今回音楽ナタリーでは、“日本一エゴをプレイするDJ”を自称する須永辰緒に「ROUTE 20 HIT THE ROAD」の全曲解説を依頼。氏ならではの視点から、エゴの代表曲の魅力やカバーの聴きどころなどを語ってもらった。
01. love scene
スカアレンジはエゴの代名詞と言えるもので、それは代表曲であるこの曲にも現れています。ソロはローランド・アルフォンソが登場して来そうな雰囲気(笑)。ボーカルものびのびとして輝いていて、発表当時からいまだに色褪せません。ライブでも人気の曲です。
02. くちばしにチェリー
私らのようなタイプのDJは自身で作品を作りそれをプレイすることも多いからか、誰もが知っているような、しかも知り合いの曲をプレイするのにはちょっと気恥ずかしさもあるのですが、この曲は別。いかにも自分の作品であるかのごとくピークタイムに投下します。
03. GO ACTION
スカを基調としながらも、パンクイズムを全開に見せつけるパートに痺れます。私は森くんとザ・フーリガンズなるOiパンクバンドを組んでいるのですが(ライブは1度しかしていない)、そんな私からしてもこれは「カッコいい」としか言いようがない。ずるいぞ、森。
04. a love song
私がDJをしているとき、「彼女にプロポーズしたい」という大胆な若者がいました。旧知の仲だったこともあり、快く応援。「『a love song』をかける。それをきっかけに行け」と伝えたところ、見事に彼はやり遂げましたよ。音楽は人を幸せにするし、人生にも深く関わるわけです。
05. 天国と白いピエロ
エゴの音楽の深い根幹にスカやジャズがあることはファンは承知しているわけで、だからこそこの曲のようなリズムの設定にファンは安心するのでしょう。さらに、これがロックか否かと問われれば、魂レベルでロックも根ざしているのが感じられます。
06. 満ち汐のロマンス
冒頭の潮の満ち引きのSEからつかまれる、2ndアルバムのタイトル曲。この曲は森くんによる深いエコーをかけたリリカルなギタープレイが印象的です。ちなみに、2ndアルバムがエゴの人気を決定付けたように記憶しています。
07. Dear mama
EGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXXによる美しいバラード。エゴにしては珍しいストリングスの導入も相まって、よっちゃんの歌が徐々に天まで飛翔していくような印象が生み出されています。計算し尽くされたアレンジにも唸るしかない。
08. human beat
新曲。ファンキーなビートはThe ContortionsやDNAなどノーウェイブ勢を連想させます。エゴの曲作りは森くんがフレーズを提案し、よっちゃんと共同作業で作り上げていくというイメージがあるのだけども、こんなタイプの曲はどう着想していったのかが気になります。
09. 10万年後の君へ
前曲からファンキーつながり。森くんはDJをすることもあるのだけど、曲順もアルバムのイメージを決定付ける要素なのですごく大切。初めてこの曲を聴いたときに「ついにラップを!」とびっくりしたけど、こうやって時間をかけて何回も針を落とすと、それも必然に思えてきます。
10. サイコアナルシス
最強モッシュナンバー。「精神分析」ってタイトルってなんなんだよ(笑)。かっ飛ばし過ぎだろって。スカコアだけど「正三角形の挑発 快楽 タブー ノスタルジア」という歌詞を追うとゴシックロックの匂いもする。こんなバンドがいるんだ!と強烈に認識した覚えがあります。天才過ぎ。
11. BRAND NEW DAY
ミュージックビデオが強烈に印象深い1曲。映像と歌詞の関連性については天才の2人に聞いてみないと分からないけど、転生感みたいなイメージなんだろうか? アーシーなアレンジのサウンドも映像の雰囲気に見事に合致していて、発売当時何度も再生したものです。
12. サニーサイドメロディー
シングル「BRIGHT TIME」に収録され、ドラマ「リバースエッジ 大川端探偵社」のエンディング曲に使われました。こういった牧歌的な曲調もエゴの得意とするところで、もし“Music Tree”があるとすれば、樹齢1000年のような樹木よりも萌芽が繁茂している新緑のイメージに近い。
- ベストアルバム「ROUTE 20 HIT THE ROAD」2015年4月20日発売 / TOY'S FACTORY / NOFRAMES
- 「ROUTE 20 HIT THE ROAD」
- 初回限定盤 [CD3枚組+グッズ] 10800円
- 通常盤 [CD3枚組] 3996円 / TFCC-86547
太陽盤
- love scene
- くちばしにチェリー
- GO ACTION
- a love song
- 天国と白いピエロ
- 満ち汐のロマンス
- Dear mama
- human beat(新曲)
- 10万年後の君へ
- サイコアナルシス
- BRAND NEW DAY
- サニーサイドメロディー
月盤
- 水中の光
- かつて..。
- 色彩のブルース
- Neon Sign Stomp
- NERVOUS BREAKDOWN
- アマイ カゲ
- 下弦の月
- admire(新曲)
- Fall
- 雨のdubism
- BYRD
- inner bell
星盤(曲名 / 原曲アーティスト)
- 異邦人 / 久保田早紀
- Move on up / カーティス・メイフィールド
- Inbetweenies / Ian Dury & The Blockheads
- 曇り空 / 荒井由実
- Fever / リトル・ウィリー・ジョン
- 謎の女B / 平岡精二
- What's Wrong With Groovin' / レッタ・ムブル
- Ziggy Stardust / デヴィッド・ボウイ
- By This River / ブライアン・イーノ
- さよなら人類 / たま
ライブ情報
EGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXX
「Dance, Dance, Dance」(※東京公演は終了)
- 2016年8月7日(日)大阪府 大阪城音楽堂
EGO-WRAPPIN' memorial live
- 2016年11月27日(日)東京都 日本武道館
EGO-WRAPPIN'(エゴラッピン)
1996年、中納良恵(Vo)と森雅樹(G)によって大阪で結成。1999年の2ndミニアルバム「SWING FOR JOY」や2000年の3rdミニアルバム「色彩のブルース」、2001年の2ndアルバム「満ち汐のロマンス」などで多様なジャンルを消化した独自の音楽性を示し、人気を集める。2009年には真船勝博(B)、川崎太一朗 (Tp, Flugelhorn)、武嶋聡(T.Sax, Flute, Clarinet)、ハタヤテツヤ(Piano, Key)、末房央(Dr, Perc)と共にEGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXXを結成。同名義で6thアルバム「EGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXX」をリリースした。ライブパフォーマンスにも定評があり、2001年に東京・東京キネマ倶楽部でスタートさせた「Midnight Déjàvu」、2012年に東京・日比谷野外大音楽堂で初開催した「Dance, Dance, Dance」はいずれも恒例イベントとしてファンに定着。現在ではどちらも東京、大阪の2都市で行われている。結成20周年イヤーである2016年、4月にベスト&カバーアルバム「ROUTE 20 HIT THE ROAD」を発表。5月から7月にかけて計16公演を回る全国ツアー「EGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXX live tour」を行い、11月には初の東京・日本武道館公演「EGO-WRAPPIN' memorial live」を実施する。
2016年8月1日更新