか、好き勝手にやらせてもらってたから。
──基本的には何かに縛られることなくやってこられたんですね。
サウンドとしてはちょっとひねくれたものというか、アバンギャルドとかフリーなものを目指してはいますけど、僕とよっちゃんがやるとポップにまとまっていく感じがするんです。それがあるから、メジャーでやってこれてるんかなあと思いますね。僕、自分は“ロックの耳”で音楽を作っていると思っていて。自分が一番わかる音楽がロック。「色彩のブルース」とか「NERVOUS BREAKDOWN」とか、ジャズジャズ言われるんですけど、ロックの感覚で作っているんです。ロックバンドがちょっとジャズっぽいものに挑戦してみたり、打ち込みに挑戦したりするじゃないですか。そういう感覚なんですね。
──シングルだと「色彩のブルース」「くちばしにチェリー」、アルバムだと「満ち汐のロマンス」あたりのイメージは強いでしょうね。
僕がああいう曲に求めたものって、ムードやったり、楽器のトーンとかなんです。そのあたりの要素に惹かれながら、ロックの感覚で作ったっていうか。だからジャズって言われると、なんかこそばいんですよね。
「ジャズちゃうの?」「いやいや」
──中納さんは「色彩のブルース」が売れたことも続けてこられた要因になっているとおっしゃっていました。
うん。「色彩のブルース」とか「くちばしにチェリー」とかあたりで東京に出てきたんですけど。でもそれらの印象で、Wikipediaとかでも「昭和歌謡」「ジャズ」みたいな書かれ方をすることになって。それ以前にはそれ以前のムードがあったんやけど……だからそういうのを見ると「や、ちゃうねん」って思ってしまって。だからそれからは、ああいったテイストの曲とちゃうもんを作ってわかってもらおうっていうか。
──自分たちの音楽はそれだけじゃないって?
うん。「ジャズ」「昭和歌謡」みたいなそういう小さいくくりじゃなくて、もっと大きく見てるんですよね。音楽を。「え? テクノとか聴くんですか?」「聴くで」「ヒップホップとか聴くんですか?」「全然聴くっすよ?」「ええ、イメージないわ! ジャズちゃうの?」「いやいや」「バーちゃうの?」「いやいや、居酒屋やで」みたいな(笑)。
──お住まいは浅草だし(笑)。
そう、浅草やねん(笑)。だからジャズがどうやとか昭和歌謡がどうやとか、そんなイメージだけで見られんのは怖いなって……まあ僕、実際プライベートもけっこう昭和っぽいんですけど(笑)。僕はともかく、よっちゃんはもっと広い視点で見てもらいたいって感じていたと思うんですよね。それが不憫やなって。よっちゃんには可能性がいろいろあって……もっと“ボーカリスト”やから。
──たしかに昭和歌謡、ジャズみたいなイメージが付きまとってきたキャリアだったでしょうね。
うん。「色彩」を20代で出して。
──「色彩」は20代の頃の曲ですか。改めてそれを知ると驚きです。
まあ20代でああいったイメージが付いたから。だからよっちゃんも、ソロとかで自分のやりたい音楽を示してきたし。シンガーソングライター的なものやアコースティックなものが好きだって、執拗に言ってきてると思うんですけど。よっちゃんの中でも悶々としたものがあったと思います。「いや、ちゃうねん」みたいな。
──今回のベスト盤でも表現されていますが、実際のエゴのキャリアを見ると、驚くほど幅広い音楽性を示してきたのがわかります。サウンドアプローチも非常に凝ったものだし、曲によっては実験的ですらあって。
うん。最近はそれも伝わっているかもしれませんね。
──例えば「サニーサイドメロディー」みたいな曲を普通にシングルで出せるって、ファンが求めているものがジャズやスカ、昭和歌謡だけじゃないってわかっているってことですもんね。
うん。「サニーサイドメロディー」はそうだね。ライブに来てくれている人や、CDを買ってくれる人には伝わってる。で、そういうシンパの人らがいてくれるのがうれしいですよね。僕らとしたら、新譜を楽しみにしてくれることが一番うれしいんです。
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- ベストアルバム「ROUTE 20 HIT THE ROAD」2015年4月20日発売 / TOY'S FACTORY / NOFRAMES
- 「ROUTE 20 HIT THE ROAD」
- 初回限定盤 [CD3枚組+グッズ] 10800円
- 通常盤 [CD3枚組] 3996円 / TFCC-86547
太陽盤
- love scene
- くちばしにチェリー
- GO ACTION
- a love song
- 天国と白いピエロ
- 満ち汐のロマンス
- Dear mama
- human beat(新曲)
- 10万年後の君へ
- サイコアナルシス
- BRAND NEW DAY
- サニーサイドメロディー
月盤
- 水中の光
- かつて..。
- 色彩のブルース
- Neon Sign Stomp
- NERVOUS BREAKDOWN
- アマイ カゲ
- 下弦の月
- admire(新曲)
- Fall
- 雨のdubism
- BYRD
- inner bell
星盤(曲名 / 原曲アーティスト)
- 異邦人 / 久保田早紀
- Move on up / カーティス・メイフィールド
- Inbetweenies / Ian Dury & The Blockheads
- 曇り空 / 荒井由実
- Fever / リトル・ウィリー・ジョン
- 謎の女B / 平岡精二
- What's Wrong With Groovin' / レッタ・ムブル
- Ziggy Stardust / デヴィッド・ボウイ
- By This River / ブライアン・イーノ
- さよなら人類 / たま
ライブ情報
EGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXX
「Dance, Dance, Dance」(※東京公演は終了)
- 2016年8月7日(日)大阪府 大阪城音楽堂
EGO-WRAPPIN' memorial live
- 2016年11月27日(日)東京都 日本武道館
EGO-WRAPPIN'(エゴラッピン)
1996年、中納良恵(Vo)と森雅樹(G)によって大阪で結成。1999年の2ndミニアルバム「SWING FOR JOY」や2000年の3rdミニアルバム「色彩のブルース」、2001年の2ndアルバム「満ち汐のロマンス」などで多様なジャンルを消化した独自の音楽性を示し、人気を集める。2009年には真船勝博(B)、川崎太一朗 (Tp, Flugelhorn)、武嶋聡(T.Sax, Flute, Clarinet)、ハタヤテツヤ(Piano, Key)、末房央(Dr, Perc)と共にEGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXXを結成。同名義で6thアルバム「EGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXX」をリリースした。ライブパフォーマンスにも定評があり、2001年に東京・東京キネマ倶楽部でスタートさせた「Midnight Déjàvu」、2012年に東京・日比谷野外大音楽堂で初開催した「Dance, Dance, Dance」はいずれも恒例イベントとしてファンに定着。現在ではどちらも東京、大阪の2都市で行われている。結成20周年イヤーである2016年、4月にベスト&カバーアルバム「ROUTE 20 HIT THE ROAD」を発表。5月から7月にかけて計16公演を回る全国ツアー「EGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXX live tour」を行い、11月には初の東京・日本武道館公演「EGO-WRAPPIN' memorial live」を実施する。
2016年8月1日更新