ナタリー PowerPush - EGO-WRAPPIN'×オダギリジョー×大根仁

音楽から紐解くドラマ24「リバースエッジ 大川端探偵社」

浅草の一斗缶奏者

──EGO-WRAPPIN'のお2人は、ドラマの音楽をほぼ丸々担当したと言っていいと思うんですけど。オファーを受けたときはどんな気持ちでしたか?

中納 うれしかったですね。以前から大根さんの作品は音楽のセンスがいいと感じていたんで。

──大根さん直々のオファーだったと聞きました。

左からオダギリジョー、大根仁。

大根 ドラマ化することになって、舞台となる浅草エリアを歩いていたんです。浅草って言っても、いわゆる一般的にイメージする“浅草”っていうよりも、そこから1つ奥に入った浅草というか。そのときEGO-WRAPPIN'の音楽が頭の中に流れていて、合うなあと思ったんですね。浅草っていう街が持ってる独特の雰囲気に合うというか。

 あと僕、浅草在住なんですよ。だから「もうやらない手はない」って。

──主題歌である「Neon Sign Stomp」、劇中歌の「太陽哀歌(エレジー)」、エンディングテーマ「サニーサイドメロディー」は、タイプは違えど、いずれもEGO-WRAPPIN'らしい楽曲だと思いました。「Neon Sign Stomp」はギターリフとビートが印象的です。

 この曲は、最初にギターリフを作って、それを2人で膨らませて作った曲です。

──あのギターの音だけで、「始まる」って感じがしますよね。

大根 “EGO-WRAPPIN'”という感じの曲ですよね。

中納 オープニングだから、勢いも少し重視して。

──ザラッとしたサウンドで、しかもモノラルっぽい音像がドラマの世界観やオープニングの映像とすごく合っていました。

中納 そうそう、あれはモノラルミックスしたんですよね。あの感じを狙って。

 で、実はビートは一斗缶。一斗缶を叩いているんですよ。

──一斗缶って、あの四角い?

左から森雅樹、中納良恵、オダギリジョー、大根仁。

 そうです。浅草って水上バス乗り場があって、その辺りに一斗缶を叩きながらハーモニカを吹いているおじさんがいて。

──ストリートミュージシャンですかね?

 んー、まあストリートミュージシャンという感じとはまた違う感じの。で、そのおじさんはハーモニカと一斗缶で懐メロみたいな曲を演奏しているんですよ。

──へえ。

 で、前からその一斗缶の「トントントントン」ってリズムと浅草の雰囲気がマッチしているなって思っていたんですね。それが頭の中に残っていたから、今回は浅草が舞台のドラマってことで、一斗缶を使おうと。

──じゃあ、「Neon Sign Stomp」で一斗缶を叩いているのは……。

 あれはASA-CHANGさんです。

──そのおじさんかと思ってしまいました(笑)。

 でも、偶然にもASA-CHANGさんも一斗缶のおじさんを知っていたんですよ(笑)。それで頼んだら、快く引き受けてくれて。

ライブさながらのオープニング映像

──ドラマで「Neon Sign Stomp」が流れるオープニング映像には、オダギリさんはじめキャストの皆さんと一緒にEGO-WRAPPIN'のお2人も出演してますね。あのシーンの撮影はスムーズに?

大根 ええ。まあ、それなりに時間はかけましたけど。

──オダギリさん……というか村木たちがいる事務所の中でEGO-WRAPPIN'が「Neon Sign Stomp」を演奏するという内容で。

オダギリ 撮影でもないとあんな至近距離で演奏を観られませんからね。本当に役得でした(笑)。できあがった映像を観たらすごくカッコよかったですね。

左から中納良恵、森雅樹。

中納 現場では本当にいつものライブのときのようにやらせていただいて。アンプも音出てたし。

──映像で使われる音楽は、そのときのライブ音源ではないですよね?

大根 いや、あの音源はCDと同じものです。撮影のとき中納さんは、“工事用のライト”も持ってきてくれて。あれはライブで使っているやつですよね?

中納 はい。そうです。

──中納さんがライブのときに持っているライトですね。あれ、映像の中でもすごい存在感でした。

中納 あと、当日はセットもすごかったですね。

 探偵事務所なのに、ミラーボールが回っていましたからね(笑)。

単音でもカッコいいから、劇伴もできる

──確かに「リバースエッジ 大川端探偵社」は、セットも独特ですよね。エンディングで村木が寝てるソファの上に飾られている歌川国芳のガイコツの絵(「相馬の古内裏」)とか。そしてそのエンディングに使用される「サニーサイドメロディー」は、「Neon Sign Stomp」やブルースっぽい「太陽哀歌(エレジー)」と比べるとシンプルかつさわやかな雰囲気を持つ楽曲でした。

大根 最初はEGO-WRAPPIN'にオープニングテーマと劇伴をお願いしていたんですけど、のちにエンディングテーマもお願いできることになったんです。アーバンな雰囲気もあっていいですよね。

──ちなみに、森さんがドラマ劇伴を担当するのは初めてだと思うんですけど。

 はい。

──大根監督が劇伴を森さんにお願いしようと思った理由は?

大根 個人的に、劇伴は音数が少なくてシンプルなもののほうがうるさくならないって思っているんです。で、以前からEGO-WRAPPIN'の音楽は聴いていたんですけど、単音で聴いてもカッコいいと思っていて。それで劇中音楽もできるだろうなって。

──なるほど。確かに劇伴も、ドラマの空気をしっかりと作っている印象を受けました。「サニーサイドメロディー」の話に戻ると、2013年末の東京・キネマ倶楽部公演で「新曲」として演奏していた曲ですよね?

左から森雅樹、中納良恵、オダギリジョー、大根仁。

中納 ああ、そうですね。やりました。

──ライブのときはギターと歌だけだったので、若干CDとは雰囲気が違いましたけど、シンプルでピースフルな雰囲気だなあと思ったのを覚えています。

 確かに普段のEGO-WRAPPIN'の曲に比べたらコード的にもシンプルですね。CDに入っているのは、サウンドもほぼリズムボックスのビートとギター、そしてボーカルで。

──あのビートも温かい音で気持ちいいですよね。シンプルな構造だから、中納さんの歌がとても入ってくるし、頭に残ります。ちなみに歌詞は中納さんによるものですか?

中納 はい、そうです。

大根 僕はもう、「サニーサイドで待っている」って歌い出しが好きで。あとは「baby cry ギュッとしてよ」のとことかね。

ニューシングル「BRIGHT TIME」/ 2014年5月21日発売 / NOFRAMES / MINOR SWING / TOY'S FACTORY / TFCC-89503
[CD] 1620円 / TFCC-89503
収録曲
  1. Neon Sign Stomp
  2. 太陽哀歌
  3. パンドラの箱
  4. サニーサイドメロディー
ドラマ24「リバースエッジ 大川端探偵社」 / テレビ東京系 / 毎週金曜24:12~放送(※テレビ大阪は翌週月曜23:58~放送)
ドラマ24「リバースエッジ 大川端探偵社」

脚本・演出:大根仁 ほか
出演:オダギリジョー(主演)、石橋蓮司、小泉麻耶 ほか

©「リバースエッジ 大川端探偵社」製作委員会

Blu-ray / DVD BOX「リバースエッジ 大川端探偵社」/ 2014年8月20日発売 / 発売元:「リバースエッジ 大川端探偵社」製作委員会 / 販売元:東宝
Blu-ray BOX [Blu-ray 5枚組(本編4枚+特典1枚)]/ 20520円 / TBR-24395-D
Blu-ray BOX [Blu-ray 5枚組(本編4枚+特典1枚)]/ 16416円 / TBV-24396-D
EGO-WRAPPIN'(エゴラッピン)

1996年、中納良恵(Vo)と森雅樹(G)によって大阪で結成。2000年に発表された「色彩のブルース」や2002年発表の「くちばしにチェリー」は、多様なジャンルを消化し、EGO-WRAPPIN'独自の世界観を築きあげた名曲として異例のロングヒットとなる。2011年4月には10周年を迎え、東京・大阪・韓国で10公演を開催した恒例のライブ「Midnight Dejavu」を集約したライブDVDを、7月には初となる写真集を発売した。数々のフェスへの参加や他アーティストとのコラボなど積極的な活動を続け、2013年4月に約2年半ぶりとなるアルバム「steal a person's heart」をリリースした。2014年には、大根仁脚本・演出、オダギリジョー主演のドラマ「リバースエッジ 大川端探偵社」の主題歌、劇中歌、エンディングテーマを担当。森は同ドラマの劇伴も手がけた。5月に「リバースエッジ 大川端探偵社」の主題歌、劇中歌、エンディングテーマを収録したシングル「BRIGHT TIME」をリリース。

大根仁(オオネヒトシ)

1968年生まれ、東京都出身。演出家、映像ディレクターとしてさまざまなドラマやビデオクリップを手がける。代表作は「演技者。シリーズ」「週刊真木よう子」「湯けむりスナイパー」など。2010年夏に放送されたドラマ「モテキ」のヒットによりその名を広く知られるようになる。2011年、映画監督デビュー作となる映画版「モテキ」が公開され大ヒット。2013年1~3月には脚本・演出を務めたドラマ「まほろ駅前番外地」が放送され、深夜ドラマでは異例のギャラクシー賞を受賞した。

オダギリジョー

1978年生まれ、岡山県出身の俳優。1999年に俳優デビュー。2003年に「アカルイミライ」で映画初主演を果たすと、その後は「血と骨」(2004年)、「メゾン・ド・ヒミコ」(2005年)、「ゆれる」(2006年)、「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」(2007年)、「舟を編む」(2013年)など話題映画に次々と出演し、多くの賞を受賞する。また「悲夢」(2008年)、「PLASTIC CITY」(2008年)、「マイウェイ 12,000キロの真実」(2011年)など海外作品にも出演。ドラマでは「サトラレ」や「時効警察」シリーズ、大河ドラマ「八重の桜」などに出演した。さらに2007年には監督・脚本・音楽を自らが手がけた映画「さくらな人たち」を制作した。